第120回/温泉、卓球、殺人事件の三拍子 - あなただけの物語(haki) - ミステリー・サスペンス
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第120回/温泉、卓球、殺人事件の三拍子 - あなただけの物語(haki)

ミステリー・サスペンス
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あなただけの物語

あなただけの物語■制作者/haki(公開終了)
■容量/35.3MB

紅葉の季節。大学生の男女は休みをとって旅館「スパラ」へと、休暇を満喫すべくやってきた。温泉を楽しみ、卓球大会で盛り上がる楽しい休暇となるはずが、突如起こる恐ろしい殺人事件。果たして犯人は? 典型的な「かまいたちの夜」タイプ、エンディングは15種類。気軽に遊べるマルチエンド推理ノベルゲーム。

ここが○

  • 気軽に楽しめ、難易度も適度。
  • ほどほどのプレイ時間なので、肩の力を抜いて楽しめる。
  • 何だか無駄な程に熱い卓球シーンの描写(笑)。

ここが×

  • 推理ものとしては、展開バランスや謎が解ける快感が弱い。
  • この手の作品なんだから、もうちょっと「恐怖感」を出しても良かったのでは。
  • この手の作品で既読スキップがないのは、やはりキツいものがある。

■温泉、卓球、殺人事件の三拍子

この作品については、細かい説明は一切不要でしょう。ずばり「かまいたちの夜」タイプで、捻りは一切ありません。出だしから、休暇をとって車で旅行へ向かう大学生の男女が、道へ迷ったかと思いきや、何とか目的地の旅館へと辿り着くという、既視感満点の展開です(笑)。もっとも、よくある展開という事で、反面安心感を産んでいるのも確かではあります。この手の作品がお好きな方なら、この出だしだけでもそそられるでしょう。

細部も説明不要でしょう。温泉旅館で起こった殺人事件に巻き込まれた主人公達が、無事謎を解けるかというマルチエンドのノベルゲーム。エンディングは15種類となかなか豊富ですが、分岐は派手ではなく、どちらかと言えば前半では選択肢をミスすれば一発で終了、後半は推理シーンで選択肢を間違えたらこれまた終了と、分岐の厚みにはちょっと欠けるという感じも否めません。まあ分岐が厚すぎると、逆に難易度が上がりすぎてしまうので、個人的にはこれくらいでも良いかなと思います。

この手の作品は、往々にして「恐怖」を演出として取り入れる事が多く、かの「1999 Christmas Eve」は、夜中に1人でプレイするのはお勧めできないほどでしたし、「氷雨」「七年凪」なども、恐怖の演出はかなりのものがありました。対してこの作品は、最初からそういう方向は狙っていないのか、どちらかと言うとユーモアミステリー的。この手の作品にありがちな「バッドエンドで死亡」は一切ありません。これはこれで気軽に楽しめて良い感じですが、定番の「閉鎖空間で起こる殺人事件」ものですから、少しは恐怖感を煽る演出や展開があっても良い気はします。

難易度は適度で、そう難しくありません。ただやはり既読スキップは欲しかったですね。また、開始時にはムービーが流れますが、この時のフィルム風の画面の微妙な振動演出は良いですね。雰囲気を出していると思います。

シナリオに目を向けてみると、推理物としてはちょっと展開のバランスが良くない点が気になります。具体的に言うと、まず事件が起こるまで結構時間かかるんですよね。そして、事件が起こってからは(大げさに表現すれば)主人公が推理して、後は事件が解決するだけ。犯人の動機に関しても、伏線などほとんど描写がないですし、もうちょっと前半に伏線を丁寧に張り、またバッドエンドの結果、それまで見えていなかった事実が少し見えるとか、そう言う「少しずつ真実に近づく」展開があれば、基本は同じシナリオでも、プレイした時の感覚が大分変わったんじゃないかなと思いますし、バッドエンドにも意味が出て来るし、それが複数回プレイへの意欲にも繋がると思います。

この作品の場合(この作品に限らず、推理物によく見られる点ではあるが)、トリック自体はなかなか面白いのに、この辺りが弱いので、何と言いますか「事件が起こった後、主人公が謎を解説するのを淡々と聴いているだけ」になっちゃってるんですよね。ちょっと惜しまれます。

こういう複数回プレイを前提とした推理ノベルの場合、トリックの緻密さより、私としては「複数回プレイする事で、少しずつ謎が明らかになり、最終的にプレイヤーが真実に到達する、その展開の妙」が肝だと思っています。単にトリックの緻密さだけならば、推理小説を読んでいれば良いという話になる訳ですし、下手をすれば、難易度が高いトリックに、プレイヤーは頭を抱えるばかり、という事にもなりかねませんからね。

これが推理小説だと、「あれ?」と気になったら、前の方のページをぱらぱらめくって気になる点をチェックすれば良いですが、ノベルゲームだとそれはできません。推理小説と同じ作りで推理ノベルを作ってしまうと、やはりどんなにトリックが良く出来ていても、プレイヤーに「真実に到達する快感」は、なかなか味わわせられないでしょうから(繰り返しますが、この作品に限った事ではない)。

なお、旅館と言えば卓球なのか、この作品にも卓球のシーンが出て来ますが、この卓球シーンがえらく力入ってて読み応えあります。この辺りも含め、推理物としてはかなり肩の力を抜いて楽に読める作品なので、この手の作品がお好きな方なら楽しめるでしょう。ただし、おまけシナリオは蛇足な気が(苦笑)。

それと、一部スクリプトにバグがある箇所があるので(私は、NSDECでばらしてバグを修正し、ついでに既読スキップも実装してしまった)、動作しない場合は作者さんのサイトをご参照ください。
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