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第118回/今日より素敵な明日になあれ - ムゲンの絆(渡渉)

恋愛
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ムゲンの絆

ムゲンの絆準推薦
■制作者/渡渉(ダウンロード
■容量/58.5MB

進学高へ通うものの、世間でいう「落ちこぼれ」の月下部望。それでも、3人の仲間達と過ごす日常は、貴重なものだった。そして、高校生活最後の文化祭の準備が近づきつつある日、望と仲間達の日常を脅かす不穏な影。練られたキャラクターと小気味良い進行が光る、マルチシナリオ恋愛ノベル。

ここが○

  • よく練られたキャラクター描写が秀逸。
  • シナリオ進行のバランスが良く、小気味良い。
  • 音楽は素材だが、選曲が実に良い。

ここが×

  • 一部展開に無理がある箇所も。また当麻深雪の透過処理が甘いのが気になる。
  • ツールがYuuki! Novelの為(以下略)。フルスクリーンで起動はいかがなものかと。
  • 八島シナリオにおける、過去に例を見ないほどの主人公の駄目っぷり。

■今日より素敵な明日になあれ

この作品、Vectorでの作品紹介では、さほど興味をひかれませんでした。分類すれば恋愛ノベルになるでしょうが、テーマが「変わらぬ日常」とか「仲間との絆」と言った、言ってみれば実によくあるタイプだからです。ですが、プレイを進めてみると、この作品ならではの魅力が随所に見られる良作でしたのでご紹介。

この作品のツールは、Yuuki! Novelです。それは良いとして、起動するといきなりフルスクリーン。ノベルゲームをフルスクリーンで起動する意味って、あるんでしょうか? また、メインキャラクターの1人、当麻深雪が、ポーズによっては透過処理が甘く、輪郭が白くなってしまってるんですよね。また、立ち絵に素材を使用した作品の宿命として、立ち絵のバランスが登場キャラによって妙ですが、まあこれはしょうがないでしょう。

さて、この作品はメインヒロイン2人、サブヒロイン1人のマルチシナリオ。と言っても作りは極めて単純で、序盤の選択肢1つで、どのシナリオに入るか決まるという分かりやすさ(笑)。シナリオ展開は王道的で、一部展開が無理があると感じる点もありましたが、展開バランスが非常に良く、序盤からテンポよく物語が進んで行くため、プレイ感覚は非常に良好です。この手の作品にありがちな「序盤はただの日常が延々続くだけ」なんて事はなく、ちゃんと要所要所で物語に関係のある描写が、程よく入ってきます。

加えて、「各キャラクターの、その世界における、あるいはシナリオ上における立ち位置が、早い段階で明確になる」のも、美点として挙げられます。これが不明瞭だと、「キャラクターがどたばたやってるだけの空騒ぎ」「テーマとキャラクターが一向に結びつかない事」になります。主人公の望の設定がまず上手いですよね。進学高の落ちこぼれで周りから良く思われてない、と。だから日向光先生という存在が生き、親友の日向陽三を別の高校にする必要性と理由も生き、ヒロイン2人との関係も生きてくる。また、主人公が分不相応な進学高にいるのにもちゃんと訳があって、それがシナリオにもちゃんと絡んでいます。この辺りの手腕は、お見事という他ありません。

キャラクター描写が優れているのも特筆できるでしょう。最初は、よくあるキャラとしか思えないのですが、キャラクターの、物語への絡ませ方が絶妙で、また各キャラクターの絡みもよく、お互いがお互いを(シナリオとキャラクターが、あるいは各キャラクター同士が)盛り上げる好循環を生んでいます。特に、親友の日向陽三は良いですね。反面、八島春菜の大食いとか、「その設定は蛇足じゃないか」と思える点もありましたが……。

3本のシナリオは、驚くどんでん返しがある訳でもなく、プロット構成が緻密という訳でもなく、ラストで伏線が収束していく訳でもなく、言ってみればシナリオ自体はごく普通です。が、上に書いた「展開バランス」「キャラクター」、そして「キャラクターの、シナリオへの適度な絡み」が一体となって、全体としてとても読みやすく、また読んでいて楽しい物語となっています。キャラの心情描写も良いため、恋愛ものとしての読み応えも良好ですよ。

ただ、恐らくメインシナリオであろう春菜シナリオの後半における、ノベルゲーム史上に残るほどの主人公の駄目っぷりはどうにかならなかったでしょうか(汗)。もちろん、ああしないと物語が進行しないのは分かるんですが、キャラクターに「負の言動」をとらせる時は、もう少し読み手に対する不快感を軽減して欲しいな、と。「こいつなら、そしてこの状況ならしょうがないな」とは、私には思えなかったのです。高校入学の時は男を見せたのに、どう見ても主人公に好意的と思えない奴の一言で、あっさり挫けるなよ、と(苦笑)。この点、作者さんが後書きで書いておられますが、それを作者さん自らが書くのはどうかと、正直思いました(汗)。

ところで、この作品でもう1つ感心したのは、音楽の使い方の上手さ。全て素材のようですが、選曲が非常に良いと思います。聴き覚えのある曲も出て来ますが、違和感はありませんでした。また、おまけの充実度にも目を見張らされますね。ただ、おまけシナリオの「お疲れさま会」はちとどうかと(笑)。

この作品は、第一印象はあまり良くなかったんですが、その第一印象を、プレイした感想が大幅に上回った一作でした。1回のプレイは1時間くらい。一気に読める良作です。恋愛もの、青春ものがお好きな方には、広くお勧めします。
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