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第158回/不思議な引っ張り、見事な後味 - 私立桜坂学園には幽霊が棲息している(Nマニア)

学園・青春
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私立桜坂学園には幽霊が棲息している

私立桜坂学園には幽霊が棲息している準推薦
■制作者/Nマニア(ダウンロード
■容量/12.2MB

私立桜坂学園に住み着いている、自縛霊のゆき。そんなゆきを見る事ができるというだけで、彼女に付きまとわれる佐山。ゆきは学園内で困っている人を見ると放っておけないお人好しで、山下君なる生徒の恋愛を、佐山に応援する事を命ずるのだが。なんとも奇妙で、でもちょっとハートフルな物語。

ここが○

  • 立ち絵はないが、キャラは立っている。
  • とにかく、何とも言えず読み手を惹き付けるパワーがある。
  • 途中までの印象からすると、意外なほど綺麗なラスト。

ここが×

  • 読みやすい文章とは言えない。改行が少なすぎて読みにくい。
  • 主人公がかなり壊れ気味。
  • エンディングはなく、演出もかなり寂しい。

■不思議な引っ張り、見事な後味

なんとも奇妙な作品をご紹介。この奇妙な味は、キャラクターメイキングによるものなのか、それとも独特の文章によるものなのか、それともどちらにもよるものなのか。とにかく、プレイしていただければ「なるほど、奇妙だ」と思っていただけるのではないかと思います。

この作品の舞台は、桜坂学園という高校。そこに住みついた自縛霊のゆきと、ゆきが見えるという理由で彼女に付きまとわれている生徒の、佐山友貴が主な登場人物。で、ゆきはかなりのお節介焼きで、悩んでいる生徒を見付けては、その生徒のサポートを友貴に命ずる、と。この出だしだけなら、学園ものとして普通の出だしですし、引きもなかなかのものです。

今作は文章がまず独特です。下手ではなく、むしろかなり上手い部類に入ります。が、改行が少なすぎ、時には延々と画面の半分近く文字が表示される事もあり、読んで快適とは言い難いです。また、キャラクターメイキングと言いますか、特に主人公があまりに極端すぎて、中盤までは「この主人公は壊れているんじゃないか」と思わせられました。

事実、作品の主眼は友貴が(自分で好き好んでやってるわけではないにせよ)山下君の恋路を応援するという内容ではありますが、中盤辺りで「おいおい、この主人公大丈夫か?」と思いましたし。あと、前半で描かれる主人公と妹の一件なども、読む人によってはストレスになるかも。私も読んでいて、「いくら反抗期とは言っても、それはないんじゃないか」と思いましたし。

しかし、それでもやめずに読み進めたのは、何とも言葉には表現し辛いんですが、読み手を捕らえて離さない、意味不明なパワーがあるからです。事実「もう止めよう」とは思いませんでした。主人公はかなりアレですが、登場キャラはみな非常に存在感があります。立ち絵は一切ないのに、キャラが立っています。そして、終始読者を引っ張る、正体不明な「引っ張り」の力。展開がどうとか、起承転結がどうとかではなく、この作品の持つ不思議な「引っ張り」の力は、ちょっと説明がつきません。

そして何より、読後感が良いんですよ。読んでる最中は「何だこの主人公は?」と思ったりするんですが、作中で、読者が主人公について感じていた違和感に、主人公自ら気付くんです。そして、主人公は自分でめちゃくちゃに絡めた糸を、自らほどきにかかり、無骨な方法で解決を試みる、と。それが、主人公だけの力ではなく、他のキャラの力も大きいのですが、一応解決するので、読み終わった時には、途中で感じた主人公に対する「何こいつ?」感が、ほとんど消えているのです。これを狙って書いたのだとしたら、この作者さんの技量には、舌を巻くほかありません。

また、その解決方法にしても、主人公が力技で解決する訳でなく、その解決に当たっては、登場キャラ全てが何らかの役割を持っているんですね。これが、読後感の良さに繋がっているのではないかと思います。この「オチに関わる問題解決に、全てのキャラが何かしら関わる」というのは、読後感の良さを生み出すためには、非常に大きな要素です。また、オチで主人公が、山下君を応援する事に、自縛霊のゆきから強制されたからではなく、自分で意義を見出したというのも、読後感の良さを生んでいる一因でしょうね。何とも不思議な作品です。

難点と言いますか、全体に作りが非常に素っ気ないです。ツールはNScripterですが、アプリケーション名が空白なので、もの凄く味気ないです。また、NScrpiterの割と古いバージョンをデフォルトで使用しているようで、文字速度が変わらなかったり。あるいは、良いオチがつくのにエンディングもまるでなかったり。良い物語なのだから、もう一手間をかけてもらえたら、と思う点がありました。

プレイ時間は1時間程度でしょうか。見た目は味も素っ気もないんですが、読み終えた時は「ほー」と感心させられました。作者さんによると、この作品は「第一章」という事で、これ以前もこれ以降も話があるそうです。続きや以前を読んでみたい気にさせられた、一風変わった良作だと思います。文章は万人受けとは言い難いですし、色気も何もないですが、この作品の持つ「不思議な引っ張り」の力を、是非味わってみてください。
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