第144回/ロジカルな不条理 - cubic 3(グロビュール) - ナンセンス・不条理
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第144回/ロジカルな不条理 - cubic 3(グロビュール)

ナンセンス・不条理
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cubic 3

cubic 3■制作者/グロビュール(ダウンロード
■容量/36.5MB

僕が目を覚ますと、そこは暗闇の中だった。僕には記憶が何もない。そして、暗闇に浮かび上がる赤い光。そいつは一体何物なのか。繰り返しプレイする事で全貌が明らかになり、プレイする度にキャストが変わるパズル風の作りが斬新。ちょっとダークでグロテスクな新感覚マルチシナリオノベル(この作品は18歳以上推奨です)。

ここが○

  • キャストが展開によってまるで変わる斬新さ。
  • 段々話が繋がって行く作りのエンディング一覧。
  • 音楽、効果音も雰囲気たっぷりで、グラフィックスもクール。

ここが×

  • 斬新すぎてついていけない恐れ。
  • グロテスクな描写もプレイヤーを選ぶかも。
  • パズル的な割りに、あまりすっきりした読後感は得られない。

■ロジカルな不条理

有名作です。これまた今更私が取り上げる必要もない気がしますが、これほどの作品のレビューを書かないというのも、レビューサイトの端くれとしてどうかと思いますので、今回取り上げます。斬新すぎる新感覚ノベル、「cubic 3」です。

マルチシナリオノベルは、概して中編以上の長さである事が多いです。それもそのはずで、分岐の整合性を取ろうと思ったら、ある程度の長さは絶対に必要でしょう。しかし、この作品は本格的な分岐を持つにもかかわらず、1回のプレイは10分ほどの短編。それでいて、分岐ノベルの醍醐味である、「徐々に全貌が明らかになる面白さ」も、しっかり描いており、その作りには驚かされます。

登場人物は「僕」「君」「あいつ」の3人。「僕」が冒頭、真っ暗闇の中で記憶を失っている状態で目覚めるところから、話が始まります。しかしびっくりするのは、展開によって「僕」「君」「あいつ」が誰なのか、変わってしまう事。ラストにキャストが出るんですが、こんな展開をさせた分岐ノベルは前代未聞でしょう。

また、クリアしたらエンディングリストが見られるんですが、このエンディングリストがまた凄く、クリアしていった話の繋がりが段々分かって行くというもの。斬新さだけで言えば、これほど斬新な作品もありません。

ただ、斬新すぎてついていけない人が出て来る恐れもあります。分岐によってキャストが変わるというのは確かに凄いのですが、そのせいで特に前半の物語内では、明確な描写が出来ていません。それもそのはずで、明確に描写してしまったら論理的に成り立たなくなります。なので、後半でも同様の描写になっており、いまいち読後感がすっきりしない結果になっています。

すっきりしない読後感は、全部を読み終わった時も同様です。段々シナリオが繋がって行く様は確かに凄いです。凄いんですが、こちらも少々無理矢理気味なところがある感は否めず、全てのエンディングを見た後に、「え???」となってしまう人も出ると思われます。作りがパズル的なのに、全体がちょっと精密さを欠くんですよ(この作りならそれも当然という話も)。

要は、ロジックを駆使した結果、何だか不条理なシナリオが組み上がっているので、出来上がりと展開のギャップに、かなりのアンバランスを感じるのです。作りはパズル風ですが、むしろパズル的な楽しみを求めるよりは、その雰囲気を味わうべき作品でしょう。

ジャンルは、分類すればSFになるんでしょうか。展開によっては非常に生々しい描写があったりします(18歳以上推奨ですし)。リアルな効果音、シンプルですが高水準の音楽が、その雰囲気を一層高めています。よくよくシナリオを見てみれば、めちゃくちゃな事件が起こっている割りに、あっけらかんとした雰囲気だったりしますが、それがこの作品の色というものかも知れません。グラフィックスは、全体に凄くお洒落。一枚絵も水彩画調で凄く綺麗です。

この作品は、凄く新しい事に挑戦しています。結果として、その新しい挑戦が全部成功しているかと言えば、必ずしもそうとは言い切れないのですが、手軽にプレイできる短編作でありまがら、意欲的なマルチシナリオを組み上げた点は、大いに評価されてしかるべきだと思います。

全体を眺めると、細部は緻密なのに、出来上がりがとても大胆という感じの作りですが、その「緻密、かつ大胆」なところが魅力とも言えます。既読スキップだけでなく、「1つ前の選択肢に戻る」システムも、大変ありがたいものです。今作は、むしろ普段あまりマルチシナリオものをプレイされない方にこそ、お勧めできる作品だと思います。全部読んでも30分から40分です。新しい世界を味わえる事は、保証します。
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