第219回/今は終わりと始まりの秋 - 夏仕舞冬支度(ヲサカナソフト) - 日常
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第219回/今は終わりと始まりの秋 - 夏仕舞冬支度(ヲサカナソフト)

日常
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夏仕舞冬支度

夏仕舞冬支度準推薦
■制作者/ヲサカナソフト(ダウンロード
■容量/65.5MB

ペコペコドラッグのアルバイトをしている白洲権兵衛は、ある日仕事のミスから、資材部に回される事になった。資材部の倉庫には、彼と同い年の部長代理、黒川さやかが。彼女は「仕事の邪魔をしないで」とだけ言って、自分一人で全業務をこなしていた。短歌の演出が面白い中編ノベル。

ここが○

  • Flash動画が相変わらず素晴らしい。
  • お洒落でオリジナリティの高いBGM。
  • 演出や会話の軽妙さで、作品テーマが上手く消化されている。

ここが×

  • とは言え、全体的に少々説教めいたところがある。
  • どちらかと言えば起伏に乏しい。
  • そんな訳で、人によって合う合わないがあると思われる。

■今は終わりと始まりの秋

何度か話題に出した、短編ノベル連作企画「季節のおくりもの」。この作品は10月でした。とは言え、恐らく当初の形からすると随分加筆されたはずです(企画にはシナリオの容量制限がありましたが、間違いなくその制限を大きく越えていると思われますので)。readne.txtを読むと、この企画の紆余曲折ぶりが分かると思います。

更に、エンディングでは企画に参加した全ライター&絵師の名前も分かります。「あんな人まで!」と驚かれるかも知れません。当時、3月のシナリオを書いていた私も、驚きました(笑)。なお、オープニングのFlashを見ていただければお分かりのように、私はこの作品のベータ版の時にテストプレイさせていただいています。

作者であるヲサカナソフトさんは、この作品で3作目ですが、この作品の性格は、「ブラックオクトウバー」よりも、「Homeless, the Vagabond」に近いですね。それもそのはずで、当初はHTV第2章用に作られたシナリオのようです。ブラックオクトウバーは、エンターテインメント性を前面に押し出した作りでしたが、やはりこの作品やHTVのように、訴えたいテーマ性を主体にする方が、この作者さんの作風なのかなと思います。冒頭から、会話のやり取りを読んだだけで、すぐに「ああ、ヲサカナソフトだ」と実感できます。

そしてこの作品は、かなりテーマ性の強い作品です。まず訴えたいテーマがあって、そのために物語がある、という感じです。この手の作品は、えてして押し付けがましくなりがちなんですが、この作品はそうはなっていません。その理由を考えてみますに、会話と演出の軽妙さが上手くエンターテインメント性を作り出し、物語のテーマ性を上手く中和していた、というところじゃないかと思います。短歌が趣味という主人公は初めて見ましたが、テーマと演出に非常に巧みに利用していました。HTVでいうところの音楽が、今度は短歌になったという感じです。

実際、折々にはさまれる短歌の演出、クールなBGM、そして相変わらず素晴らしいセンスのFlash(シナリオよりもFlashに時間がかかったのでは、なんて思ってしまう(笑))などが、作品の軽妙な雰囲気を作り、主人公とヒロインであるさやかとの楽しくも鋭い会話を上手に彩っているのです。それは、テーマを弱めているのではなく、テーマをはっきり出しつつ、読み手にそれをあまり強く意識させないという作りです。この辺りの作りはHTVと共通する点ですが、さすがに上手いですね。

そう言った訳で、物語としては奇抜な事件は何も起こらないのですが、これらの相乗効果で1本の物語として高いレベルを作り出していると思いました。

とは言え、テーマ自体は少々説教じみたところもあるので、そこらは人によって合う合わないがあるかもしれません。物語それ自体はエンターテインメント性が強いとは言えませんから。しかし、独特の演出や小気味よくテンポのいい会話など、メインではない小道具の部分がエンターテインメント性を打ち出していますから、軽く読んでも楽しめる内容です。

個人的には、ヒロインであるさやかが主人公にひかれる様子が、もうちょっと描写されていれば良かったかな、とも思いましたが、主人公のキャラクターを考えるとあれでいいのかも知れません。ラストもそれほど劇的ではないのですが、前向きな未来に歩いて行く主人公とヒロインの様子を見ていると、読み手もきっと元気になれるはずです。

システムは吉里吉里、選択肢はなし。プレイ時間は1時間半くらいじゃないかと思います。それにしても、この秋はレベルの高い作品が次々出て来ており、プレイヤーとしては嬉しい限りです。完全に冬になってしまう前に、是非プレイしてみてください。
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