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第138回/Hello, world! See you, Key7! - 1980円の君~I am a software.(Physics/Games)

2009年09月29日
恋愛(男性向け) 0

1980円の君~I am a software.

1980円の君~I am a software.
買ってきたセキュリティソフトを、早速起動するが。
準推薦
■制作者/Physics/Games(ダウンロード
■容量/42.5MB(ノンボイス版)、79.3MB(ボイスあり版)

高校1年生の渉が、ある日インストールした1,980円のセキュリティソフト。ところが彼が眠っている間に1人の少女が現れた。驚いている渉を尻目に、その少女は渉が海で取って来た魚を、片っ端から「危険です!」と処分し始めた。結局渉はその少女と家に置いてやることになり、渉と彼女の1年間の共同生活が始まった。異色のセキュリティソフト擬人化恋愛ノベル。

ここが○

  • ありそうでなかったアイデアが面白い。
  • パソコンのデスクトップ画面、ウィンドウを模した用語解説。
  • LisaやらOS/2やら、オールドファンなら懐かしいはず。

ここが×

  • 設定のアイデアの割りに、進行は一本調子。
  • 何となく、後半の展開に緊迫感が欠ける。
  • あのオチは、ハッピーエンドと言えるのだろうか?

■Hello, world! See you, Key7!

よくあるタイプのノベルに、「時限恋愛ノベル」があります。私が今勝手に名付けましたが。つまり「決められた期限を越えると、相手は消滅するとかいなくなるとか、とにかく恋愛に日限が定められており、いかに残された日々を充実して過ごすか、またはその日限をどうにかするかが主眼」な作品の事。

既存の作品では「ぴあす」「I'm」「ランプ lamp/rumble」辺りがぱっと思い浮かびますし、多くの「不治の病系」がこれに該当するでしょう。そしてこの作品はこの系統としても、かなり変わったシチュエーションです。何せ相手は「セキュリティソフト」なんですから。

この作品は「PISSENLIT」を作られた作者さんによる作品。随所にかなり前作より進歩した点が見られ、成長のあとがうかがえます。また、さまざまな小技が効いていて面白いですね。「フォクすけ」も登場するし(笑)。

まずこの作品で目をひくのは、Windowsのデスクトップのスクリーンショットが出て来たり、アラートウィンドウを模した用語解説が出て来る事。これは上手い小技です。本来突飛すぎるとも言える設定を、上手に現実世界にリンクさせる事に成功した演出です。あれがなく、単に文字だけで表現していても、物語は一緒だったでしょうが、プレイヤーが物語に「すっと入り込む」ためのハードルを、あの演出がぐっと下げていますね。また、Lisaが出て来た時などは、「懐かしい!」と言ってしまいました。

変わった設定と比べると、物語自体は「時限恋愛ノベル」としてはスタンダードな形。ウィルスセキュリティソフトですと、もちろん使用期限はありますが、その期限で更新できない理由付けはなかなかちゃんと考えたと思います。ただし、ものがプログラムだけに、「時限もの」として物語を彩る大きな要素の1つである、「差し迫る別れへの緊張感」はちょっと薄かったような気がしなくもありません(ソースコードを保存してれば大丈夫だし)。

もっとも、それも1つやり過ぎると、もの凄く「押し付けがましい」展開になったりするんですが、そのために後半が一本調子になった感は否めません。ラストでの解決方法も、ちょっと荒っぽい感じが感じがしますし、主人公、あっという間にJAVAを習得していくし(笑)。

では恋愛ものとして見ると、特に後半は実に「純愛ノベル」と言っても良いくらいの、正統派で少々恥ずかしい内容。個人的には、渉と恵菜の恋愛に至る要素や、恋愛におけるドラマが薄く、そこをもう少しきちんと描写できれば、内容により厚みが増したように思います。何せ相手は生身の人間ではありませんし、主人公である渉が彼女にひかれるようになっていった描写も、もう少し順を追っての描写があれば、と思われます。しかし、途中2人がケンカし、渉が謝罪文をメモ帳で書き、恵菜がウィルスチェックのためにそれを見てくれる事を期待して、デスクトップに保存しておく辺りは、上手い展開だなと思いました。

今作、設定は面白いアイデアですが、特に後半に少々捻りが欠けてスムーズに進行しずぎ、もう1つ盛り上がりに欠けたのが惜しまれます。恵菜がセキュリティソフトである事を活かした、「時限」「恋愛」以外の流れが、もう1つくらいあれば、物語の面白さは何倍にも増したのではないかと思えてなりません。

しかし、その独特のアイデアの活かし方、盛り込み方は上手く、ウィルスとの対決シーンや、渉が目覚めて、パソコンの画面に昨夜の恵菜とのやり取りが、素っ気ない2、3行の文字で残っているところなど、非常に光る描写、演出も多々見られて、前作からの進歩、今後の可能性を大いに感じさせてくれるものでした。期待料込みで「準推薦」。この作者さんの次回作に期待しています。

ヒロイン恵菜のボイスあり版とノンボイス版がありますが、これは好みで選ばれると良いでしょう。プレイ時間は1時間。ツールは「Live Maker」。ツール自体も進化していて、プレイ環境に不満はありません。選択肢はなし。ちょっと毛色の変わった、「時限純愛ノベル」。こういう野心作は好みです。プレイすれば、ちょっとパソコンに詳しくなれるかも?
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この記事を書いた人: NaGISA
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