第226回/涙の聖夜に光あれ - Pain(LAT) - シリアス・感動系
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第226回/涙の聖夜に光あれ - Pain(LAT)

シリアス・感動系
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Pain

Pain準推薦
■制作者/LAT(ダウンロード
■容量/31.0MB

あるクリスマスの夜。中学生の麻衣は長い苦しみからようやく解放されていた。苦しかった日々を振り返る麻衣だが、しかし胸にわき上がるのは、初めて感じる苦しさや憎悪とは別の感情だった。悲しくも心温まる、クリスマス企画の短編ノベル。

ここが○

  • 短編ながら見事なストーリーテリング。
  • 白黒回想画面主体の演出が、BGMともあいまって雰囲気を高めている。
  • 最小限の描写で最大限の効果。

ここが×

  • 回想描写は、過剰という気がしなくもない。
  • ハッピーエンドとは言い難いので、好みは分かれるところ。
  • 地味すぎる面は否定できない。

■涙の聖夜に光あれ

今年最後にご紹介は、クリスマスの季節にぴったりの短編作品。「こんな物語」「ハッピーエンド」でおなじみの、LATさんの最新作です。つい最近の作品「のべるのじかん」では、今までの作風を180度転換するコメディタッチで驚かせ、また楽しませてくれましたが、この作品は短編ながら、「こんな物語」「ハッピーエンド」に通じる、「悲劇の中に垣間見える希望」と言ったものを感じさせる、ある意味とてもLATさんらしい作品です。

物語は、1人の少女の回想で始まります。と言いますか、ほとんど全編が回想で進むんですけどね。しかし、短い作品ながらストーリーテリングの巧みさが光ります。ラストも決まっており、この作品であればこの構成以外は考えられない、と思えるほどの見事な作りには感心。

が、回想シーンのDV描写(?)は、ちょっと過剰すぎる気がしなくもありません。もちろん、ラストでその印象は払拭されるんですが、主人公の麻衣と兄である雅紀が、描写上では揃いも揃って荒んでいるので、読んでいる方まで荒みそうになりますし、ここらは読み手の感情移入する隙間がないんですよね。読み手を引きつける展開には文句なしですから、読み手の感情移入を助ける一手が何かあれば、と思いました。

とは言え、短い作品ですからそんな事を気にする前に終わってしまうのも事実です。なので、これはこれでもありなのかな、という気もします。個人的には、途中で雅紀が何かしらの気持ちを見せてくれるような描写があっても良いように感じました。

それにしても、シナリオ構成は見事です。立ち絵もないんですが、プレイしている間はそんな事は全く気にならず、読み終えてから「あれ、そう言えば立ち絵がなかったなあ」と気付いたくらいですから(むしろこの作品に関しては、立ち絵がなくて成功だったと思います)。また文章と、地味ながら丁寧な演出で物語に没頭させてくれるシナリオは、非常に高レベルです。終わり方も、ハッピーエンドではないんですが、非常に余韻を引く幕切れです。ハッピーエンドを好む方だと、好みに合わないかも知れませんが、読み手に与える感銘は第一級のものです。

これだけの物語なのだから、もうちょっと尺を長くしてと思ってしまったりもしますが、途中は決して楽しい展開をする訳じゃありませんし、このくらいの短さで、さらっと語ってさくっと終わるくらいの方が、かえって良かったのかも知れませんね。必要最小限の描写で、最大限の効果を上げていますから。その意味で、作者さんの感覚は見事なものだと思います。

そして、この作者さんらしく、BGMの選曲が丁寧で、ともすれば地味で暗くなりがちな物語を、大いに盛り上げています。LATさんの持ち味が遺憾なく発揮された、短編ノベルの傑作と言っても過言ではないでしょう。

プレイ時間は15分程度ですが、15分でこれだけ読み手に感銘を与え、強い余韻を残す作品は、そうはないでしょう。システムは吉里吉里で、選択肢はありません。急いで読み飛ばさず、じっくり噛み締めるように読んでください。きっと今までにない15分が過ごせる事でしょう。
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