第1016回/命貪る悪魔のきざはし - 死に戻り階段(はす) - ホラー
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第1016回/命貪る悪魔のきざはし - 死に戻り階段(はす)

ホラー
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死に戻り階段

死に戻り階段
天妙神社の境内に続くのは600段もの「死に戻り階段」。
■制作者/はす(ダウンロード
■ジャンル/若返り階段サスペンスノベル
■プレイ時間/40分

高校のオカルト研究会に所属する主人公。夏になるとオカルト研究会主催の肝試しが、天妙神宮という古い神社で行われる。この神社には境内に上がるために600段もの長い階段があるのだが、その階段には「一段降りると一年若返り、死人も生き返る」という噂があり、「死に戻り階段」と呼ばれていた。肝試しの準備の妙に、主人公は天妙神社に足を運ぶのだが。アイディアが面白いマルチエンドノベル。

ここが○

  • 死に戻り階段のアイディアが面白い。
  • 後半意外な方向へ話が進み、目が離せない。
  • 中盤以降の緊迫感。

ここが×

  • 後半は序盤とは全く違う話になり面食らう。
  • エンド7に少々の蛇足感。
  • グロテスクな描写もあるので苦手な人は注意。

■命貪る悪魔のきざはし

死に戻り階段
肝試しの誘いを断り、家庭科部の部員たちの追求が。断って正解かも。
私がレビューを開始した2003年と比べても、今は公開される作品の数が大袈裟でなく桁違いで、そうすると当然「初めて作りました」という方の作品も増えるのは当然です。この作品も、今作が処女作だそうです。初めて作られた作品というのは、既存の作品に影響されていることも多いのですが、この作品には、既存の作品の枠外からいきなり不意打ちを受けたようなインパクトがありました。

タイトルがまず印象的です。「死に戻り階段」。ホラーと階段というのは親和性が高いですし、第一印象はいかにもホラー風です。ですがプレイしてみれば分かりますが、ホラーという感じではあまりありません。もちろん、ホラー風の描写がなくはないのですが(少しグロテスクな描写もありますので、苦手な方はご注意)、どちらかというと、「世にも奇妙な物語」のような不条理サスペンスのような感じです。一応ジャンルはホラーに分類しましたけど。

冒頭は、とある神社の紹介から始まります。名前は天妙神宮(てんしょうじんぐう)。この古い神社には、境内に上がるまで600段もある長い階段を上らなくてはならないのですが、その階段にはとある言い伝えがありました。それは、階段を一段下がると一年若返り、死人すらも生き返る、というもの。とは言え実際にそんなことが起こるはずも無く、むしろ今では「一緒に階段を降りた相手と結ばれる」というジンクスを持つ恋愛スポットになってしまっています。

そして主人公はとある高校のオカルト研究会所属。毎年夏にはオカルト研究会の主催で、天妙神宮を舞台にした肝試し大会が行われているのですが、上に書いたような恋愛ジンクスのせいもあり、肝試しは毎年大盛況。女性に縁がなく今まで参加側に回ったことのない主人公でしたが、今年は数日前に後輩の女生徒から肝試しへのお誘いを受けており、期待に胸が高鳴る毎日。こんな感じで始まります。序盤は緩い感じで、特に誘ってきた女生徒を断る辺りは、ちょっと笑ってしまいました。この後とのギャップを狙ったのでしょうか。だとしたら、この作者さんはなかなかの策士です(笑)。

死に戻り階段
人気女優の千堂かなこを発見。40代と思えぬ若さには、何か秘密が?
そして主人公は天妙神宮に下見に行くのですが、そこで有名女優の千堂かなこが人気の若手俳優と一緒にいるのを目撃します。ここから話は急激に動き始め、俄然ホラーまたはサスペンスの様相を呈してきます。この中盤からの展開は一見の価値があります。しかも物凄い急展開でありながら、ちゃんと「死に戻り階段」の設定を生かし、物語的にもしっかりとした面白さがありました。

とは言え、途中から最初の主人公は完全に消えてしまい、序盤とは全く違う話になっています。加えてエンド7では更に半ひねりくらい加えているのですが、若干捻り過ぎてまとまりを欠く印象もあります。構成にはもうひと工夫があっても良かったのかな、と思いました。それでも読ませる力がある物語ではあります。それは「死に戻り階段」という大前提は最初から最後まで共通しており、その前提がしっかり物語を引っ張っていたからでしょう。

この物語は、独特のアイディアが大変面白いのですが、そのアイディアもさることながら、読み手に不安感、緊張感をサスペンス的な手法がとても卓越していました。中盤からはかなこと時任が「死に戻り階段」に関わってくるのですが、この2人のこの階段に対するスタンス、思惑のずれが、終始高い緊迫感を生んでいます。のみならず、最後までそれが一致することなく、悲劇的な破局を迎えるに至るのですが、その描き方が見事でした(読後感はよくないんですけどね(笑))。

私は基本的にハッピーエンドが好きなのですが、とてもハッピーエンドとは言えない物語でも、これほど上手いラストが作れるのだなと感じさせられた次第です。この物語の後半は、不条理系サスペンスがお好きな方ならば一見の価値がありますよ。ほんの少しのボタンの掛け違えで最後は救いようのない悲劇になるのですが、そのボタンの掛け違えから破局に至る過程の描写が、大変面白いなと思いました。私の好みかと言われると、好みであるとは言い難いのですが、この作者さんの物語には高いセンスを感じます。

ツールはティラノスクリプトです。エンディングは7つで、上にも書いたエンド7は後日談的な終わり方。攻略にはあまり苦労しませんが、エンド2だけ少し見つけにくいかも知れません。ヒントは「一度で駄目でも二度、三度」。そしてなぜか本編とはあまり関係なさそうな、おまけのミニ育成ゲームも遊べます。こちらもなかなか不条理かつシュール。これがこの作者さんの持ち味なのかも知れません。全部読んで40分というところです。お世辞にも爽やかな物語とは言い難いのですが、届かなかった時任の思いはちょっと胸に迫るものがあります。不条理系がお好きな方は、読んでみてください。楽しめると思います。
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