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第220回/そして明日は雨上がり - 雨の日と雨の日の次の日(人工くらげ)

不思議系
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雨の日と雨の日の次の日

雨の日と雨の日の次の日■制作者/人工くらげ(ダウンロード
■容量/81.9MB

大学の農学部に通う主人公の回りで、おかしな事が起き始めた。夢の中で「砂漠のバラって知ってるか?」ときいてきた友人。不思議な雰囲気の大学院生の女性。小学生にしか見えない教授。そして妙な言動を見せ始める恋人。摩訶不思議な雰囲気と高い文章力で送る、不思議な学園ファンタジー。

ここが○

  • 心情描写を紡ぎだすような文章が素晴らしい。
  • BGMの選曲がとても良い。
  • 読み進めると少しずつ糸がほどけていく様子。

ここが×

  • 結局最後まで糸がほどけていないような気が。
  • 一部専門用語が難解に感じる。
  • 常に読み手の3歩前を先行し、最後まで先行しっぱなしの感。

■そして明日は雨上がり

不思議な雰囲気という点では、これ以上不思議な雰囲気の作品はないかも知れません。類似作が他に思いつきませんし。タイトルも非常に変わっています。今回ご紹介は「雨の日と雨の日の次の日」。一見普通の学園ものみたいですが、開始してすぐに読み手を「おや???」と唸らせます。

舞台となるのは大学。どうやら京都の街みたいです。主人公は農学部に在学中の大学生。で、作中に唐突に農学とか文学の用語が出て来たりして、面食らいます。分からない人には何が何だか分からない気もしますので、何らかのフォローが欲しかった気がしました。

しかし、今作で一番感心するのは、その文章力です。主人公の一人称ですが、決して過剰に心情を描写する事がありません。それでいて、文章の端々から主人公の心情が浮かび上がるかのような描写は、大したものだと思います。決してスピード感があるとか、テンポが良いといった類いの文章ではありませんが、読んでいて心地の良い文章でした。

さて、物語は恋人の奈緒子と友人の竹田、それに先輩の木魚さん(もちろんニックネーム)、どう見ても小学生な「教授」を交えて進行していきます。随所に謎めいたシーンを挿入して、読み手の好奇心をかきたてる作りは上手いです。しかし、どうも気になるのは「登場人物と読み手の理解度が、シンクロしてない」事です。

と言いますのも、話が進行するにつれて、もちろん謎は徐々にはほどけていくんですが、登場人物が理解している事実が(あるいは作者さんが意図して展開している事実が)、常に読み手の理解の3歩くらい先を行ってるんですよ。最初から3歩先を行って、最後まで3歩先を行きっぱなし(汗)。なので、読んでいる最中も読了してからも、どうにももやもや感と言いますか、もどかしさを感じてしまいました。

この手の「徐々に謎が明らかになる」作品の場合、読み手に上手い事「追いつかせて」欲しいように感じました。そうする事で読み手は物語に対する安心感と登場人物への共感を得られますし、場合によっては「追いついた」、または「追い越した」と思わせておいて裏をかく(実は追いついてなかった)という展開で、読み手をあっと驚かせる事もできます。

ところが今作の場合、最後まで追いつかないままなので(私が頭悪いだけかも知れませんけど)、そういう展開の妙が味わえません。物語的には決して一本調子ではないのですが、そういう「読者を上手く引っ張る」という意味では、一本調子なのです。全部のエンディングを見ても、細かいところは結局明らかになっていない気がしますし。

とは言え、私としては途中で読み手がきっちり登場人物の理解度とシンクロし、最後に全部明らかになるのが好きではありますが、読み手が色々想像を巡らせて読むというやり方もありでしょうし、そう考えればこういう作り方も一つの方法なのでしょう。エンターテインメント性が高いとは言い切れませんが、文章としては非常に高いレベルで、読み応えもありますし、シナリオ自体はかなり「おお!?」と思わせてくれます。

音楽は素材ですが、選曲が良いですね。アコースティック楽器主体の、曲想の近い曲を選んでおり、大いに作品の雰囲気を盛り上げています(「こんな物語」で使われた曲が多かったので、あの作品の場面が浮かんでしまいましたが)。立ち絵は線のはっきりした見やすい絵柄。上手さを感じるタイプとは言えませんが、それぞれの立ち絵が各キャラの性格をよく表していていいと思います。

システムはNScripter。プレイ時間は3時間くらいです。選択肢はありますが、数はごく少ないですし、分岐に直結するので難しくありません。エンディングは3つです。考えながら読み、読み終えてから考える。そういうプレイスタイルの方は、ちょっと不思議なこんな物語はいかがですか。
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