第1010回/君がこの世を愛せるように - Charon(紡唄-tsumugiuta-) - ファンタジー
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第1010回/君がこの世を愛せるように - Charon(紡唄-tsumugiuta-)

ファンタジー
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Charon

Charon
オールを手に持って構えるカロンは、魂を送る渡し守。
■制作者/紡唄-tsumugiuta-(ダウンロード
■ジャンル/渡し守と不死鳥の旅ノベル
■プレイ時間/1時間半

渡し守として、死にゆくものの魂をあの世に送る仕事をしているカロン。町から町へ旅の生活を続けていた彼は、ある森で非常に珍しい幻獣種の鳥を見つける。なぜかその鳥に懐かれてしまったカロンは、しばらく一緒に森を旅するのだが、やがて森を抜ける日がやってくる。カロンは鳥に別れを告げ、また一人の旅が始まるはずだったのだが。面白い設定のファンタジー旅物語。

ここが○

  • カロンとリチェのやり取りが楽しい。
  • あくまで物語を生かすための凝った設定。
  • キャラクターと設定の相乗効果で世界観がより魅力的。

ここが×

  • ちょっと動作が不安定。
  • 説明不足を感じるところが。
  • どことなく満ち足りない終わり方。

■君がこの世を愛せるように

Charon
頭に羽が生えている不思議な少女リチェの言動は、まるっきり子供。
たそがれユヴァスキュラ」「語部古書館」の作者、荒咲りゆさんの新作です。新作とは言っても公開は去年です。公開された時からこの作品の存在は知っていたのですが、この作品は全3章構成で、最初は第1章だけの公開で完結していなかったのです。設定を見てもなかなか興味深かったですし、完結したら読んでみようと思っていたところ、この度めでたく完結版が公開されましたので、早速やってみました。通常枠で今回7本目、掌編枠では2本をご紹介していますので、すっかり常連さんです。

この作者さんは、「ユヴァスキュラ」「7日目の花嫁」に見られるようなファンタジー世界の女性向け恋愛もの、「永3-Eimin-」のようなSF、「むいむい」のような不思議系、そして「Giggle」のシリーズや「語部古書館」のような不条理系ホラーなど、非常に作風が幅広い印象です。しかし中でも、ファンタジー世界を舞台にした恋愛ものが得意なのではないかなと感じていました。

今作「Charon」は、そんな作者さんが一番得意そうに見える、ファンタジー世界の物語です(今作は、全部を荒咲さんが書いた訳ではなく、第2章は違う方が書いておられるのですが)。恋愛というほどの恋愛要素がある訳ではないのですが、途中結構甘い描写もあり、そういう「甘味成分」をお求めの方でも、きっと満足できるのではないでしょうか? タイトルは「カロン」。主人公の名前です。この名前の意味はプレイ中に分かります。

そのカロンは、死者の魂をあの世に送る「渡し守」と呼ばれる存在。町から町に、あてのない旅を続ける毎日でした。ある町を出て森に入ったところ、非常に珍しい幻獣種の鳥に出くわします。なぜかその鳥に気に入られたカロンは、しばらくその鳥と森の旅を共にするのですが、やがて森を抜ける日がやってきました。鳥はカロンと一緒に連れて行って欲しそうなのですが、カロンは鳥に別れを告げ、1人で行こうとします。その時……。

Charon
ニニアとマダム・ローレット。2人の力と呪いとは、一体何なのか?
冒頭はこんな感じです。この後の出来事は比較的序盤の出来事なので、伏せるほどでもないかなとは思ったのですが、序盤の大きなイベントですから、一応内緒ということで(笑)。さて、物語を主に引っ張る登場人物は、主人公のカロンと、リチェという名前の少女。この2人のキャラクターが、とても良いのです。やり取りがちょっとずれている感じがまた微笑ましい。こういうのは、あまり羽目を外し過ぎると読んでいて白けてしまうものですが、今作はそこの加減がとても上手かったように思います。楽しさと中にも、カロンが程よく節度を利かせているんですよね。

そして、設定が結構凝っているのですね。渡し守や呪いについては、物語にも深く関わってきます。が、この物語が上手く作ってあるなと思うのは、「物語に関わる設定は凝っているが、あまり関わらないところは前面に出していない」というところ。無意味に設定を作り込んでいるのではなく、あくまで物語に絡むところをしっかり作り、そうでないところは軽く流しているのです。

また、その設定がキャラクター(カロンとリチェだけでなく、ニニアやマダムローレットも)や作中のエピソードにも生かされ、設定とキャラクターが相乗効果で物語を盛り立てるという、非常にいい流れを作っています。設定を作り込むのは楽しいものですが、ともすれば「設定のための設定」になってしまい、物語や読者が置いてけぼりになりかねません。この作品はそこらのバランスが絶妙でした。

ただ、少し説明不足や消化不良を感じるところもありました。冒頭に登場する奴隷の少女についても、直接彼女が関わるエピソードがある訳でもないですし、肝心なところにもう一歩の踏み込みが欲しかったような気もします。ラストで秘密が明かされた時も、そこまで綿密な伏線がある訳でもなく、少々投げっぱなしの感は否めません。もう少しだけ、読んでいて落ち着けるような落とし所があっても良かったのでは。まあ、無理矢理ハッピーエンドに収めるよりは、この作品の世界観に合っている感じがして、これはこれで味わい深い感じもするのですが。

しかし全体には、魅力的な世界観とキャラクター、そして凝った設定がしっかり噛み合って、心地よいファンタジー世界の旅気分と、軽妙なキャラクター同士のやり取りが楽しめる佳作でした。イラストの色遣いが独特ですし、音楽も耳に心地よく、絵と曲も魅力的な世界観の要素となっていました。この手の「旅ファンタジー」で、世界観が素敵というのは本当に大事だなと、改めて実感した次第です。

ツールはティラノスクリプト。プレイ時間は、1章が15分、2章が45分、3章が30分で合計1時間半というところです。選択肢はありませんが、何度か前触れもなく固まったことがあり、最初からやり直す羽目になりましたので、一応こまめなセーブを推奨します。それと、文字が少し読み辛く感じました。なおエンディングにはちょっとエスニックな歌付きのムービーが流れますが、この物語を締め括るのに相応しい、素晴らしいエンディングでした。なお読了後にはおまけでムービーが見られますが、CMも入っており、なんとそれは声入りです。カロンとリチェの声を是非聞いてください。読み終わった後でないと聞けないのが何ですが(笑)。柔らかいところとヘビーなところがバランスよく同居した旅ファンタジー。幅広くお勧めです。
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