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第132回/ジグソーパズルかモザイクか - 水溜まりの向こう側(Lunaria Project)

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水溜まりの向こう側

水溜まりの向こう側■制作者/Lunaria Project(ダウンロード
■容量/52.2MB

両親をなくし、空虚で無気力な生活を送る高校生の天野和哉。そんな彼に、これまた両親をなくしている幼なじみの同級生、朝凪優希が声をかけてきた。「人生、楽しい?」 そして彼の毎日が、徐々に変わり始めて行く。手軽にプレイできる、学園物マルチヒロインマルチシナリオのノベルゲーム。

ここが○

  • 適度なプレイ時間のマルチシナリオ。
  • テンポ良く読み進められ、キャラクターにも嫌味がない。
  • BGMの選曲はかなり良い。

ここが×

  • 伏線が収束する面白みは弱い。
  • テンポは良いが、ある意味唐突な展開。
  • NScripterなのに、何故か既読スキップがない。

■ジグソーパズルかモザイクか

実に半年ぶりのレビューで取り上げるのは、よくあるタイプのマルチシナリオ・マルチヒロインの学園ノベルです。よくあるタイプとは言っても、このタイプをきっちり組み上げるのは実に難しく、3人のヒロインを攻略する事で、ちゃんと1本糸が通る物語を作られた事に、まずは敬意を表したいと思います。

今作は極めてオーソドックスな学園ノベル。出だしの主人公の無気力っぷりで、思わずウィンドウを閉じてしまいそうになりました(爆)。が、1ルートが40分程度というテンポの良さも手伝って、なかなか軽快にプレイできます。登場するキャラクターに嫌味がないのも良いですね。欲を言うと、魅力的な男性キャラクターが1人いれば、より物語が引き締まったような気がしますね。

さてこの作品は、言ってみればラストで伏線が収束するタイプの物語ではありますが、その面白みが弱いんですよね。伏線収束型物語の面白さが、ピースが1つずつ埋まって行く、「謎が解ける」面白さ(私は勝手に「ジグソーパズル型伏線」と呼んでいる)と、色々な要素が集まって1つの事実を構成して行く面白さ、「1つにまとまる」面白さ(同じく「モザイク型伏線」と呼んでいる)があるとします。前者の伏線は、パズルのピースですから明瞭でなければなりませんが、その分できあがりも精緻でなければなりません。後者の伏線は、何でもない物から意外な物ができる事が主眼で、精緻であるより、それその物は単純でも、完成品は想像もできない意外な物である事が望ましいでしょう。

そういう観点からすれば、この物語は「モザイク型」とするには出来上がりの意外さに欠けるので、「ジグソーパズル型」としたいところですが、そうなると気になる点もあります。例えば、春菜シナリオであれば、彼女の過去や、その結果起こった出来事に対する描写が欲しいですし(なのでラストの唐突感が否めない)、優希シナリオであれば、彼女の葛藤や、主人公が前向きになる心理についての言及が欲しいですし、しらほシナリオでは主人公の妹がなおざりです。「ジグソーパズル型伏線」は、パズルなだけに、出来上がりが意外である必要はなくとも、ピースが1つでも足りないと、決定的な「不足感」を持たせるのです。

ラストに、凄く驚くどんでん返しがある訳ではない作品の場合、そこまでのパズルのピース(つまり伏線)をもっと明瞭に、かつできあがりが意外でなくても、もっと精緻に描けば、同じモチーフでもより完成度が上がったのではないかなあと思います(「ヒトナツの夢」などは、そんなタイプの作品ですね)。短いながらも、全体の筋はきちんと通っているだけに、もうひとつ凝った物語構成であれば、より楽しめたのではないでしょうか。

この作品で感心したのは、音楽の使い方。大きな容量の大部分を占めていると思われますが、選曲も良く、場面を盛り上げるのに一役買っていると思います。1枚絵は、各ヒロインごとに2枚。短編とも言えるくらいの長さですし、これくらいでも十分でしょう。ただ、マルチシナリオですからやはり既読スキップは欲しかったですね。

3人のヒロインのシナリオを通して読んでも1時間半ですから、空いた時間に気軽に楽しめる作品です。攻略も全然難しくない(選択肢はルート選択に直結する物しかない)ので、そう言う意味でも非常に軽く読めるでしょう。色々書きましたが、作者さんの可能性を感じさせてくれる作品でした。より完成度の高まった次回作に、是非期待したいと思います。

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