第230回/粉雪は音もなく消えていく - Yuki(みためあーと) - 不思議系
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第230回/粉雪は音もなく消えていく - Yuki(みためあーと)

不思議系
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Yuki

Yuki■制作者/みためあーと(ダウンロード
■容量/50.0MB

ある寒い冬の日、主人公は、ある日友人の葬儀に出席していた。退屈さにいたたまれず、その場を後にした主人公は、駐車場の車の中で寝ている少女を発見した。慌てて彼女を起こす主人公だったが、彼女は何と幽霊だった。意外な伏線がラストで繋がる短編ノベル。

ここが○

  • 主人公とヒロインのかけあいが楽しい。
  • 短編ながら丁寧に張られた伏線。
  • 意外なラスト付近の展開。

ここが×

  • 2人目の女性キャラの存在意義が薄い。
  • 後半がちょっと唐突。
  • ラストは意外だが余韻に欠ける。

■粉雪は音もなく消えていく

暦の上ではもう春になってしまったので、ちょっと季節を外した感がありますが、一応まだ冬ですのでぎりぎりセーフでしょう。今回ご紹介は「Yuki」。タイトル画面の雪の結晶が、綺麗で印象的な作品です。

この作品を分類すれば、いわゆる「幽霊ノベル」です。この手の作品の場合、主人公が幽霊である場合とヒロインが幽霊である場合に大きく分けられますが、この作品は後者。出だしが何故かいきなり葬式のシーンで「??」となりますが、ヒロインのユキと出会ってからは、どちらかと言えばお約束全開のストレートな展開で、物語は進んでいきます。

登場人物は、ほとんど主人公とユキだけで、前半はこの2人の会話や、ゲームセンターでの模様などを中心に話が進みます。ちょっと天然気味のヒロインと、つっけんどんな態度をとる主人公という、実によくあるタイプではありますが、場面や会話とキャラクターの取り合わせがよく、かけあいも変にだらだらする事がないので、キャラクターのやり取りが楽しいものになっています。

そして後半に、2人目の女性キャラクターが登場します。彼女は彼女で、それなりに物語のアクセントにはなっているんですが、いかんせん登場してからいなくなるまでが短い上に、予告なく現れて予告なくいなくなってしまうため、何だか唐突な感じは拭えません。シナリオ展開上にも、特に必要性がある感じでもないので、ここに一工夫が欲しかった気がします。とは言え、ビルに乗り込むシーンでの主人公とユキのコンビネーションは、なかなか見せてくれます。

と、ここまでは実によくある出だしでよくある展開です。なので、「よくあるオチがつくんだろう」と油断していたら、ラストで「は!?」となりました。そう思ってもう一度読んでみると、なるほど確かにちゃんと伏線がちりばめられています。プレイ時間は40分程度ですから短編なのですが、この短さでちゃんと伏線を張り、ラストできちんと読者の裏をかくというのは、大したものです。

しかし、確かに伏線はきちんとしており、ラストも意外なんですが、このラスト近くは「いきなり終わる感」がちょっと強い感じがします。ラストの意外さを強調しようとするあまり、伏線が収束する点を絞りすぎたのではないでしょうか。収束点が、最後の1行ですからね。ですから、ラストが意外な割りに、余韻がちょっと長続きしないのです。もう1つ2つ、ラストの事実を決定づける伏線を張っておいて、もうちょっとゆるやかにラストに至らせた方が、効果が大きかったように思います。

あとは、この手の作品(幽霊もの)ではやはり主人公とかヒロインのバックボーンがあれば、と感じました。具体的に今作で言えば、ヒロインであるユキの過去などですね。そこがもうちょっと語られていれば、ラストでもう一段上手くピースが組み合わさり、感銘が増したのではないでしょうか。

とは言え、このプレイ時間でこういう作りのシナリオというのは、なかなか出来るものではありません。短編ながら、随所に作者さんの試みと工夫が感じられる野心作です。

システムは吉里吉里で、選択肢はありません。背景や音楽は、全て見覚え(聞き覚え)のある素材ですが、シナリオには光るものを感じさせる作品ですし、短編は「ネタ一発勝負」みたいな作品も多い中、きちんとエンターテインメント性もあります。処女作のようですので、次回作にも期待ですね。
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