第160回/心に染みる、雨が降る - あまやどり(優凪) - 恋愛
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第160回/心に染みる、雨が降る - あまやどり(優凪)

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あまやどり

あまやどり準推薦
■制作者/優凪(ダウンロード
■容量/84.0MB

季節は秋。大学生の夕樹大地は、一人暮らしで代わり映えはしないが、それなりに充実した毎日を過ごしていた。そんなある日、商店街で着物を着た不思議な少女を見付ける。雨の日、大地は少女と再会し……。秋雨の雨音が響く季節、少女との穏やかな日常が始まる。丁寧に組まれた描写が好印象の、恋愛ノベルゲーム。

ここが○

  • 主人公が良い奴で、読んでいてストレスを感じない。
  • 主人公とヒロインの、微妙な距離感が上手く描かれている。
  • 印象に残る、ラスト近くの描写。

ここが×

  • 前半はかなり単調でストレスを感じる。
  • 登場人物が少ないのは、少し辛いものを感じる。
  • ラスト近くの展開は、少々唐突さを感じる。

■心に染みる、雨が降る

季節感のある作品は、結構好きです。秋雨の冷たさに飛び込む軒先。そんな雨宿りの雰囲気を味わえる作品をご紹介。この作品のシステムは、耳慣れない「Cat System 2」。プレイ環境は、主流のシステムであるNScripterや吉里吉里、Live Makerに劣りません。

物語は、分類すれば「時限恋愛ノベル」になるでしょう。「いつか別れが来ると分かっている中で描かれる恋愛物語」です。一番近い作品では「1980円の君」がありますね。そして、この作品は「1980円の君」とは、似ているところもありますが、色んな意味で対照的です。

まず、あちらでは若干唐突気味に感じられた、主人公とヒロインの心の接近の様子が、とてもよく描かれています。今作のヒロインはしゃべれないので、感情表現すらままならないのですが、それを逆手に取った描写には、ほほうと思わされました。それほど劇的な事件が起こる訳ではないですし、登場人物はほとんど主人公の大地とヒロインの澪のみなのですが、この2人のかけあい(しかもヒロインはしゃべれない)だけで、上手く作ったものだと感心させられます。2人の距離がだんだん縮まって行く様子が、とても上手に描かれているのです。

反面、「1980円の君」では、小気味良い演出とテンポの良い場面切り替えで、全く前半が冗長に感じられなかったのですが、こちらは正直言いまして、前半(というかラスト近くまで)が、かなり単調気味です。登場人物が2人しかいない上、ヒロインはしゃべれないのですから、仕方ないのかも知れませんが、何か展開を上手く引っ張る要素が欲しかったところです。ひたすら日常描写が続く上、それほど明確な起伏もないので、人によっては読んでいて退屈してしまうかも知れません。

さてこの作品の良いところは、主人公の「良い奴ぶり」です。一人称で描くノベルゲームって、主人公のキャラクターメイキングが、読み手のストレスに直結します。この作品の場合、とにかく主人公が嫌味のない良い奴で、読む上で苦痛になる事はありませんでした。

そして、「時限恋愛ノベル」のある意味一番肝となる、ラスト。ここは上手く書かれていると思います。ただ、個人的には澪が大地に感謝の意を表して「あれ」を渡す場面。あれは一番最後に引っ張って欲しかった……。ひとりぼっちの部屋に帰った大地が、残された「あれ」に気付いて涙するとか。それだけで、余韻がぐんと違ったはずです。

また、ラストに繋がる伏線の描かれ方が弱い上に、かなり唐突にラストが来るので、読んでて「あれ? あれ?」となってしまいます。伏線とまでは言わないまでも、ラストに繋がる描写が、前半から中盤にかけて、もう少し欲しかったですね。それがほとんど(全くではないが)ないので、中盤までの引きがかなり弱いんですよ。登場人物も2人ですし。それでも、主人公とヒロインの関係の描き方で読ませてしまっているのは、さすがとも言えますが。

音楽は素材で、聴き覚えのある曲も結構出て来ます。ですが、選びどころが良いため、良い効果を上げています。「聴き覚えがある曲が出ると萎える」という人もいらっしゃるでしょうが、そんな事を言ってたらクラシック曲をBGMになんて使えない訳で。要は使いどころです。この作品の音楽の使いどころは、かなり良好です。

選択肢はありますが、一本道と思われます。プレイ時間は2時間くらい。主人公とヒロインの関係を、ゆるゆると楽しむもよし、一気に読むもよし。丁寧に作られた佳作です。雨の降る午後にでも、じっくりと読んでみてください。
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