第159回/明るい色のとなりに暗い色を置く - 夏色のコントラスト(あいはらまひろ) - 学園・青春
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第159回/明るい色のとなりに暗い色を置く - 夏色のコントラスト(あいはらまひろ)

学園・青春
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夏色のコントラスト

夏色のコントラスト準推薦
■制作者/あいはらまひろ(ダウンロード
■容量/27.7MB

高校2年の夏休み、以前海辺の田舎町で中学3年間を過ごした時、仲の良かった女の子から暑中見舞いの葉書が届いた。懐かしさに駆られて、彼女の自宅に電話をかける。そして1年半振りにその町へ泊まりがけで出かける事になった。夏の日の淡い青春物語を描いた、短編ノベル。

ここが○

  • 読みやすく丁寧な文章。堅実で嫌味のないキャラクター。
  • 夏の日射しを感じられそうな雰囲気。
  • 心に残る言い回しが多く、展開のバランスも良い。

ここが×

  • ラスト近く、もう一捻りが欲しかった気も。
  • 展開は王道で、特に波乱がある訳ではない。
  • 人によっては「青臭い」と感じてしまうかも。

■明るい色のとなりに暗い色を置く

Beyond the summer」「Begin with you!」でおなじみ、あいはらまひろさんの作品を久々にご紹介。この作品は、例の連作短編ノベル企画で、8月の作品でした。私の「弥生桜の空に笑え!」は3月でした。私の作品はとにかく「3月」を前面に押し出していましたが(くどいほどに(笑))、この作品もまた、8月の焼け付くような日射しと影のコントラストが、全編を通してはっきりと息づいています。

あいはらまひろさんという方の作風は、凝った伏線とか意外などんでん返しではなく、むしろ王道で正統派の作り、自然な流れの中に、空気まで感じられるような丁寧な描写、嫌味のないキャラクターを配し、淡いメッセージ性をその中に込めるというもののように思えます。その意味では、この作品は実にあいはらさんらしい作りです。意外な展開に驚いたりはしませんが、夏の空気感、味のあるキャラクターのやり取りを楽しめます。この作者さんは、恐らく夏が凄く好きなんでしょうね。それがよく伝わって来ます。

まずは、安心感のある文章。あいはらさんの文章は、文章力の高さはもちろんですが、変に凝りすぎた言い回しを使ったり、過剰に説明的になったりしないので、非常に読みやすいです。それでいて、大事な場面で必殺技のように放つ素敵な言い回しは、非常に印象に残ります。凝った言い回しは、ここぞという時に使ってこそ印象に残るものですからね。

またキャラクターメイキングも、さすがに丁寧です。主人公やヒロインの佐倉めぐみはもちろんの事、めぐみの弟である健児の描き方が非常に絶妙です。この手の子供キャラは、下手なキャラクターメイキングをしてしまうと、読み手に不快感を与えてしまいかねないのですが(そしてそういうキャラメイクになってしまっている作品も多い)、子供らしい生意気ぶりを前面に押し立てながらも、全く嫌味がないキャラになって、作品に華を添えている辺りは、さすがです。

この作品は、冒頭で書いたように、連作短編ノベル企画から生まれたものなので、立ち絵やイベント絵がついています。この絵を見て「おやっ」と思われた方もいらっしゃるでしょう。絵師さんは「桜日和」の絵を描かれた方です。「桜日和」の絵に「Beyond the summer」の文章が載るという、ノベルゲームファンには夢の組み合わせ。少年マンガ風の線のはっきりした、メリハリの効いた画風で、これがまた夏の日射しを感じさせる文章によくマッチしていますね。

この作品は、展開自体は王道で、特に捻ったところがある訳ではありません。そのためか、ラスト近くにはもう1つ2つ捻りが欲しかった気がしなくもありません。しかし、正統派の展開の中に、メッセージ性を込めて、飾り立て過ぎず、それでいて心に残る言い回しをちりばめるという作風自体が、作品を彩っていると思います。展開より描写、伏線よりここぞという時の言い回しで作品に味をつけていく、そんな作品です。

音楽等は素材ですが、背景写真の選択が非常に良く、これも夏の雰囲気を読み手に味わわせる上で、一役買っています。また、あいはらさんが聴いた時に非常に気に入られたというエンディング曲も、作品に絶妙の良い余韻を残してくれていると思います。

プレイ時間は45分程度、システムはNScrpiter。誰にでも安心してお奨めできる作品です。それにしても、この作品と私の「弥生桜の空に笑え!」が、本当なら同じ作品の中にパッケージングされるはずだったというのは、想像してみると凄いものがあります。こんな作品が13本並んでいたら、さぞや壮観だったでしょうねえ。

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