第145回/限りなく青に近い空 - 僕の心は雨のち晴れ(Team Eye Mask) - 学園・青春
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第145回/限りなく青に近い空 - 僕の心は雨のち晴れ(Team Eye Mask)

学園・青春
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僕の心は雨のち晴れ

僕の心は雨のち晴れ■制作者/Team Eye Mask(公開終了)
■容量/53.9MB

望月空は高校生。打ち込んでいたピアノもやめ、代わり映えのしない毎日を送っていた。ある日、空は屋上のフェンスの外に立っている少女を見付ける。慌てて屋上に駆けつけた空の目の前に現れた少女には、どこかかつての幼なじみの面影が。PSPでもプレイできる、横長画面の学園ノベル。

ここが○

  • 音楽がとてもよく出来ている。
  • 尻上がりに盛り上がって行く展開。
  • 後半成長を見せる主人公。

ここが×

  • 文章といい展開といい、リズムが悪すぎる。
  • 噛み合ってないキャラクター。
  • 前半駄目すぎる主人公。

■限りなく青に近い空

この作品は変わり種と言えば変わり種。なんとPSPでプレイできるんだそうです。ノベルゲームをポータブルゲーム機で遊ぶ機会があるかどうかはともかく、独特の横長画面と相まって、面白い雰囲気を感じさせます。3年くらい前の作品ですが、その時はラスト近くでエラーが出て止まってしまったんですよね。今回、無事に最後までプレイできました。

この作品は、一番最近の作品で言えば「ハッピーエンド」が近い雰囲気を持っていると言えます。シナリオのアウトラインは早々と明らかになりますから、この手の作品の場合は、いかにして「読者にうっすらと見える全体像を、いかにあざやかにくっきりと描き出してみせるか」にかかっていると言えましょう。

が、今作は色んな意味で非常にテンポが悪いです。まず、主人公空とヒロイン夢乃の会話。とてつもなく冗長。例えば冒頭の夢乃転入シーンなど、読者には早々と「分かった分かった、夢乃が転入してくるんでしょ?」と分かるのに、画面の向こうでは延々とやり取りを繰り返しているので、読んでいる途中で疲れてしまいます。

主人公は夢乃が転校してきて驚いているんですが、描写が長過ぎて読んでる方はちっとも驚けないんですよね。ぱっと開ければ驚くびっくり箱を、10分くらいかけてじっくり開けている感じ。主人公に驚かせるなら、読者にもその驚きのエッセンスを示して欲しいと思います。ああいう場面こそもっとさらっと流せば、「おっ?」とインパクトを与えられるはず。

この作品に限りませんが、読者がストレスなく作品世界の描写を感じられる時というのは、読者が理解して頭の中で描く速度と、作品が展開する速度がシンクロしている場合だと思うのです。ですから、読者はとっくに先が読めてるのに、だらだらと展開を引っ張ったらくどくなりますし、逆に読者が全く状況を把握していないのに、どんどん展開していっては、読者は置いてけぼりとなります。分かりやすい場面はさらっと。大切な場面はじっくり。リズムって大事です。

リズムと言えば、キャラクター同士の噛み合わせも良いとは言えません。くどいくらい自己主張する夢乃と、いらいらするくらい後ろ向きの空、物語的には重要な立ち位置のはずである永海が、何と言うかマッチしていないのです。また、永海はその立ち位置の重要性に比べると、どうにも扱いが中途半端。更に主人公の空が、困った事に背負わなくても良い物を勝手に背負って殻に閉じこもる男なので、夢乃との壊れ気味のやり取りも含め、読んでいる方が考え込んでしまう結果に。

その分、後半の空は良い感じの立ち直りを見せます。「少年の成長物語」としてもなかなかの展開で、ラスト近くの空は男を見せてくれます。しかし気になるのは、その終わり方。「ここで終わったら綺麗だろうな」というところで2回くらい引っ張られ、「あれ?」と思っているうちに終わります。シナリオのリズムといいますか、「ここはさらっと流す。ここはためてじっくり書く」と言ったメリハリが欲しかったように思います。終わった後も、何の余韻もなく、いきなりタイトルに戻ります。終わり方自体は綺麗なんですから、エンディングに一工夫があればと思いました。

この作品で特筆すべきは音楽です。特に、空が自作したという設定のピアノ曲がBGMに使われていますが、これは素晴らしい出来。楽譜があるなら私も弾いてみたいほど。また、背景写真は最初から最後まで、青空と白い雲の画像で統一されています。これが単調にもならず、思いのほか良い効果を上げていると感じました。

冒頭で「うっすらと見える全体像を、いかに描き出すか」と書きました。その意味で、読者にはとっくに分かっているのに細部だけ隠して引っ張り、リズムを崩している感なきにしもあらずです。シナリオ展開自体は良いものであるので、やはりテンポ、リズムが変われば、はるかに印象が変わったのではないでしょうか。

プレイ時間は3時間弱くらい。音楽のメリハリがきいていて、ほとんど学校の中でしか展開しない物語なんですが、意外なほど単調さはありません。ラストもなかなか綺麗に決まっており、読後感はすっきりしています。「余韻が後にひく」学園恋愛ノベルをお探しの方にお勧めします。
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