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第147回/人生涙と笑顔あり - ちょこっとループ(ちょこっとループ制作委員会)

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ちょこっとループ

ちょこっとループ推薦
■制作者/ちょこっとループ制作委員会(ダウンロード
■容量/14.6MB

「年齢=彼女いない暦」の、さえない主人公の望。2月14日は、朝から憂鬱だった。「バレンタインデーなんてなくなればいいのに……」。そんな事を思いながら通学するが、思いもかけず意外な事件に巻き込まれる事になる。主人公の成長とヒロインとの交流がとても暖かい、短編ループものの傑作。

ここが○

  • 主人公の心の成長、ヒロインとの心の交流がとても暖かい。
  • 小技がきいているループの使い方。
  • オチのつけかたが非常に綺麗。

ここが×

  • 主人公が卑屈すぎるような気が。
  • 一部女性キャラに存在意義がない。
  • 気が付けばタイトルに戻っている余韻のなさ。

■人生涙と笑顔あり

1年9ヶ月、23作ぶりの「推薦」。実はこの作品を推薦にするのは、相当に迷いました。間違いなく良い作品なのですが、どうにも荒削りで、未完成チックなところが多々あるのです。しかし、それを除いても非常に感銘を受けた作品ですし、「推薦」は出せる時に出しておけという格言もあるので(?)、久々の推薦作をご紹介です。

バレンタインをテーマにしたノベルゲームって、案外ないような気がしますが、この作品はずばりバレンタインをテーマにしています。しかも、「年齢=彼女いない暦」の、妙に卑屈な主人公。プレイすれば、主人公の望はむしろ良い奴である事に気付くんですが、冒頭の望はかなり卑屈です。その卑屈さに、思わず同調してしまうプレイヤーもいるかも知れません(笑)。

さて、ループものと言えば、言わずと知れた名作「ひとかた」です。あちらは、繰り返しのメリットを最大限活かした見事な伝奇謎解き活劇でした。では今作はどうかというと、この作品は、少し変わった形でループを活用しているのです。

ループものは、時間を繰り返す事を利用して謎を解いたりするものが多いですが、この作品はそう言った要素は薄いです。もちろん多少は謎らしきものも解きますが、メインはむしろ主人公である望の成長なのです。同じ日の繰り返しを活用する事で、主人公の成長物語を描いているんですね。そして、この成長物語が、非常に良く描けていて、少々感動を覚えたほど。

主人公の望に、母親以外からチョコレートをもらう事なく死んでしまったという、幽霊のユウ(また安直な……(笑))が絡み、コンビで活動します。そして、望がチョコレートをもらえればユウが成仏できるという条件でストーリーが進むのですが、ストーリー進行と望の成長の具合、そして望とユウの絡み具合がとても良く、非常にテンポ良く読めます。ユウの存在意義が少々弱いですが、短編とも言える長さですから、そこは気にしない方が良いでしょう。

そして、本作の肝とも言えるのは、ヒロインである冬木千代と主人公である望の交流。千代は、登場当初は「何だこいつ?」みたいなキャラでしたが、ループする度に、千代の揺れる気持ちの裏側が見えて来ます。プレイヤーに見えるという事は、ループしている主人公にも見えるという事で、望の葛藤が手に取るように分かるのです。その葛藤を振り払い、ループする事を逆手にとり、ループすればこの出来事はなかった事になってしまう事を知りつつ、力強く前に進もうとする望の決意が、非常に感銘を与えてくれます。

その展開の勢いそのままに、主人公へのご褒美のように与えられる美しいラスト。これには感心しました。そして、さらっとやってくるユウとの別れが、またほのかな余韻を残します。この作品ほど、主人公に共感でき、素直にその成長を応援できる作品も珍しいのではないでしょうか。一人称で語られる文章も、べとつかずかさつかず、それでいて高校生らしい迷いと強さを感じさせます。個人的には、この作品の望には、「ベスト主人公賞」を送りたいほど。

もちろん、粗を探そうと思えばいくらでも出て来ます。他の女性キャラの存在意義がないとか(恐らく、当初はマルチシナリオとして制作する予定だったのでしょう)、誤字脱字が多いとか、終わったら何の余韻もなくタイトルに戻るとか……。しかし、プレイ中に感じる事のできる感動は、非常に上質です。上質かつ「持続性のある感動」なのです。ラストだけの感動ではありません。途中からずっと、主人公に共感できるのです。こんな作品にはなかなか出会えません。

シナリオをよくよく見れば、突飛な事は何もしておらず、むしろよくあるネタを組み合わせたものです。しかし、よくあるネタでも丁寧に組み合わせると、これだけの話になるのだな、と。逆に、発想とか描写が新しくても、必ずしも読み手に感銘を与える作品になる訳ではないというのが、こういう作品を目の当たりにすれば、よく分かります。

この作品は、匿名掲示板2chのニュース速報VIPで作られたそうです。私がこの作品に対して、唯一最大残念に思う点は、匿名掲示板発祥故に、プレイして得られた感動を作者さんにお伝えできない事です。

ですから、この場を借りて作者さんに、感謝の気持ちをお伝え申し上げます。「素晴らしい作品、素晴らしい一時をありがとう!」と。
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