第213回/王女の株は買い気配 - トレーディングプリンセス(藍恋) - シリアス・感動系
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第213回/王女の株は買い気配 - トレーディングプリンセス(藍恋)

シリアス・感動系
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トレーディングプリンセス

トレーディングプリンセス■制作者/藍恋(ダウンロード
■容量/52.1MB

コレットはエルバレス公国の第2公女。しかしエルバレス公国は破産してしまい、コレットは寮生活を送っていた。そんなある日、十字星教のシスターと出会い、コレットは株取引に挑戦。そんなコレットをよそに、エルバレス公国は思わぬ陰謀に巻き込まれていた。斬新な設定と展開のノベルゲーム。

ここが○

  • リアリティが生む説得力。
  • 斬新で意外な設定と展開。
  • 文章と作風のバランスがとても良い。

ここが×

  • あんまり物語にトレーディングが絡んでないような。
  • シスターがああいう事するというのは、イマイチ釈然としない。
  • なんだかすっきりしないラスト。

■王女の株は買い気配

ちょっと変わった設定の作品をご紹介です。つい最近プレイした「娘子隊皓旗」の作者さんによる作品ですが、公開されたのはこちらの方が早いです。トレーディングプリンセスというタイトルの通り、一国の王女が株取引に挑むという、その設定からして変わっています。

主人公のコレットは、財政が破綻してしまったエルバレス公国の第2公女ですが、あんまりプリンセスらしくなく、思い立ったら一直線というタイプのキャラクターです。そんなコレットが、ある日学校に教えに来た十字星教のシスター・リンに、株取引の話をきいて、「自分も国のために何かできるかも」と、リンにトレーディングを教えて欲しいと頼み込む、と、こういう出だし。非常に興味をそそられます。

メインキャラクターはコレットと寮のルームメイトであるミラルダ、シスター・リン、それに侍女のラマラというところ。全員女性なんですが、キャラクター付けの明確さもあって、女性ばかりだからと言ってバランスの悪さは感じませんし、日常のやり取りも軽妙で、楽しく読めます。立ち絵もなかなか綺麗で、独特のコスチュームが目をひきます。

株取引がメインテーマですから、専門用語も出て来ますが、メニュー画面で用語解説を見る事ができますし、専門用語が分からなくても、物語を理解する上ではさほど問題にはならないと思います。この「リアリティを持たせつつ、過剰にマニアックにならない」作りで、「何となくだけど理解でき、物語世界の雰囲気と説得力を高める」事に成功しています(私は株取引の知識などほとんどありませんが)。この辺りは「娘子隊皓旗」と同様ですね。これはこの作者さんの持ち味でしょう。

ただ、メインのはずのトレーディングが、後半は消えてしまい、別の方向のお話になってしまっている感がなくもありません。もちろん、トレーディングはコレットが自分を見つめ直すきっかけにはなっているのですが、正直トレーディングがもしなくても、お話として成立しているような気がしなくもない(汗)。最後まで株取引の話のままの方が、物語としては面白かったんじゃないだろうかと感じました。

とは言え、後半の急展開は読み手をひきつけるには十分で、引っ張りすぎず急すぎず、適度にプレイヤーを楽しませてくれます。しかし、一応キリスト者である私からすると、シスター・リンにはちょっと違和感が……(キャラクターの魅力とは別問題として)。シスターというからにはカトリックがモデルなんでしょうけど、「それはどうなんだろう」と感じました。「十字星教」という架空の宗教にしてますけど、違和感はぬぐえません。もっと架空っぽくした方が(シスターとかいう名称も違うものにした方が)良かったように感じました。

「娘子隊皓旗」同様、文章力はとても高く、それでいて過剰に説明的すぎず、テンポも良いので快適に読めます。リアリティをアクセントに使う作風と、過剰に説明的すぎない文体が、非常に相性が良いなあと感じますね。これがこの作品の最大の美点でしょう。

私の想像ですが、おそらくこの物語はトレーディングを題材として取り上げつつ、メインで描きたかったのは後半の物語なのではないかと思います。そう思うと、後半の展開はありだと思います。前半との繋がりがもっとスムーズで、トレーディングが後半でも何かしら重要な要素を持っていれば、もう一段階高いレベルで楽しめたのではないかと思います。

プレイ時間は2時間くらいでしょう。システムは吉里吉里で、選択肢はありません。作者さんのサイトによると、次回作も企画されており、解説を読むとやはり同様の「リアリティをアクセントに使う」系統の物語のようです。今後注目してみたい作者さんの1人です。
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