第981回/恋の方程式は二重解 - 彼女とカノジョのパラドックス(ユーカリワークス) - 恋愛
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第981回/恋の方程式は二重解 - 彼女とカノジョのパラドックス(ユーカリワークス)

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彼女とカノジョのパラドックス

彼女とカノジョのパラドックス
中学生時代からの腐れ縁、美宇は今日も陸を目の敵に。
■制作者/ユーカリワークス(ダウンロード
■ジャンル/二重人格?な彼女と恋愛ノベル
■プレイ時間/40分

高校生の陸と美宇は、中学生時代に同じクラスになって以来、腐れ縁が続いていた。中学生の頃はそれなりに仲が良かったのだが、ここ最近は、何かといい加減な陸のことを美宇はいつも目の敵にしており、刺々しい態度をとっていた。そんなある日の放課後、美宇そっくりの少女が現れ、甘い声で陸の耳に「大好きだよ」と囁いた。別人なのか本人なのか、はたまた? 王道を行く「素直になれない幼馴染」物語。

ここが○

  • 風格(?)すら感じる王道展開。
  • 前半と後半の美宇の変化が可愛い。
  • 美宇とミウの対比が面白い。

ここが×

  • 美宇の態度がちょっと極端な気がする。
  • 尺の関係か、せっかくの設定を生かしきれていない。
  • 途中にもう一捻りあっても良かったのでは。

■恋の方程式は二重解

彼女とカノジョのパラドックス
放課後、陸の前に現れたミウは、美宇そっくりながら性格は正反対。
掌編枠で「片思いの幼なじみとクリスマスデートすることになったんだが」をご紹介した作者さんの新作です。このサークルはVIP系ですね。VIP系の作品は、キャラクター設定が極端気味な傾向があるような気がするのですが、この作品も類にもれず。ヒロインの美宇が、理不尽なまでに主人公である陸にきつく当たるので、最初は「この子カルシウム足りてないんじゃないか」と思いました(笑)。美宇の態度に納得が行くようなエピソードが1つあれば、とは思いましたが、これがVIP流だと割り切りましょう(?)。

そのままだと、比較的良くある「やたらとキレる女の子が、だんだん変わっていって最終的に主人公と結ばれる物語」で、事実大筋ではそのように展開するのですが、この作品にはちょっと新しいところがあります。それは、特定のタイミングで美宇の別人格が現れるというもの。作中で書かれている通り「ミウ」と片仮名で表記しますが、このミウは陸にべったりと
甘えてくるような、可愛い性格。陸は当然「こんなことがあるはずがない」と困惑し、ミウは誰なのかという疑問を口にします。

こんな感じで始まる、ちょっと不思議な学園ラブコメです。主人公である陸と美宇は高校生でクラスも同じ。一応「幼馴染もの」と書きましたが、2人が知り合ったのは中学生の頃ですから、幼馴染という感じではないかも知れません。ただ全体の雰囲気は間違いなく幼馴染もののそれですので、そのように表記しました。

上述の通り、美宇が無闇に陸に刺々しい態度を取るので、最初は読んでいてあまり気持ちのいいものではありません。が、陸までもが大人気なく(彼ら高校生ですけど)反論して泥沼になったりはせず、陸の方では割と美宇の態度をさらりと流すので、そこまで読んでいてストレスにはなりませんでした。そういう意味では、この2人のコンビネーションはなかなかいい組み合わせなのではないかと思います。

彼女とカノジョのパラドックス
休日に遊園地にやって来た2人。デートでも美宇はやはり意地っ張り。
そして放課後、美宇とそっくり、でも性格は正反対の少女ミウが現れてから物語は動き始めます(そこまで開始後すぐですが)。ミウの正体については、作中でも割と早めに説明されますし、彼女自体はそれほど意外な存在という訳ではありません。しかし、彼女の活用法はなかなか面白いなと思いました。携帯電話の写真やメールを使って、自分のメッセージを伝えるという手法は新しいですし、どちらかと言えばストレートな展開のこの物語に、上手く変化を付けていたと思います。

また、きつい性格である美宇をミウの言動が中和していますし、美宇の言動が陸とミウとのやり取りをきっかけとして少しずつ変化していくというのも、よく考えられた展開です。美宇の態度がだんだん柔らかくなって、最後のイベントに突入しますので、流れという点で見ても優れたものを持っている物語です。ただ、尺の短さから言って仕方ない面もあるとは思うのですが、もう少しミウを使ってもいいのではないかなとも思いました。

例えば、ミウからのメッセージを見て美宇がどんな反応をしたのかはプレイヤーが想像するしかありません。その辺りを直接描写するまでは行かなくても、もっとその2人(と言えるのだろうか)の関わりを物語に絡ませてみても面白かったのでは。それと、後半ミウが突然フェードアウトしてしまうのも、若干寂しい気がします。この物語は美宇とミウの入れ替わりと、ミウが美宇に少しずつ影響を与えていくのが面白いところですから、そこももう少し引っ張っても良かったような気がします。

しかし、やれヤンデレだの鬱だの、ちょっと歪んだ物語が多くなった昨今では(そういう物語が悪いと言っているのではありませんよ、念のため)、こういう王道ストレート展開に、ちょっと不思議な要素を盛り込んだ学園恋愛ものは貴重です。王道が持つパワーを遺憾無く発揮していて楽しめますし、何より後半の美宇が可愛らしくていいですね。いわゆるツンデレヒロインと言えますが、彼女の態度は「デレ」というほどではありません。が、そのデレ成分をミウに受け持たせることで、ツンデレものでありながら、同様の作品とは全く味わいが違います。「分業ツンデレ」とでも言いましょうか(笑)。

そして当初は分業ツンデレだった美宇とミウが、だんだんその立ち位置が近くなり、ラストには美宇が陸に対して程よい態度で落ち着き、ミウは役割を果たしていなくなる。そう考えれば、ストレートなようでいて、実はよく考えて作られた物語なのかも知れません。本当のことを言うとこの倍くらいの長さであれば、もっと魅力的になったような気もするのですが、まとまりの良さもあり、十分楽しめる物語でした。

ツールはティラノスクリプトです。選択肢なしの一本道です。立ち絵はアニメ風に塗りのはっきりした今風の絵柄です。プレイ時間は30分から40分くらい。捻りという点で見れば、もう一捻りがあっても良かった気もしますが、キャラクターと構成は、短いながら考えて作られており、学園恋愛ものが好きであれば、「ちょっと不思議な恋物語」を楽しく読めると思います。
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Comments 2

にゃんたれすと  
いいね~

何度かみさせていただきました。恋愛ものって興味がなくてもおもしろかったり。ラノベだとくすっと笑えて気分転換にいいですよね。よかった

2021/02/05 (Fri) 22:21 | EDIT | REPLY |   
NaGISA  
>>にゃんたれすとさん

最近、こういうストレートな恋愛ものは少ないですから、かえって新鮮ですよね。気軽に楽しめる物語だと思います。

2021/02/11 (Thu) 20:16 | EDIT | REPLY |   

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