第1012回/彼と彼女の孤独と絆 - みどりの魔女と金の枷(Thunder Sonia) - ファンタジー
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第1012回/彼と彼女の孤独と絆 - みどりの魔女と金の枷(Thunder Sonia)

ファンタジー
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みどりの魔女と金の枷

みどりの魔女と金の枷
カタリナの家へやってきたクオンは、いつも遠慮がない。
準推薦
■制作者/Thunder Sonia(ダウンロード
■ジャンル/ほのぼのダークファンタジーノベル
■プレイ時間/1時間40分

「緑の魔女」と呼ばれるカタリナは、人目を避けながら薬の調合などの依頼を受け、森の中でひっそりと暮らしていた。カタリナの元には、同じ魔法使いであるクオンがよく遊びに来る。彼はずけずけとものを言うものの、どこか憎めない性格だった。そんなある日、カタリナの元に母のために薬を作って欲しいという少女がやって来る。クオンは断るべきだと言うのだが。最初ほのぼの、後ダークの女性向けファンタジー。

ここが○

  • ほのぼのとダークの自然な融合。
  • テーマを上手く絡めた物語。
  • カタリナの葛藤が伝わってくる描写。

ここが×

  • トゥルーエンド以外はちょっとすっきりしない。
  • クオンのやることがなかなか酷い。
  • 前半が少し平坦。

■彼と彼女の孤独と絆

みどりの魔女と金の枷
森へ薬の材料集めに来た2人。カタリナには人間に虐められた過去が。
なんの偶然か、3本連続女性向けファンタジーです。しかも、3本とも全く物語の方向性が違うというのが面白いところです。Charon」は、魂の渡し守と不死鳥の少女の旅もの。triple+R!」は現代を舞台にしたライトなバトルもの。そして今作「みどりの魔女と金の枷」は、森で一人で暮らす魔法使いの日常を描いたドラマ。3本雰囲気が異なりますし、ファンタジーがお好きな方であれば、3本連続で遊んでも楽しめるのではないでしょうか。

「日常を描いたドラマ」とは書きましたが、日常ドラマなのは中盤までです。中盤までは主人公であるカタリナ(名前変更可能)とクオンのほのぼのとした日常描写が続くのですが、中盤から様相がいっぺんし、後半はかなりダークな展開となります。かなりの急展開を見せてくれるのですが、しかし唐突な感じはしませんでした。ほのぼのとダークが巧みに融合しており、不自然さを感じさせません。

反面、前半は少々平坦に感じるところもあります。主人公であるカタリナはしっかりした少女(とは言え魔女なので100年以上生きているらしいです)なのですが、友人である魔法使いのクオンが、どうにも言動が子供っぽい上に、ところどころでカタリナの気持ちを逆撫でするようなことを言ったりするので、あまり彼の印象がよくありません。まあ彼のそういう言動にはちゃんと理由があるので、前半は我慢してください。ただ、後半は後半でクオンの行動がかなり酷いところがあるので、この物語は結局クオンを好きになれるかどうかにかかっている気がします。

カタリナは「緑の魔女」と呼ばれ、町の人間から恐れられています。今は森の奥で一人で暮らし、時々薬の調合の依頼を受けたりして細々と生活する日々。カタリナが唯一心を許しているのが、同じ魔法使いのクオン。そんなクオンとのなんでもない日々が続くある日、彼女の前、不治の病の母のための薬を作って欲しいと言う少女がやってきます。カタリナは過去にも同じ依頼を受け、その時は失敗してしまっており、それが彼女の心の傷になっています。クオンはその依頼は断れ、と言うのですが。

みどりの魔女と金の枷
気分転換に遊びに行った2人。カタリナが作った花冠を被るクオン。
その辺りからは物語が急激に動き始めて目が離せなくなるのですが、上にも書いた通り、主な登場人物がカタリナとクオンだけですから、中盤までは少し起伏に乏しい面は否定できません。例えば前半に少し過去回想を入れたり、若干伏線の不足を感じるところもあったので、前半から伏線をいくつか張っておくなど、「種まき」をしていれば前半も後半も印象が少し変わったかも知れません。

しかし後半の展開は一見の価値があります。展開そのものもなかなか衝撃的ですし、彼の行動原理のダークさには怖さを覚えました。行動原理が読んでいて納得できるものだけに、いっそうその行動の異常さ、恐ろしさが際立っているんですよね。この後半まで来ると、前半「その言動は一体?」と感じたところが、残らずきちんと解決しており、構成の上手さを感じられます。

エンドは4つで、真相が明らかになるトゥルールート、明らかにならないノーマルルートがあり、それぞれがグッドとバッドに分かれています。ノーマルグッドとノーマルバッドは、いずれもなんだかすっきりしないのですが(真相が分からないままなので)、トゥルールートはグッドもバッドもラストのまとめ方が上手く、感心しました。カタリナのクオンに対する両価感情(アンビバレンス)、そしてクオンの狂気をはらんだ動機が絡んだやり取りは見応えがあります。

特に、トゥルーグッドではカタリナが苦悩しつつも事実を受け入れ、そしてクオンも自分を変えていこうとする、お互いの歩み寄りがバランス良く描かれていて、決して万事丸く収まったハッピーエンドではないのですが(恋愛関係になる訳でもないし)、とても着地感が良く、心に迫ってくるラストでした。クオンのやってきたことが、丸く収めるにはちょっと酷い気もするので、そこはもう少し説得力のある収め方があればとも思ったのですが(クオンの行動に、もう少しやむにやまれぬ理由でもあれば)、全体としては1本筋の通った、しっかりしたドラマでした。

何よりそのドラマが、事件というよりも感情の動きを主体にして作られているのが、他の作品ではなかなか見られない今作の特徴です。カタリナとクオンが、最初は全く別の方向を向いていつつ、それに気づかずにほのぼのしていたのが、だんだんお互いが別の方向を向いていることに気付き、同じ方向を向こうとしたところ、別の方向を見ていた時には分からなかかった、とんでもないものが見えてきた。しかしお互いにそれを受け入れ、最終的にはお互い同じ方向を向いて、前向きに歩む。その様子が実に上手く描写されていました。こういうファンタジーはなかなかないですし、この作者さんはこう言う「ほのぼのダーク」が得意なのではと思わされました。

ツールはティラノスクリプト。エンド分岐はフラグ型と好感度型を合わせたシステムで、ちょっと複雑です。私は、エンド2、3、4は自力で見られましたが、1が見られずに作者さんページの攻略に頼りました。行き詰まった時は作者さんのページをご参照ください。全部のエンドを見て1時間半から2時間というところです。おまけでトゥルーグッド&バッドの後日談も読め、そちらも必見です。初めて取り上げた方なのですが、今後の動向が楽しみな作者さんの1人です。
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