第222回/最初で最後の夢恋路 - 明けない夜が来る前に(幻創映画館) - シリアス・感動系
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第222回/最初で最後の夢恋路 - 明けない夜が来る前に(幻創映画館)

シリアス・感動系
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明けない夜が来る前に

明けない夜が来る前に準推薦
■制作者/幻創映画館(ダウンロード
■容量/128MB

蒼矢は、どこにでもいる普通の高校生。のはずだったのだが、ある日の帰宅途中に交差点で事故に巻き込まれてしまう。自分の状況を把握できていない蒼矢の前に夕美という少女が現れ、「あなたはもう死んでいます」と宣言した。切なさ最高レベルの小品ノベル。

ここが○

  • とにかく、切なくて胸に迫る物語。
  • シナリオを盛り上げる演出の力。
  • キャラクターに合っているフルボイス。

ここが×

  • ワイド画面にあまり意味がない。
  • 物語に少々奥行きが乏しい。
  • 主人公にもう少しバックグラウンドがあれば。

■最初で最後の夢恋路

ノベルゲームをある程度プレイしていると、結構作品をパターンで分けられますよね。「ぼたんゆき風味」とか。肝心のその「ぼたんゆき」が、既に公開停止されてるのに何ですけど(笑)。そして今作に近い雰囲気の作品を探すと、まずは「Dear ∽ Life」でしょう。何せヒロインが死神(的な存在)です。

ですが、「Dear ∽ Life」と違うのは、「主人公が冒頭で既に死んでいる」という事。その意味では「君の息吹を」とか「ゆうとっぷ」に近い雰囲気も感じさせます。死んで幽体となった主人公を、高校生ながらリベレイターと呼ばれる、幽体を「狩る」仕事をしているヒロインが探し当て、2人が出会うところから話が始まります。

この出だしと設定がまず興味をひきますし、死んでしまった主人公が最後のお願いをして、そこからたった数時間の恋愛物語が始まるという作りが、非常に良いです。儚い恋愛物語を描くのに、これほどうってつけのシチュエーションは、他にないでしょう。正に「最初で最後の恋」ですからね。こういう突飛な設定は、読者が消化しきれないと突飛なまま終わるんですが、今作は、突飛な設定を冒頭で読者に上手い事納得させる事に成功しています。

この作品、シナリオだけを見れば実はありきたりで、捻ったところは全くありません。予想通りの展開をして、予想通りのオチがつきます。しかし、短編ながら展開のバランスが非常に良いのに加え、演出がとても素晴らしく、同じシナリオが何倍もの力を持って胸に迫って来る作品となっています。ヒロインの設定は、私は大成功していると思います。女子高生アルバイトの死神なんて、考えそうで考えない設定ですが、この設定のお陰で「切なさ」が何倍にも高まっているんじゃないでしょうか。

ただ、シナリオ自体の奥行きには少々乏しい感じがします。と言うのも、主人公やヒロインのバックグラウンドがほとんど語られないまま進むんですよね。ヒロインに関しては少しは語られますが、主人公の生き様が見えてくるような言動があれば良かったのではないかと思います。それが見えて来ないため、何と言いますか「感動が持続しない」感があるんですね。登場キャラは2人だけで、そのキャラクターのバックグラウンドが乏しいため、キャラクターが物語を支えられず、どうしても「その場限り」な感じになっているのは否めません。

それでも、この作品がプレイ時間(1時間弱くらい)としてはお見事という他ないほどの感銘を生み出しているのは、シナリオやキャラクターではなく、「場面」を描き出す演出にあるのでしょう。あとは、キャラクターが支えるシナリオを、演出が更にもり立てる、という形になれば、更に凄い作品がこの作者さんから生み出されるのでは、と思ってしまいます。

ヒロインの夕美はフルボイスです。引っ込み思案な感じがよく出ていて、好演だと思います。立ち絵や1枚絵も全て作者さんの手によるものだそうですが、一文ずつ表示される文章と合わせて、上手に作品世界観を高めています。特に上のスクリーンショットでも載せた場面は、屈指の名場面ですね(作者さんのサイトにもあの場面が載ってたので、あの写真をスクリーンショットとして選びました)。背景処理の上手さとキャラクター絵が上手くマッチして、アニメ映画の一場面でも見ている気になります。

なお、画面がワイドサイズ(16:9)なんですが、あんまりワイドの意味がないような(汗)。背景は通常の4:3サイズだからそう感じるのかも知れません。一応、空いた箇所には映画のフィルム風の模様が入っていますが、あの模様はもうちょっと目立たせても良かった気がします(スクリーンショットでもほとんど確認できませんし)。

1時間弱のプレイ時間ですが、「切なさを感じられる」という点においては、過去随一の作品であると断言できます。もちろん、設定が設定だけにハッピーエンドになるはずもないんですが、ラストのエピローグはほんわかさせてくれ、読後感も良いと思います。システムは吉里吉里で、選択肢はなしです。今後注目してみたい作者さんの1人です。
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