第168回/「目標バッドエンド」の変わり種マルチシナリオ - もみじひとひら(えれくとら) - ホラー
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第168回/「目標バッドエンド」の変わり種マルチシナリオ - もみじひとひら(えれくとら)

ホラー
  • comment0
  • trackback-

もみじひとひら

もみじひとひら■制作者/えれくとら(ダウンロード
■容量/31.8MB

学校の裏山にある、楓の古木。この楓には、以前から伝説めいた言い伝えがあった。曰く「舞い落ちてくる、真っ赤に染まった楓の葉を掴めば、願いが3つ叶う」。その噂を知ってか知らずか、冬村雄は楓の木の下で今日もギターを弾いていた。変わった作りと波瀾万丈な展開が興味をひく、マルチシナリオノベル。

ここが○

  • バッドエンドを見る事で少しずつ変わっていく、面白い作りのマルチシナリオ。
  • 展開によって様々に変わる、バラエティ豊かな物語。
  • エンディングの一言コメントは嬉しい配慮。

ここが×

  • キャラクター造型にもう一工夫欲しい。
  • システムの斬新さに、シナリオが追いついていない気が。
  • 何だか納得行かないオチ。

■「目標バッドエンド」の変わり種マルチシナリオ

以前にも書いた気がしますが、私はホラーは苦手なので、Vectorの「ホラーアドベンチャー」の項目は、滅多にチェックしません。この作品は「ホラー」でダウンロードできますが、プレイしてみると可愛い感じの立ち絵も手伝ってか、実はホラー的な雰囲気はあまりありません。むしろ、「ちょっと不思議な学園もの」という感じです。展開的には十分ホラー的なものもみせてくれますが。

この作品は、ギター好きの男子高校生と、そのクラスメートの少女が主な登場人物。出だしはよくあるタイプですが、マルチシナリオのシステムが非常に変わっています。というのも、「バッドエンドを見る事でシナリオが新たな段階に変わり、それを繰り返す事で真相が明らかになる」のです。逆に、普通のグッドエンドを見ると、真相は全く分からないまま終わってしまいます。もっとも、グッドエンドでもそれほど消化不良感はなく読めますので、このシステムは面白いなあと思わされました。

そのマルチシナリオですが、各シナリオの材料自体は、さほど突飛ではありません。それでも、分岐はバラエティに富んでおり、楽しませてくれます。ただ、分岐自体は波乱に富んでいますが、各分岐が有機的に絡んでいるとか、そういったタイプのマルチシナリオではないので、「徐々にもつれていた糸がほぐれる」という快感は、ちょっと薄いように感じました。分岐で徐々に謎が明らかになるというよりは、あくまで色んな展開を楽しむタイプのマルチシナリオです。

さて、今作の主人公とヒロインは、言ってみればよくあるタイプのキャラクター造型です。それ自体は問題ないのですが、この作品の雰囲気を高めようと思ったら、描写をもう少し絞るか、キャラクター造型を抑えめにしても良かったように感じます。

というのも、立ち絵がどちらかと言えばほのぼのという感じで、文体もシリアスというよりはコミカル。キャラクター造型もそんな感じなので、全体から醸し出される雰囲気がシナリオとマッチしていないように感じました。キャラクター造型か描写に、もう一工夫があればと思います。冒頭から「怖さ」を前面に押し立てている作りではないので、なおの事。一部のキャラ(友人の春海の妹とか)の使われ方が、ちょっとなおざりなのも気になりました。

そして、オチには何だか納得が行かないというか……。確かに意外なオチではありますが、伏線が巧妙に張られているとか、他の分岐で謎が提示されて、それが段々明らかになるとかいう作りではないので、意外というよりは唐突に感じます。あのラストを見ると、他のバラエティ豊かな分岐が、つまりは全部虚構だったという事になってしまい、「今までのは何だったんだ」という感想にもなりかねませんし。また、それぞれのラストに何らかの論理的な繋がりがある訳ではないので、だんだん真実が見えるようになるという面白さも薄いです。真実は確かに意外ですが、「脈絡なく意外」なのでラストに辿り着いた時の満足感がイマイチなんですよね。

なので、オチ自体の展開も相まって、読後感は良いとは言えません。バッドエンドを見る事でシナリオが一段階進んでいくというアイディア自体はとても良いので、シナリオ自体も、「展開主導型」ではなく「ラスト主導型」の、伏線が後半で収束するタイプの物語だった方が、分岐システムが生きたのではないかという気がしますね。

それと、分岐ものなんですが既読スキップが実装されていません。バッドエンドを見る事でシナリオが変わっていくので、既読スキップの必要性は他の分岐ものと比べると強くは感じませんでしたが、やはりあった方が読み手には嬉しいかな、と。音楽は自作のようで、特にオープニングとエンディング、作中で登場する架空のミュージシャンの曲は、雰囲気出てていいと思います。また、バッドではないエンディングを見た後は、キャラクターによる一言コメントが読めるのは、嬉しい配慮です。

システムはNScripter。プレイ時間はコンプリートして3時間弱というところだと思います。パズル的な面白さは薄いですが、バラエティ豊かなシナリオを気軽に楽しむ分には、十分面白さが味わえる作品です。第一印象よりも肩の力を抜いて楽しめます。お気軽にどうぞ。
関連記事

Comments 0

Leave a reply