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第242回/涙は時の流れに消えて - 悲しみに二つの祝福を(ReIce-zero-)

学園・青春
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悲しみに二つの祝福を

悲しみに二つの祝福を準推薦
■制作者/ReIce-zero-(ダウンロード
■容量/33.7MB

修一の姉、楓が10年ぶりに日本に帰って来るという知らせに、修一の心はにわかに波打ち始めた。幼なじみの華鏡、友人の佐久斗との日常は、楓が帰ってきても変わらず流れて行くと思われたが、ある日メール友達から来たメールの内容に、修一の緊張感が一気に高まる。独特な作りのループ型ノベル。

ここが○

  • シナリオの凝った仕掛けと、明かされる意外な事実。
  • 繰り返しプレイも読み応えあり。
  • 巧みな伏線、無駄のない論理的な作り。

ここが×

  • キャラが絡む心情描写の面白みに少し欠ける。
  • 重要な要素が後半で何の前触れもなくいきなり明かされたりする。
  • 論理に偏りすぎて、情緒に訴えかけてこない。

■涙は時の流れに消えて

ループものとか時間跳躍ものというのは、作者さんが最も工夫を凝らしやすい分野なのでしょうか。あの「ひとかた」を始めとして、「スターリーカラーズ~one for all, all for one~」「時の振り子」「Fragments」「ちょこっとループ」など、個性豊かな作品が並びます。そして、この作品もループものの傑作の1つに数えられていい作品だと思います。「White Epilogue」の作者さんによる作品です。

実は、この作品を「ループもの」と明記するのはどうかという気もするのですが、明記しないと、1回目のプレイで終了してしまい、この作品の面白さを途中までしか体験できない方もいるのではないかと思い、あえて明記する事にしました。しかし、既存のループものとは少し趣が違います。どこらが違うかは、プレイしてからのお楽しみという事にしてください。

この作品は、作りの巧みさが何より目をひきます。一見、何気ない日常に見えるんですが、途中から急展開して、それまでの何気ない日常に隠された事実がどんどん明らかになって、思わぬ方向に物語が展開していき、特に後半では息を飲む展開となります。この辺りの展開は「White Epilogue」同様で、この作者さんらしい作りの物語です。

エンディングは6つですが、最初は選択肢が現れません。一度エンディングを見たら、もう一度最初からプレイしてみてください。今度は選択肢が現れます。この、2度目以降のストーリーがまたよく出来ています。1回プレイして他のエンディングを見落としている方もおられるかも知れません。是非今一度のプレイをお勧めします。

さて、この作品を分類すればループもので、ループものとしての作り、シナリオの組み立ては非常によく出来ています。反面、ループの前提となる過去の事件は最初まったく触れられず、要となる中盤の出来事も、該当するキャラクターの心理描写がないため、その出来事自体が突拍子のなさを感じさせ、キャラクタードラマとしては、どうしても唐突さを感じさせてしまうのが惜しいところです。

言ってみれば、ループによる物語があくまでメインで、過去の事件や途中のハプニングは、メインシナリオを成立させるための要素に過ぎず、キャラクターもそれを作るための材料、みたいな印象を受けてしまうのです。メインのループシナリオがよく出来ているだけに、なおの事このギャップが感じられます。主人公の心理描写は結構分厚いのですが、他のキャラクターとの関係についての描写が希薄なのです。

たとえば、華鏡との恋愛とか、佐久斗との友情とか、姉との関係とか、どれか1つでいいので、しっかり描写して、メインシナリオと並ぶもう1つの幹として据えれば、物語としての完成度や、生み出す感動は何倍にもなったはずです。しかし、とあるエンドでの華鏡とのラストシーンなども、それ自体は名シーンなんですが、途中がなく、メインシナリオでは、華鏡は単に修一の目的を達成するための助手、みたいな扱いなので、どうにもそのシーンで感動しきれなくなってしまうのです。これは、佐久斗や楓についても同じ事です。文句なく面白い物語なのに、読んでいるときの感銘が持続しないというのが、非常にもったいない点。

論理に訴えかけるための伏線や、伏線のほどけ方などは見事なのですが、巧みに伏線を張るだけがシナリオ作りではありません。せっかくの名シーンに説得力を持たせるためのキャラクターの日常の積み重ねとか、台詞の絡み合いとか、そう言ったものがあれば、「推薦」が出てもおかしくないレベルの作品だと思います。論理の組み上げは見事ですので、論理だけではなく、プレイヤーの情緒に訴えかけて来るものがあれば、と思わされました。

システムはNScripterで、プレイ時間は全部のエンドを見て3時間というところでしょう。前半はごく普通の学園ものですが、後半で「はー、なるほどそういう事ですか」と唸らされてしまう事必至です。ハッピーエンドは非常に綺麗で満足度も高いです。エンドリストがあればより親切でしたが、エンドは6種類なので自分でメモしておきましょう。一風変わった学園ループものの良作。ご賞味あれ。
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