第188回/日本は妖怪吹きだまり - あやかしよりまし(冒険野郎のトムソーヤ) - 伝奇
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第188回/日本は妖怪吹きだまり - あやかしよりまし(冒険野郎のトムソーヤ)

伝奇
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あやかしよりまし

あやかしよりまし準推薦
■制作者/冒険野郎のトムソーヤ(ダウンロード
■容量/47.4MB

あやかし、いわゆる「妖怪」を見る力を持っている高校生、稲生修一郎。姉と2人で暮らしている彼の家には、様々なあやかしが住みついていたが、ある日彼の家に1人の少女が倒れていた。少女は「座敷童」と名乗る。やがて彼女に迫る黒い影。テンポ良く話が進む、伝奇アクションノベル。

ここが○

  • テンポがよく流れが澱まない。
  • 話に難解さがなく、スムーズに読める。
  • 盛り上がるラスト。

ここが×

  • シナリオに少し事件性が弱い気がする。
  • テキストの表示速度が変わらない。
  • 主人公が妙にキレやすい。

■日本は妖怪吹きだまり

私は、何度も書いているように「伝奇」「和風ファンタジー」は、とにかく苦手です。伝奇の有名作は異常にプレイを渋る傾向にあります(汗)。なので、この作品も名前は知っていましたが、なかなかプレイする機会がありませんでした。ようやくプレイしましたのでご紹介。「あやかしよりまし」とは随分変わったタイトルですが、プレイしてやっとその意味が分かりました。

この作品は、典型的な伝奇アクションです。と言っても鬼太郎似(笑)の主人公には、あやかしを見る&感じる以外には特に「異能」がある訳ではないので、バトルがメインという訳ではありません。バトルもありますけどね。そして、シナリオ展開のテンポは実に良好です。意外な展開で読ませるというよりも、キャラクターの活躍で読ませるドラマです。選択肢はなく、ノベルゲームとしてはシンプルで標準的な作り。ただ、システムが吉里吉里なのに、テキスト表時速度が変えられないのが謎です。

物語はいわゆる「妖怪もの」で、登場キャラの半分が妖怪です。ですが、決しておどろおどろしいとか重々しいノリではなく、むしろ全体のノリは非常に軽快。普通の学園ものの感覚で読めます。今まで登場した現代伝奇ノベルの良いとこ取りをしたような作品で、出て来る妖怪にも親しみを持てます。ライトな「ゲゲゲの鬼太郎」風(白黒ではなく、新しい方の)ですが、そういうのに親しみがない人でも読みやすいでしょう。伝奇って難解で取っ付き辛いという印象がありますが、良い意味で伝奇らしくないと言いますか、文章がとても素直で読みやすく、序盤から非常に好印象です。

シナリオは、主人公が序盤で知り合った(彼の家に倒れていた)座敷童の少女「紅葉」を軸にして進みます。ただ、紅葉との日常描写が思いのほか少なく、読み手が思い入れを持つよりもかなり早い段階で紅葉がいなくなってしまうので、中盤以降の主人公の言動が、少し自然さを欠いた気がします。この主人公がまた、いざという時にキレやすいですし(苦笑)。逆に、事件が起こるまで早いので、そういう意味でのしんどさを全く感じないのは、大きなメリットでもありますけど。

また、シナリオ全体は展開テンポが良いのですが、いくつもの事件が複雑に絡んでシナリオを構成している訳ではなく、シナリオの中核をなす事件性はシンプルなので、シナリオそれ自体が引っ張る力としては少し弱いと言わざるを得ません。それでもぐいぐい読ませるのは、ひとえにキャラクター、そして「省き過ぎず、書き過ぎない」適切な筆致によるものでしょう。ラストも大いに盛り上がります。欲を言えば、あやかし達のほとんどがしゃべらないのですが、あやかし達とのやり取りもあれば面白いのでは、と思いました。

主人公の友人達ですが、八橋美生が通称「生八橋」というのは、素晴らしいセンスです。しかし、これは呼ばれた本人は嫌がるだろうなあ(笑)。また、ラストに見せてくれる御堂さんや八咫烏も、良いキャラクター。八咫烏って、サッカー日本代表のユニフォームに描いてある3本足の烏ですよね(だから手が3本あるのだろうか?)。主人公より、どちらかと言うと八咫烏に共感してしまった私(笑)。

読み終わるまでは3時間というところだと思います。1枚絵は少ないですが、スクリーンショットにも使っている「自転車相合い傘」は非常に印象に残りました。シナリオの作りは読み切り少年漫画風で、長さから言えばもう一つどんでん返しというか、物語の深みが欲しかったようにも感じますが、難しい事を考えずにどんどん読める作品。推薦にしようかとも思いましたが、次回作もあるようなので、ここは「次回にとっておく」意味での「準推薦」。軽い気持ちで読んで大いに楽しめると思います。
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