第112回/「いつでもポジティブ」な魔法活劇 - マホウツカイ(天夏屋) - ファンタジー
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第112回/「いつでもポジティブ」な魔法活劇 - マホウツカイ(天夏屋)

ファンタジー
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マホウツカイ

マホウツカイ推薦
■制作者/天夏屋(公開終了)
■容量/98.6MB

魔法学校に通うコウ・アマノは、遅刻しそうなある朝、禁止されているほうきで通学中、暴走するほうきに乗った少女を助けた。彼女、サヤは実はコウのクラスの転校生。コウの友人たちも交えた楽しい日々が始まったが、そんな日常を脅かす不穏な事件。コウと友人たちは調査に乗り出す。血湧き肉踊る魔法活劇ノベル。

ここが○

  • 展開バランスが良く、流れがほとんど澱まない。
  • 戦闘シーンはスピード感たっぷり。
  • 魅力的な世界観が、作品の魅力を際立たせるのに一役買っている。

ここが×

  • それっぽい描写はあるのに、恋愛面の展開がないのはもったいない気が。
  • 終わり方が、少し余韻に欠けるというか、そっけない印象。
  • キャラクターの個性に一捻りが欲しかった感じ。

■「いつでもポジティブ」な魔法活劇


前回「推薦」を出したのが、去年の9月12日。ほぼ1年振りに、「推薦」でご紹介する今回の「マホウツカイ」は、ストレートなタイトルからも分かるように、魔法学校が舞台となる「魔法活劇ノベルゲーム」です。元々は有料で配布していた作品が、配布終了から2年が経ち、フリーで公開されるようになったようですね。フリー限定のノベルゲーム好きとしては、こう言った配慮は大歓迎です。

ところで私は、特に「現代伝奇」が苦手ですが、ファンタジーはそれほど苦手ではありません。何故なら、世界観の提示さえ上手くやってくれれば、「提示された世界観の中であれば、こんな事が起こるかもな」と思える作品もあるからです(この辺りはSFもそうですね)。この作品が正にそれ。世界観の構築が上手く、スムーズに物語の中に入り込ませてくれます。

世界観を読み手にスムーズに受け取らせる助けになっているのが、時々入る、「専門用語」説明。それも、テキストウィンドウで淡々と説明されると、流れを損ないますが、カットイン方式というのか、横から用語説明が書かれた看板がスクロールしてくる仕掛け。これは上手いですね。冒頭で一気にプレイヤーの興味をひきつけます。

もう1つこの作品が優れていると感じた点。学園もののノベルゲームの場合、ありがちなのが「前半は延々ただの日常。後半突然盛り上がる」という、展開バランスの不均一から来る、流れの澱みです。ですがこの作品は、物語の進み具合、謎の提示され方、事件発生のタイミングが上手く、後半、物語が核心に迫る辺りまで一気に読めます。もちろんその先も、お役人とのやり取りや、敵だったはずのお役人の、ちょっとした気遣いを感じさせる言動等、憎い演出も多く、最後まで軽快に楽しめるでしょう。

「魔法活劇」なので、戦闘シーンもあります。ここはRPG風のコマンド入力場面になります。まあなければないでさほど問題もないでしょうが、良いアクセントになっている感じですね。ダメージがミニゲーム風のアクションで決まるのも面白いアイディア。また戦闘シーンは描写もスピーディで、読んでいて快適。上記に挙げた点も合わせて、とにかく今作では「途中でだれる」という事がほとんどありませんでした。これは特筆すべき点です。

気になった点もいくつか。まず、メインの女性キャラは3人なんですが、そのうちの2人とは、いかにもな「友達以上恋愛未満」風描写があります。が、展開の中で恋愛にまで発展はしていません。これがちょっと惜しいなと思いました。この辺りの恋愛模様を、シナリオに上手く折り込めば、更に魅力的な作品になったんじゃないかと思います。マルチヒロイン制にしろとまで言わなくても、この辺りの要素をシナリオに組み込んでも面白かったような気がしますね。

そして、キャラクターは全員、一応それなりに個性的なんですが、取って付けたような個性というか、ユズキの「薬が苦手で、薬を扱う科目も駄目」なども、特定イベントでしか出て来ない感じですし、ツヅキの「薬調合が趣味」にしても同様。個性が、少し「表面をなでただけ」になってしまってるんですね。キャラ同士の掛け合い自体は魅力的なだけに、もう一捻りがあればと思わされました。サヤの過去にしても、もう1つ突っ込んだ描写が欲しかった気もします。

この物語はあくまで「活劇」なので、プロットを綿密に組み上げ、最後で全ての謎が解け、伏線が一点に収束するとか、そう言ったシナリオではありません。全体に展開は「王道的」で、意外な展開に驚いたりする物語ではないです。しかし「活劇」としてみれば水準を大きく越えた物語です。登場人物たちが試練を背負う場面もありますが、全体を一貫しているのは「とにかく前向き」「どんな時もポジティブ」な流れであり、プレイしていると元気な気分になれます。

音楽やグラフィックスについてあまり語れませんでしたね(汗)。その辺りの要素も(音楽は素材ですが)水準以上で、1枚絵も豪華ですよ。プレイ時間は3時間。ラストにもう1つ「余韻」が欲しかった気もしますが、ノベルゲームに「エンターテイメント」をお求めの方なら、文句なく満足できる一作だと思います。
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