第216回/だから私は大丈夫 - 大丈夫(甲二) - 日常
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第216回/だから私は大丈夫 - 大丈夫(甲二)

日常
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大丈夫

大丈夫準推薦
■制作者/甲二(ダウンロード
■容量/ 37.0MB

とある街角で、キイチはミナトと名乗る美しい少女と出会う。ミナトをぶっきらぼうにあしらうキイチだったが、仕事ばかりの単調な毎日を送る、しがない工場作業員のキイチの毎日に、いつの間にか入り込んでくるミナト。「街角ノベル」は相変わらず健在。短編ノベル企画9月の作品。

ここが○

  • 街角の空気感が感じられる描写。
  • ヒロインのミナトが可愛い。
  • 不思議と噛み合っているキイチとミナト。

ここが×

  • 後半の事実については、前半からもうちょっとフォローが欲しい。
  • 演出がちょっと素っ気ない。
  • もうちょっと季節感を全面に出しても良かったのでは。

■だから私は大丈夫

何度か話題に出しました、ノベルゲーム制作者が集っての短編ノベル企画。その名を「季節のおくりもの」と言いました。その9月分の作品がこれです(3月が「弥生桜の空に笑え!」、8月が「夏色のコントラスト」)。シナリオは「ツキノテラス」の甲二さんで、イラストは「Bye」の秋月つかささん。凄い豪華メンバーです。

以前「一日千秋」のレビューで、さくらミントさんの作品を「街角ノベル」と表現しましたが、この作品でもそれは健在。空気感漂う街角の雰囲気、ちょっと変わっているのに不思議と噛み合っているキャラクターと言った特徴は、今回も同じです。この作品で言えば、主人公のキイチが変わっています。工場勤務の作業員で、いわゆるブルーワーカー。大胸筋が発達していそうです(それは「ブルワーカー」)。

彼は、ヒロインであるミナトにとにかく素っ気なく当ります。普通、これだけヒロインにつっけんどんに接している主人公を見たら、読み手はいらいらしてしまいがちなんですが、この作品ではそういう事はありませんでした。主人公のキイチに対し、健気なミナトが上手くマッチしているからでしょうね。ミナトも、多分単体だとちょっと押しが弱いキャラクターだと思うんですが、主人公とヒロインとの取り合わせの良さには、毎回感心させられます。

主人公はそういうキャラクターで、主人公の言動や独白から、彼の生活感が見えてくるのですが、ここら辺りの生活感の出し方も上手いと思います。対して、ヒロインのミナトはあまりにも生活感のないキャラクターで、その対比がまた面白いのですが、もしかしたらこの雰囲気は狙って出しているのかな、とも思わされました。

物語として見ますと、特に後半明らかになる事実等は、特に作りとして新しいという訳ではありません。似たような展開をする作品も、多いと思います。そして今作の場合、ラストが唐突と言えば唐突な展開ですが、それをも街角の雰囲気で納得させてしまうのはさすがです。ただ、伏線が緻密に張られている訳ではないので(むしろ、伏線を張る事を放棄しているのではないかとすら思える)、もう少し前半から何らかのフォローが欲しかったように思います。「いやいや、いきなりそういう展開?」という風に転んで行ってしまうので。

とは言え、元の短編企画のレギュレーションでは、シナリオ容量の制限もありましたので(だから、「弥生桜」も中盤の展開がかなりぶっ飛ばし気味)、そこはしょうがないところかも知れませんし、過剰に語りすぎて作品の雰囲気を壊すよりは、これはこれでありかな、という気もしますが。それでも、ラストにミナトがキイチにメッセージの言づてを頼む部分は、非常に綺麗で印象に残りました。

あとは、演出がちょっと素っ気ない気がします。個人的には、過剰な演出がない方が、この作者さんの文体とか描写には合っている気もしますが、結構余韻をひく終わり方をするので、エンディングくらいは一工夫あれば、余韻が更に強まったんじゃないかと。せめて、開始直後のあの場面に繋がる何かが1つあれば、と思いました。

もう1つは、季節感をもうちょっと全面に押し立ててみても面白かったのではないかと思います。とは言え、9月というのは季節感を全面に出すのが少々難しい時期ではありますが、そこを何とか、と思ってしまうのは、贅沢というものでしょうか。

ラストは少々突飛な終わり方をするんですが、全体の雰囲気で、不思議とその事実を受け入れさせるような力を持った作品です。システムはNScripter(ただし、デフォルトのままなのでテキスト表示速度が変わらない……)、プレイ時間は30分。相変わらず上質な雰囲気で紡ぎだされる優しい物語は、さすがです。
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