第164回/記憶の断片を埋めるパズル - Fragments(CHRONO GATE) - SF
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第164回/記憶の断片を埋めるパズル - Fragments(CHRONO GATE)

SF
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Fragments

Fragments準推薦
■制作者/CHRONO GATE(ダウンロード
■容量/356MB

高校2年生の片平雄治は、心臓病を患っていた。その日も路傍で突然発作を起こして倒れたのだが、何故か目覚めたところは学校の保健室。事情を飲み込めない雄治の前に友人の少女が現れて……。失った記憶と謎の少女。一風変わった仕掛けで繰り広げる、マルチシナリオ長編恋愛ノベル。

ここが○

  • 独特の「仕掛け」がシナリオをもり立てている。
  • バランス良く、読み手を刺激するシナリオ展開。
  • バラエティに富んだシナリオ分岐。

ここが×

  • 音楽自体は良いのだが、無音のシーンが多い気がする。
  • ヒロインによってボリュームのばらつきが大きい。
  • あらゆる意味でプレイヤーに不親切。

■記憶の断片を埋めるパズル

これまた巨大な容量の作品です。元々はCDに収録し、即売会で販売していた作品のようですから、それも当然かも知れません。今回は、少し不思議な雰囲気、そしてボリュームたっぷりのマルチシナリオ恋愛ノベルをご紹介。この作品をご紹介くださったのは、あのあいはらまひろさんです。

この作品は、出だしだけ見たら割合スタンダードな恋愛ノベルです。ただ、主人公が心臓に持病を持っており、発作が出て倒れると、次に起きるまでの記憶がないという、少し変わった設定が特徴。この設定はもちろんシナリオにも関わっており、特に物語は中盤以降で、一風変わった展開を見せます。その展開については、この作品の核とも言える部分ですから、ここでは伏せておきましょう。単純な「カレンダー消化型ノベル」だと思っていると、見事に裏をかかれます。しかもこれがシナリオが持つ謎に絡んでいるというのは、上手い仕掛けをしていると思います。

攻略対象は4人。ちょっと気が荒いクラスメイト、子供っぽい下級生の幼なじみ、才色兼備の美術部の先輩、そして謎の少女という取り合わせ。描写はそれほど過剰ではなく、ほどほどにコミカルでほどほどに日常的。まずは安心して読める範囲です。

さて、この作品の特徴はその独特の「仕掛け」です。その仕掛け自体は面白いのですが、一部この仕掛け頼みになってしまって、メインの物語自体が少しおざなりになっている点を感じました。極論を言えば「この仕掛けなしでも物語組めるのでは?」と少し感じたのです。もちろん、真埜シナリオはこの仕掛け自体にかかわるお話ですし、他のヒロインのシナリオでも、要所ではこの仕掛けを上手く使ってるんですが、もっと根本的なところでこの仕掛けを使って欲しかったかな、と(私の言いたいニュアンス、伝わりにくいかも知れませんが)。

後は、ヒロインによってちょっとシナリオのボリュームにばらつきがあるかな、と。紗依シナリオと奈留美シナリオでは、体感3倍くらい差があるように感じられました。実際はそんなには差はないのかも知れませんけど。それと、ヒロイン分岐は1日目と2日目の選択肢で行われますが、ちょっとでも外すとあっという間にバッドエンド直行。これにはちょっと参りました。

これは一番気になった点ですが、この作品は、色んな意味でプレイヤーに不親切です。冒頭のサークルロゴは飛ばせず、更にエンドロールも飛ばせません。しかもこの飛ばせないエンドロールを最後まで見ないと、そのエンドを見た事にならないのです。誰か、「これはプレイヤーに優しくないんじゃないか」と言わなかったんだろうかと思ってしまいます。また、エフェクトや画面切り替えが妙に多いのです。例えば、主人公の部屋から外に出る時などは、いちいち全てのシーンを背景表示します。そのせいで、実際のテキスト量以上に長く感じてしまうのです。これは明らかに損をしています。

話を戻しましょう。今作はいわゆる「カレンダー消化型」ですが、長くても作中の日数で5日くらいですし、終盤まで何も起こらないという事はなく、割とバランス良く色んな事が起こりますので、その意味ではテンポ良く読めます。個人的には、プレイヤーの思い込みの裏を行った奈留美シナリオ、そして綺麗な終わり方の真埜シナリオがよく出来ていると思います(ただ「空白の一日」をちゃんと描写してくれなかったのは、何故なんだ)。ボリュームには差がありますが、どのヒロインのシナリオも満遍なく整った出来映えだと思います。

音楽は自作みたいです。曲は印象に残るメロディのものが多く、曲自体はいいんですが、日常シーンで無音の場面が結構多いのが気になりました。それと、エンディング(グッドエンドの方)の曲の出だしが「男はつらいよ」に似ていると思ったのは、私だけでしょうか(笑)。

システムはNScripter、エンディングは9つ(バッド含まず)。プレイ時間はコンプリートまでで8時間くらいではないでしょうか。かなりのボリュームです。ちょっと読み手に優しくないところが気になりますが、少しSF風味の「謎と引き」のバランスで一気に読ませてくれる作品です。時間がある休日に、どうぞ。
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