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第263回/二人の恋は漸近線 - 君の道、僕の道(alpha)

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君の道、僕の道

君の道、僕の道■制作者/alpha(ダウンロード
■容量/77.2MB

めでたく大学に合格した海原海斗は、一人暮らしをするために東京行きの寝台列車に乗り込んで、一息ついていた。しかし棚の上から何やら気配が。そこに隠れていたのは、何と同年代の女の子だった。彼女は東京までかくまって欲しいと頼むが。小気味よいやり取りの「同居もの」恋愛ノベル。

ここが○

  • 等身大で小気味よい日常会話。
  • さくさく読めるテンポ感。
  • 清々しいほどのバカップルぶり。

ここが×

  • 京香の家出の原因を、もう少し絡ませられなかったか。
  • ヒロインが少々傍若無人に感じる場面も。
  • 二人が惹かれ合う描写が少し弱い。

■二人の恋は漸近線

私は、色んな作品に出会う度に、勝手にジャンル名を連発しますが、この作品のジャンル名は分かりやすいですね。「ボーイミーツガール同居もの」です。その名の通り、主人公と見知らぬヒロインが出会って、何故か一緒に暮らすようになる物語です。「Moonlight Blue」「ランプ Lamp/rumble」「あまやどり」辺りですね。しかし、挙げた3作品のヒロインが、幽霊だったりランプの精だったりするのに対し、この作品のヒロインは、ごく普通の女の子です。

普通に考えて、ごく普通の女の子といきなり同居し始めるというような展開はありえない訳で、この手の展開ですと、やり取りがあまりに現実的だと、展開と描写のギャップが凄い事になってしまいます。この作品の場合、そこらを軽く流し、ヒロインに少し傍若無人とも言えるくらいの軽口を叩かせているのは、上手く行っていると言っていいでしょう。

そんなヒロインと、幾分気弱な主人公のマッチングも良好だと思います。実はこの作品、2人が恋仲になるまでは、事件らしい事件は特に起きません。2人がアパートの部屋で繰り広げる、何気ない日常で物語が進んでいきます。そういう、起伏ではなく、日常のやり取りで読ませる方向を狙ったのは、よい方法です。大げさな事件がなく、何気ない日常で話が進むという辺りは、先ほど挙げた作品の中では「ランプ Lamp/rumble」に近い雰囲気です。もっともあちらと今作では、ヒロインの性格もオチもまるで違いますが……。

さて、ヒロインの京香と主人公の海斗は、寝台列車の中で出会います。京香は家出少女なんですが、ここにちょっと説得力が欠ける点があるように思います。海斗と京香は何ヶ月も一緒に暮らしますが、その間家族から何の音沙汰がないというのも、少々不自然です(普通捜索願が出るでしょうし)。ここに何かしら、説得力を高める設定があれば、違和感がかなり減ったように思います。例えば、家出じゃなく、半ば両親から追い出されるようにして家を飛び出してきた、とか。過去回想を上手く挿入するのも、手かもしれません。

また、ラスト近くで海斗と京香が衝突するんですが、ここに京香の家出の原因などを、もうちょっと上手く絡められたら面白かった気がします。もちろん絡む事は絡むんですが、主人公が幾分短絡的に京香にあたり、その解決法も淡白なので、クライマックスを作る要素としては、イマイチ弱いと言わざるを得ません。なので、「親の言いなりになる事を疑問に思わない主人公」と「親の言いなりになりたくないヒロイン」の衝突と板挟みを、上手くシナリオに取り入れれば、完成度がもう一段上がったのではないかと思いました。

同じ様に、海斗と京香が惹かれ合う過程でも、もう1つ2つ鍵となるイベントを挿入してみれば、違った気がします。まあ、今のままの「唐突に恋に落ちちゃった感」の方が、後半の2人のラブラブ描写には、実は合っている気もしますので、このままでもいいか、という気がしなくもないんですが(笑)。

その後半は、読んでて思わず笑ってしまうほどのバカップルぶりを見せつけてくれます。そここそが今作のクライマックスかも知れません(?)。読んでいても何故か腹立たしさが込み上げて来ないのは、前半からの、京香の少しわがまま勝手な振る舞いがあってこそでしょう。ただ、海斗が京香を呼ぶ時の名前が「井波さん」になったり、「京香」になったりしてるのが、気になりました。

システムはYU-RISで、選択肢はなく、プレイ時間は1時間半くらい。この作品は、作者さんがシナリオを初めて書かれた作品のようです(サークル的には前作もあるようなのですが)。手堅くまとめた上で、書き手の個性がよく出ている作品だなと感じました。テンポがよく、読んでいて疲れる事がないのは好印象です。次回作は、是非読み手を驚かせる仕掛けにも期待してみたいですね。
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