第221回/想いは未来にかける橋 - Over(蓄電組) - 恋愛
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第221回/想いは未来にかける橋 - Over(蓄電組)

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Over

Over■制作者/蓄電組(ダウンロード
■容量/37.2MB

主人公の冬慈は、夜道を走りながら昔の事を思い出していた。思い出すのは、幼なじみの香夏子の事。彼女とは公園で本を読んでいる時に出会い、バスケットボールが得意な彼女に不思議とひかれるものがあったのだが、別れてしまってから2年が経った。上質な文章で綴る、中編恋愛ノベル。

ここが○

  • 高い文章力とキャラクター描写。
  • 背景写真のクオリティがとても高い。
  • シーンを切り取ったかのような印象的な場面。

ここが×

  • 感情移入しやすいとは言いがたい登場人物。
  • 「え、ここで!?」というところで終わってしまう。
  • 場面転換や回想、人称変化が唐突で分かりにくい。

■想いは未来にかける橋

しばらく、1枚絵や立ち絵がある作品ばかり続きましたが、立ち絵のない作品も私は好きです。立ち絵がない分、文章のごまかしがききませんから、一般的に見れば立ち絵がない作品は文章力が高い傾向にあると思います。この作品も類にもれず、読み始めてすぐに見事な文章力に感心させられました。

この作品の主人公は高校生なんですが、ヒロインと言い、言動が妙に大人びています。よくある高校を舞台にした恋愛ものとは、かなり趣を異にします。高い文章力とキャラクター描写で、快適に読めます(ただし、言動が大人びすぎてて、回想シーンではとても子供とは思えない)。その主人公は、幼なじみの少女と訳合って会えなくなってしまい、彼女の事をしきりに懐かしむが、という出だし。なので、物語には頻繁に回想が入ります。むしろ、回想の方がメインかも知れません。

が、回想が頻繁に入る上、一人称の視点がひっきりなしに変わるため、読んでいてかなり混乱します。まあ慣れたら大丈夫ですけど、回想はともかく、人称変化は何かそれと分かる仕掛けがあればと思わなくもありません。ノベルゲームというのは、小説と違ってそういう仕掛けが売りなんですし。

で、物語は中盤から文芸部の後輩である千秋も登場します。文芸部の活動で、主人公冬慈と交わす会話が何やら意味深で、後半へ向けて「どう転ぶんだろう?」と読み手をひきつけます。この中盤の展開は上手いですね(人称変化はやっぱり唐突なんですけど)。

ところが、終わり方があまりにもぶつ切りで、「え!!!」となってしまいました。普段私はあれこれ作品を読んでると、演出的に後半物語が一瞬止まるところで「え、まさかこんなところで終わったりしないよね?」と心配したりします。多くの場合その心配は杞憂に終わるんですが、この作品は、まさに「まさかここで」というところで終わってしまい、一瞬固まりました。「起承転結」の「結」がなく、「転」で終わってしまった感じです。

物語の作り方は色々あるとは思うんですが、やはり読み手を楽しませる、あるいは納得させられる収束というのは必要なんじゃないかと思います。何と言うか、風呂敷広げっぱなしで、後片付けは読者に任せた、という感じで(汗)。この作品も、登場した要素を見れば、きっちり綺麗なオチもつけられたと思うんですが……。それがあれば、かなり読後の印象が変わったと思います。ちょっともったいない感じがします。もちろん、あれはあれで主人公がちゃんと成長していると言えばその通りなんですけど。読み手としては、その成長の結果までを見てみたかったですね。そのための材料は、作中にちゃんと転がっているのに。

それと、ほとんど主人公とヒロインの2人で物語が展開するんですが、残念な事にこのヒロインがあんまり感情移入しやすいとは言えないタイプなので、そういう意味でも損をしている気がします。ラストで主人公と綺麗にくっつくなら、途中のああいう展開もありかなとは思うんですけど。主人公も、ラストまでは積極的な行動を起こす訳じゃなく、イマイチ煮え切らないですしね(一番感情移入しやすいのは、実は文芸部の後輩千秋かも知れませんが、彼女は物語に積極的に絡むとは言いがたいですし)。

とは言え、高い文章力と読者とキャラクター描写(キャラの主張に同意できるかどうかはまた別問題として)が紡ぎだす雰囲気は一見の価値があります。それを大いに助けているのが、ハイクオリティな背景写真です。この背景写真はオリジナルのようですね。背景写真と言っても馬鹿にはできない事が、こういう作品を見ると実感できます。また、背景写真に文章が合わさって、「シーンを切り取った」とでも表現したくなるような、とても印象的な場面を描き出している箇所がいくつもあり、感心させられました。ラストにきっちりしたオチがついていれば、準推薦にしていたと思います。

スタンダードな恋愛ノベルをお求めの方だと、ちょっと好みに合わないかも知れませんが、余韻をひく事は間違いない物語で、続きは読み手が色々想像してみてくださいという事でしょうね。プレイ時間は1時間半くらい。選択肢はなし。システムは吉里吉里です。味わいながらじっくり読める作品でした。
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