第250回/雨粒は、私の心の涙 - ウェザーウィッチ 気象魔女の夏(藍恋) - ファンタジー
FC2ブログ

NaGISA net - フリーノベルゲームレビュー

ARTICLE PAGE

作品リスト − 新着順名前順プレイ時間順ジャンル別掌編
久住女中本舗作品リスト - 新着順/名前順
Peing質問箱(リクエスト、ご質問お気軽に)

第250回/雨粒は、私の心の涙 - ウェザーウィッチ 気象魔女の夏(藍恋)

ファンタジー
  • comment0
  • trackback-

ウェザーウィッチ 気象魔女の夏

ウェザーウィッチ 気象魔女の夏■制作者/藍恋(ダウンロード
■容量/44.7MB

フィレルは、命令に従って魔法の力により天気を制御する「気象魔女」。今日はほうきに乗って東京の空に虹をかけていた。出来映えを自画自賛するフィレルだが、制御を失って東京タワー近くで落下して行き、禁じられている地上人と接触してしまった。独自の設定が目をひく魔法ノベル。

ここが○

  • 気象魔女という設定が面白い。
  • その設定を生かすための描写も巧み。
  • さりげないところで繋がる人間関係。

ここが×

  • もう1つドラマがあっても良かったような。
  • ラストに綺麗な解決が欲しかった気が。
  • 本編でもう少し伏線が回収されると良かった。

■雨粒は、私の心の涙

「魔法もの」を2本連続でご紹介です。こういうのって、続く時には続きますね。この作品は「娘子隊皓旗」「トレーディングプリンセス」を作られた方の新作。前2作同様、この作者さんの持ち味がよく出ている個性的な作品です。この作品の制作は作者さんのサイトで知ってましたので、公開を楽しみにしていました。

まず目をひくのが、「気象魔女」という変わった設定です。魔法使いものは時々ありますが、天気を操る魔法使いというのが面白いですし、非常にオリジナリティがありますね。その設定はもちろん物語に大きく関わってくるんですが、設定の生かし方や、説得力を持たせる描写もかなりのもので、作者さんの力量を感じさせます。

この作品には立ち絵がないんですが、独特の文章が上手く情景を補完してくれて、ある意味「立ち絵なしならではの作品」と感じさせます。文章は基本三人称ですが、キャラクターの心情描写も織り交ぜる「一人称風三人称」。描写すべきところは描写し、端折るところは端折るそのテンポ感やバランス感も良好です。リアルにするところと、そうでないところの見極めが非常に上手いんですよね。

さて、この物語は気象魔女であるフィレルが、地上人と接触する禁を犯した事で問題となって云々という展開です。登場人物たちには、裏で意外な繋がりがあったりして、短い作品ではありますが、しっかりキャラクターが描けていると感じました。サーバエルがお気に入りのキャラクターです。

が、主人公であるフィレルからのアプローチがちょっと弱い感じがします。気象魔女であるフィレルと、地上人である美咲との交流があんまり描かれないまま後半に突入するので、フィレルの苦悩がプレイヤーに十分伝わって来ないんですよね。苦悩の原因は分かるんですが、上手くフィレルと気持ちがシンクロしないまま、物語が展開していく感じと言いますか。逆に、サーバエルとかラーミアと言った、サブキャラからのアプローチはいいなあと思いましたけど。

あとは、ラスト近くにもう一つドラマが欲しかったように思います。せっかく主人公は気象魔女なのですから、その能力を使って美咲に何かメッセージを伝えるとか、あるいは何らかの形でフィレルの成長を見せるとか。序盤でフィレルと美咲の交流が十分描かれず、終盤がある意味淡白に終ってしまうので、せっかくのフィレルの成長物語の魅力が伝わりにくいのが残念です。

そこらにもう一押しがあれば、準推薦にしたい作品でした。この作者さんの作品は、「娘子隊皓旗」でも「トレーディングプリンセス」でも、「あと一押しあれば準推薦」と感じたんですよね。描写とかキャラクターメイキングには非常に素晴らしいものがありますから、是非読み手が唸るもう一捻りを、と期待してしまうのは、贅沢というものでしょうか(汗)。

なお、選択肢は1カ所しかなく、その選択肢は一度クリアしないと有効になりません。一度クリアすると、選択肢で別の角度からの物語が見られ、その物語も読了すると、今度はサブキャラのおまけシナリオが読めます。本編だけですと、少し消化不良な感は否めませんが、全て読むと綺麗に伏線が繋がっており、意外なキャラクターの過去が楽しめたりして、満足感も高いです。

全体に見た目は地味な作品なんですが、背景の加工具合とか、チャプター表示とか、細かなところでこの作者さんのセンスの良さを感じます。派手さはないものの、こういう心遣いがきいた作品は、結構好みです。

システムは吉里吉里。プレイ時間は、おまけまで全部読んで1時間ちょいというところです。もしかしたら、読み手によっては合う合わないがある作品かも知れませんが、この作者さんの作品は「文章の持つ力」を堪能させてくれます。次回作にも、是非期待したいと思います。
関連記事

Comments 0

Leave a reply