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第233回/I seek you, 愛・CQ - 子守唄を貴方に……(月うさぎプロジェクト)

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子守唄を貴方に……

子守唄を貴方に……推薦
■制作者/月うさぎプロジェクト(ダウンロード
■容量/384MB

岡崎直哉は、たった1人しかいない小望月高校無線部の部長。夏休みまでに部員を3人集めないと、伝統ある無線部が廃部になってしまう。直哉は、なりふり構わずに偶然出会った少女、紗奈に無線部に入ってくれるよう頼むが。学園もの風だが、後半に驚かされるラブコメ風ノベル。

ここが○

  • 個性豊かなキャラクターが織りなす物語。
  • 無線が個性的なアクセント。
  • 感動的なラスト。

ここが×

  • 脇役にイマイチ存在意義が薄い。
  • もうちょっと無線が本筋に絡んでも良かったのでは。
  • 文章に若干ミスが目立つ。

■I seek you, 愛・CQ

7年以上レビューを書いていても、「推薦」はなかなか出るものではありません。「これは推薦だ」と思える作品には、年に2~3回出会えれば良い方でしょう。だからこそ、たまに私の心にスマッシュを食らわせてくれる作品に出会えると、「この瞬間のためにレビュー書いてるなあ」と嬉しくなります。「子守唄を貴方に」のご紹介です。

まずびっくりするのは、その個性的な設定です。個性的と言っても、主人公やヒロインに変な特徴とか特殊能力があるというのではなく(いや、そっちもあると言えばあるというか、むしろそっちがメインなんですけど)、主人公の所属する部活が「無線部」。かつては「趣味の王様」と言われていましたが、高校生や大学生の方だと、アマチュア無線の存在など知らないという方も多いじゃないでしょうか。そんな無線部の部員は主人公1人。彼が部員集めをするところから物語が始まります。

似たような展開をする物語は、今までにもなくはなかったんですが、アマチュア無線という、絶妙にデジタルとアナログが混在した世界が、序盤をまずは強力に引っ張ってくれます。主人公とヒロインだけでなく、嫌な感じのパソコン部の部長や、オカマっぽい友人、無線仲間など、脇キャラも非常に個性的で、中盤までは無線部の交信風景だけで十分楽しませてくれます。色々と現実的な葛藤を見せてくれる主人公も、感情移入しやすいです。作りはいわゆるカレンダー消化型で、季節は夏休みくらいの2週間ほどです。

この「日常を楽しませる」というのは、思いのほか難しいものです。それをこの作品は、「古いけど新しい」設定と、ちょっと他の学園ものとは方向性を変えたキャラクターメイキングで、上手く読者の興味を持続させる事に成功しています。非常に上手い手法です。

しかし、この作品で驚かされるのは実は中盤以降です。この作品に関しては、中盤以降の展開を書いてしまっては、プレイヤーの興味を削いでしまいますので、ネタばれはしません。是非皆さんの目で確認してみてください。私など、「何いぃ!」と固まってしまいましたから。作者さんのコメントでも「ラブコメ」と書いてますが、ラブコメなのは前半だけです(笑)。

そんな訳で、中盤以降はそれまでとは全く違う方面で話を引っ張っていってくれます。緊迫感もかなりのもので、それでいて重苦しい感じもなく、むしろさくさく読めます。緊迫感を持たせつつ、どんどん読ませてくれるというのは、物語作りが巧みである証拠だと思います。もっとも、中盤以降では無線や個性的な脇キャラが、ほとんど小道具のような扱いになってしまったので、せっかくの個性的な要素が、メインシナリオにあと一息深く絡んでくれたら良かったのに、と贅沢な事を思いました。メインシナリオとまでは行かなくとも、ラストくらいは無線が絡んで欲しかったな、と。それでも「無線でももうちょっと答えてくれるぞ」という後半の主人公の台詞は、大変印象的でした。

しかし、伏線の回収は綺麗です。読みながら「あれ?」と疑問に感じたところが、きちんと後で明らかになりますし、何らかのイベントとか事実には、ちゃんと何らかの意味があるので、そういう意味では非常にストレスなく、しかも楽しんで読める物語でした。

そして、ラスト。久々に良いラストを見ました。特に、遊園地のお姉さんが主人公にかけてくれる一言があまりにも素敵で、これは今年の「ベスト台詞賞」決定かも、と思っているほどです(勝手に決めるな(笑))。ラストは、展開も場面もこれ以上ないほど決まっており、読み終えた時にはずっしりとした満足感と感動を味わえました。これほど充足感のある作品には、そうそうは出会えません。「推薦」にふさわしいです。

ただし、なぜか同じ文章が続いたりする箇所が散見されました(コピーペーストのミスとか?)。あとは、ラストは盛り上がりが最高潮の場面で終わるんですが(その後ちょろっとエピローグがあり)、その後でもう少しだけ「落として」欲しかった気もします。しかし蛇足になってしまうよりはあの終わり方が良かったのかも知れません。

音楽、立ち絵は全てオリジナルです。立ち絵は細やかな線の可愛らしい絵で、1枚絵もレベル高いです。システムは吉里吉里、選択肢はなく、プレイ時間は4時間弱でしょう。いや良い作品を読みました。こういう作品にたまに出会うから、フリーノベルゲームはやめられないのです。さあ、皆さんも今すぐ無線機を買って来て、「ハローCQ」!(何故だ)
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