第154回/合い言葉はブラックオクトウバー - ブラックオクトウバー(ヲサカナソフト) - シリアス・感動系
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第154回/合い言葉はブラックオクトウバー - ブラックオクトウバー(ヲサカナソフト)

シリアス・感動系
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ブラックオクトウバー

ブラックオクトウバー準推薦
■制作者/ヲサカナソフト(ダウンロード
■容量/21.2MB

全国屈指の中高一貫進学校、野猿高校。高校から編入した辻浦丈は、ある日のとあるアングラサイトで、野猿生しか見る事のできないチャットのアドレスを発見し、興奮気味にチャットに入る丈。チャットのメンバーも増えたある日、ある事件が起こり、メンバー達は初めて顔を合わせる事に。緊迫感溢れる展開の学園ノベルゲーム。

ここが○

  • 相変わらず文章は切れ味抜群。キャラも立ちまくり。
  • クールな立ち絵がまた雰囲気よし。
  • 序盤のチャットルームでのやり取り、中盤の息を飲む展開。

ここが×

  • 後半にもう一捻りが欲しかった気も。
  • 少々ダークな展開をするので、人を選ぶかも。
  • エンディングがないのは寂しい感じ。

■合い言葉はブラックオクトウバー

あの「Homeless, the Vagabond」の作者さんの作品です。もう見付けた時、マッハの速さでダウンロードしました。それほど、前作の文章やキャラクターは私の心に響いた作品だったのです。この「ブラックオクトウバー」も、読んだ時心底「私にはこんな物語は絶対に書けない」と唸ってしまいました。

今回、立ち絵が凄くクールです。今回の舞台は、全寮制の超進学校で、登場人物達はみんなその生徒。ともすれば読み手との乖離を感じさせかねないでしょうが、あの立ち絵と独特の文章で、登場キャラクターが全員大変生き生きと魅力的で、そんな心配は無用でした(個人的には「Homeless」のあの立ち絵も好きでしたけど)。単にキャラが立っているだけでなく、キャラの長所短所(人間としての)含めて、描写が生々しいのです。生々しいにも関わらず、読み手にストレスを与えない筆致には感心させられます。文章も、前作同様の「ヲサカナ流」で、切れ味抜群です。

この作品で凄いと思うのは、まずその舞台設定です。序盤は、メンバーしか入れないチャットルームでの描写が続きます。これが雰囲気が出ています。学校にいる問題教師をどうにかしようという目的で話が進むんですが、主人公である丈は、その事実にイマイチ乗れないという感じで、一歩下がったところから見るスタンス。この辺りの、チャット参加メンバーの「温度差」が、非常に上手い具合に描かれています。

また、中盤ではチャットのメンバーの1人が「その問題教師の部屋に火をつけてやる」と発言するんですが、その発言の直後、本当に問題教師の教職員寮から火が上がるのです。これで読み手の緊迫感は一気に高まります。チャットルームの演出とノベルゲーム的表現が相まって、この辺りの展開は本当にスリリングです。

これ以降は、過去回想も絡めて、非常に息を飲む展開となります。チャットの発言に合わせて火の手が上がるだけでも驚くのに(まあそこまでは作者さんのページにあらすじとして書いてますけど)、その直後にまたプレイヤーが目を疑うような展開が待っています。この中盤の緊迫感は、既出の作品と比べても随一と言えましょう。

この中盤以降で、キャラクターの1人の過去が明かされるんですが、この過去というのが少々(もの凄く?)ダークで、読む人によっては「うわ」となってしまうかも知れません。ただ、この作品は終わり方が非常に綺麗なので、読み終わってそのダークな気分を引きずったりはしませんけど。

その後半ですが、もうちょっと心理戦があっても面白かったのではないかという気もしますが、中盤までの展開からすると、意外なほど前向きで正統派というか、奇をてらわない潔い展開となります。まあ、どろどろした醜いやり取りを見せられるよりは遥かにいいですし、かえってそれで良い読後感に繋がったとも言えますが、中盤までのもの凄い緊迫感と比べると、後半にもう一捻りがあっても面白かったのではないでしょうか。中盤と後半に、ちょっとギャップを感じました。「起承転結」の「起承転」までは完璧だったので、「結」にもう一押しがあれば「推薦」でした。

ヲサカナソフトさんの作品だけあって、FLASH動画のオープニングは健在です。後半はかなり急転直下ですとんと落ちますが、終わり方が綺麗ですし、だらだら描写するよりはあれでいいかなとも思います。中盤の少々鬱気味な展開からすると、意外なほど爽やかな読後感を残してくれる作品でした。ちゃんと、全部のキャラに見せ場がありますしね。ただ、これだけの作品ですから、エンディングなしでタイトルに戻ってしまうのは、ちょっと寂しい感じでした。

システムは吉里吉里。読了までは1時間半前後だと思います。選択肢はなしの一本道。長さを感じさせずに一気に読める作品です。とにかく中盤での緊迫感は経験してみる価値ありです。この作品を読んでみると「Homeless, the Vagabond第二章」にも期待が高まりますね。
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