第241回/雨が奏でる子守唄 - 桃色☆パニック(Inferior) - 恋愛
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第241回/雨が奏でる子守唄 - 桃色☆パニック(Inferior)

恋愛
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桃色☆パニック

桃色☆パニック■制作者/Inferior(ダウンロード
■容量/42.7MB

ある雨の日、コンビニの前に傘も持たずにたたずんでいる少女を見つけた八神。彼女が気になり声をかけてみた。その少女、楓は、ぶっきらぼうながらも嬉しそうに八神についてくる。一緒に暮らし始めた2人は、お互いに惹かれていくが。ラストが綺麗な短編恋愛ノベル。

ここが○

  • 綺麗で余韻を残すラストシーン。
  • 自然で流れの良い生活描写。
  • 素直で可愛らしいヒロイン。

ここが×

  • この手の物語にしては尺の短さがかなり致命的。
  • 若干脈絡に欠ける後半。
  • おなじみの素材が多く、ちょっとオリジナリティには欠ける。

■雨が奏でる子守唄

恋愛ノベルで一番季節として多いのは、断然夏ですが、天気で言えば「雨」も印象的に取り上げている作品が多い気がします。雪が、降っている様子が絵になるとしたら、雨はその音が印象に残る、そういう点も一因なのかも知れません。印象的な雨音で始まる作品のご紹介です。

ジャンルとしては、「時限恋愛もの」です。いつか来る別れを前提とした恋愛ノベルですね。主人公とヒロインは同居していますし、雨のシーンが印象的という意味では「あまやどり」と少し近いものを感じさせます。ヒロインが最初に雨宿りしているという出だしは同じですしね。もちろん、あの作品とは後半の展開が全く違いますけど。

この作品は30分ほどの短編です。日常描写は、過不足なく流れもよく、とてもまとまっており、読みやすいです。名前も出て来ない友人との会話や、ゲームセンターでのやり取りなども、とても良いと思います。ヒロインである楓も、キャラクターメイキングの上手さもあって、嫌みがなく、過剰に飾り立てない軽妙さが楽しめます。

ただ、「時限恋愛もの」としては、かなり尺が短いのが気にかかります。もともとこの手のジャンルは「主人公とヒロインが想い出を積み上げて行き、ラストで別れなければならない」物語であり、来ると分かっているラストが肝です。物語的には全く王道であっても、途中の「想い出の積み上げ」さえきっちり描けていれば、その後の別れだけでも物語が成り立つと言ってもいいほどです。時限恋愛ものの命とも言えるラストを生かすのは、一にも二にもそれまでの日常描写である事は、言うまでもありません。

ところが、この作品はその途中があまりに短いんですよね。描写の質自体はとても良いと思うのですが、八神と楓が惹かれていく過程も、あまり描かれていないので、せっかくの描写の良さ、あるいは時限恋愛ものならではの良さが十分出ていないのが、惜しまれます。尺の短さもですが、後半で、「楓が実は○○だった」という展開が、少々唐突な感があるのが、そういう印象を強めているのかも知れません。

しかし、そのような弱点を抜きにしても、ラストシーンの美しさは短編恋愛ノベルとして、水準以上の見事さです。ラストの楓の表情と最後の一言が、絶妙の余韻を生み出しています。ハッピーエンドとは言い難いですが、非常に上質の後味をプレイヤーに与えてくれます。このラストシーンだけでも、この作品をプレイする価値があると思います。日常シーンのセンスの良さからして、それなりの尺の長さがあれば、後半の破壊力は、倍増と言わず3倍にもなったのではないでしょうか。

音楽や背景、立ち絵は全て素材です。オリジナリティには欠けますが、立ち絵は楓というキャラクターによく合っており、背景のチョイスも上々です。聞き覚えのある曲が多い中(ほとんどがTAM Music Factoryの曲)、タイトル画面の曲は、いつまでも聴いていたいと思わせてくれる魅力があり、特にエンディング後にタイトルに戻った時、この曲が非常に余韻にプラスアルファを与えてくれています。

30分ではなく、2時間くらいの物語であれば、躊躇なく「準推薦」をつけていたと思います。短編作品ですが、プレイ中には「もっと読んでいたいな」と思わせてくれる作品でした。是非長編を読んでみたい作者さんですね。システムはLive Maker。選択肢はありません。センスを感じさせてくれる短編です。是非どうぞ。
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