第271回/きっと誰もが主人公 - 無理やり主人公(がっかり亭) - コメディ
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第271回/きっと誰もが主人公 - 無理やり主人公(がっかり亭)

コメディ
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無理やり主人公

無理やり主人公準推薦
■制作者/がっかり亭(ダウンロード
■容量/12.9MB

さえないオタクで無職の脇山雑太は、ある日駅前でマンガの一場面のような事件に遭遇する。以前からそういう状況を夢見ていた雑太は、オタクの知識をここぞとばかりに生かし、自分が主人公となるべく事態に介入し始めた。セオリーを逆用してセオリー破りの物語を作った、風変わりなノベルゲーム。

ここが○

  • スピーディで緊迫感のあるバトルシーン。
  • テンポよく過不足のない展開。
  • あくまで脇役らしく、それでいてラストは盛り上げる主人公。

ここが×

  • あまりにも影が薄い本来の主人公(?)。
  • ちょっと駆け足気味な気がするラスト近く。
  • 設定にほとんど何のフォローもないので、割と読者は置いてけぼり。

■きっと誰もが主人公

ノベルゲームをたくさんプレイしていると、「お約束」と呼ばれる設定が数多くあるのに気付くでしょう。例えば、「主人公には何故か両親がおらず、高校生なのに一人暮らし」とか。それはそれで、物語を成立させるための一要素であるので、そこに突っ込むのは無粋というものですが、その「お約束」を逆用した、面白い作品のご紹介です。

主人公は22歳の無職の男で、アルバイト先を探しているという設定。そんな彼が駅前で異次元バトルのような、マンガみたいな状況に遭遇するというところから、物語は始まります。出だしは何と言いますか、中二チックです(汗)。そんな場面を、何の能力もない主人公が、マンガやアニメ、ゲームの「お約束」知識だけで切り抜けて行って、主人公の座を目指すという、何とも奇想天外な物語。

が、奇想天外ではありますが、主人公には何の能力もありません。なので、ある意味ステレオタイプな展開なのに、そこが絶妙な緊迫感を与えていて、とても面白く読む事ができます。事実、例えば本来の主人公である綺堂を軸に同じ物語を書いたら、ごくごく普通の印象に残らない物語になったかも知れません。お約束を逆手に取って、お約束の裏街道を行くという作りが、まず上手いところです。

また、この作品で重要なウェイトを占める戦闘シーンが、よく書けています。描写が適度でテンポもよくスピーディ。そして何もできない雑太は、ちゃんと自分の力をわきまえているため、美味しいところだけいただいていきます(笑)。冷静に戦闘シーンを眺めると、あまりにご都合主義的な展開ではあるのですが、物語の作りが作りであるだけに、そこが気になりません。これを狙ってやったのだとしたら、作者さんのもくろみはお見事です。

そして、これだけお約束を並べ立てた物語なんですが、主人公である雑太ただ1人だけは、その「お約束の輪」の外にいます。輪の外にいる事を逆に利用して、上手く立ち回っていくのですが、最後まで彼は輪の外にいるというのも、また節度がきいています。最後まで、別に力に覚醒したりする訳でなく、あくまで「一般人的立場」のままなのです。これが、この物語の一番の肝で、読み手を揺さぶってくれるところだと思います。実際、トゥルーエンドのラストとか、グッドエンドの後半とか、とても良い展開をしており、作者さんのシナリオライターとしての技量を感じさせてくれました。

反面、後半についてはちょっと駆け足気味な感じもします。トゥルーのラストは、ラスト自体は綺麗なんですが、持って行き方がちょっと強引にも感じます。また、特殊設定ですとかヒロインである六角の過去については、何らフォローがありませんので、そういう意味では少々消化不良感も感じるところ。グッドエンドのラスト近くも、六角の過去に何かの言及があれば、もっと読み手に訴える力が増した気がします。

あとは、キャラクターがちょっと寂しい感じですね。六角の他には、本来の主人公とラスト近くで突如現れる女性キャラがいるんですが、どちらも物語的には非常に重要なので、この2人を物語にもっと絡ませていれば、面白かったかも知れません。とは言え、1回1時間という尺を考えると現状でも十分ですし、「この2人をもっと使ってくれれば」と思ったという事は、「尺がもっと長かったらな」という期待の裏返しと言えるのかも知れません。

システムはYuuki! Novelで選択肢がありますから、この時点で「ぎゃあ」となる人も多いでしょうが(汗)、間違うとバッドエンド直行なので、システムに由来する遊びにくさはありません。ちなみに読了すると2周目をプレイでき、グッドエンドへの選択肢が増えます。グッドエンドとトゥルーエンド、どっちも味があるエンドですので、読み手によって好みが分かれるところでしょう。私としてはトゥルーエンドが好きだったりしますが、グッドのラストシーンも、シンプルな1枚絵がよく効果をあげている名シーンだと思います。

プレイ時間は1時間半くらいだと思います。作品紹介文とか、ツールがYuuki!とか、色んな面でちょっと甘く見てプレイしてしまったのですが、良い意味で期待を裏切ってくれた作品でした。大見得を切らない等身大の主人公が、不思議な元気を与えてくれます。
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