第141回/さくらのすてきなクリスマス - 桜の木の許で(篝ほのか) - 学園・青春
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第141回/さくらのすてきなクリスマス - 桜の木の許で(篝ほのか)

学園・青春
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桜の木の許で

桜の木の許で■制作者/篝ほのか(公開終了)
■容量/14.9MB

一宮学院高等部の学院祭最終日。花火大会が行われている時に合唱部員の北原柚月が転落死した。彼女の死は事故として処理され、やがて合唱部はクリスマスコンサートのための合宿に入る事になるが……。果たして彼女の死の真相は? エンディング数20の、本格的な学園マルチシナリオノベル。

ここが○

  • 文章は非常に上手い。描写も丁寧。
  • 小説に挟んだ栞を思わせる、お洒落なレイアウト。
  • 本格的な分岐シナリオ。

ここが×

  • 視点変更が多すぎて、たまに誰が行動しているのか分からなくなる。
  • ミステリーとは言い難い内容なので、時にだれる。
  • あっさりしすぎの感がある終わり方。

■さくらのすてきなクリスマス

この作品も、レビュー中断前にプレイするつもりで、デスクトップに長期間放置していました(汗)。どうしても、本格的なマルチシナリオのノベルゲームは、レビューをなかなか書けないんですよね。ようやくご紹介は、「桜の木の許で」。

舞台は、合唱部のクリスマスコンサートのために使用している合宿所。そして上の作品紹介を読んだだけですと、これは典型的な「かまいたちの夜」タイプの、「閉鎖空間サスペンス」ものかと思われるかも知れませんが、あまりそういう雰囲気ではありません。もちろんそのような展開を見せる場合もありますが、ほとんどの箇所で、物語はむしろ「のほほん」と進んでいきます。
まず目をひくのは、画像が右だけ表示されている独特のレイアウト。これが、文庫本に栞を挟んでいるようなイメージで、とても洒落ています。立ち絵、イベント絵は一切ないんですが、かえって想像力をふくらませてくれました。また、文章力の高さは特筆ものです。と言ってレトリックに凝っているタイプの文章ではなく、素直に書かれているので、読みやすいと思います。キャラクター描写も簡潔にして丁寧です。

が、この物語は視点変更が非常に多く、その度に語り手が変わったりします。更には三人称的な描写をする箇所もあったりして、読んでいて時々混乱に陥ったりします。また、語り手がその都度変わるせいか、ちょっと登場人部の心情を語りすぎていると感じる箇所もありました。この作品は推理ものではありませんので、その事が物語に直接影響を及ぼしている訳ではないのですが、もしこのような手法をとるのであれば、プレイヤーに少し配慮があっても良いのではないかと思いますし、心情描写はここぞという場面以外では、もう少し抑えめでもいいように感じます。

さて、この作品は本格的なマルチシナリオ、マルチエンド式です。文章も読み応えたっぷりです。しかし、何とも不思議な事に、マルチシナリオのノベルで得られる「もつれた糸がほぐれる快感」のようなものが、あまり感じられません。その理由を何故と考えてみるに、描写自体は凄く現実的でリアリティがあるのに、キャラクターの言動や行動原理に、いまいちリアリティが欠けるせいではないかと思います。

例えば、トゥルーエンドで明らかになる犯人の動機ですけど、「ええ? そんな動機で殺しちゃうの?」と感じました。また、過去の出来事などが色々と裏では複雑に絡んでいるんですが、各人色々と裏事情を持っている割りには、論理的な絡みが希薄であるため、数学の証明問題とか論理パズルが解ける時にも似た「なるほど、そういう事か」という感覚は、薄いように感じました。もちろん、この作品は推理ものではありませんので、だからと言ってそれが物語の質を落としているという訳ではないのですが、トゥルーエンドを最後まで読んでも、何となく釈然としないものを感じたのは確かです。

とは言え、論理的にかっちり組むだけが物語ではありません。この作品は、数式を解くように目を三角にして読み解くよりは、いくぶんのんびりとした雰囲気の中で、人間模様が織りなす物語を楽しむのが良いと思います。

そういう観点で見ますと、地味ながら誠実に組まれたキャラクターが繰り広げるマルチシナリオは、十分以上に楽しめるでしょう。途中、かなり緊迫した展開を見せる事もありますし、「かまいたち」ばりに全員死亡というエンドもあったりしますし(その場合、犯人は誰なんだよ、という話になる気が(笑))。ただ、トゥルーエンドを迎えても、単にタイトルに戻るだけでちょっと地味なのが惜しまれます。ま、おまけシナリオが読めたりしますが。

システムは吉里吉里です。プレイ時間は3時間くらいじゃないでしょうか。2回目以降は、既読スキップを使えば、かなりさくさく進むでしょう。正統派の密室推理ノベルが大好きな方だと、ちょっと方向性が違うので面食らうかも知れませんが、これはこれで読み応えがある学園ノベルです。秋の夜長にじっくり読んでみてください。
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