第273回/An die Musik - Musicus-ムジクス-(ぼん) - 恋愛
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第273回/An die Musik - Musicus-ムジクス-(ぼん)

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Musicus-ムジクス-

Musicus-ムジクス-■制作者/ぼん(ダウンロード
■容量/47.0MB

弾田響子はピアノを習っていたが、人前でピアノを弾くのが嫌で嫌で仕方なかった。その日も、重い足を引きずりながら教室までやって来たが、いつもと何だか様子が違う。意を決して中へ踏み込んでみた響子が見たものは……。ピアノ弾きなら共感できるかも知れない、短編乙女ノベル。

ここが○

  • 演奏経験のあるピアノ弾きなら、頷けるテーマ。
  • 上質の余韻をひく終わり方。
  • 高品質な立ち絵。

ここが×

  • 主人公の具体的な成長が見たかった。
  • いきなり出てすぐ消えるピアノ講師の奏。
  • 展開上仕方ないが、少々リアリティに欠ける点が。

■An die Musik

ノベルゲームのテーマって色々ありますが、「音楽」を取り入れたものって案外多くありません。音楽を物語の一要素として使った作品なら多いですが、ずばりテーマが音楽という作品は、「カナタへ……」くらいのものでしょうか。この作品は、女性作者さんによる作品で、いわゆる「乙女ノベル」。更にテーマは、音楽とはとか、演奏とは、みたいなもので、かなり新鮮です。ピアノ弾きの端くれとして、これはプレイしない訳にはいきません。

物語は、ピアノを習っているものの、人前で弾くのが嫌な少女(高校生くらいらしい)、弾田響子が教室に向かうところから始まります。彼女の心境は、ピアノを習っていた人なら誰でも共感できるでしょう(笑)。そして、ピアノ講師平野奏の教室の雰囲気が、何だかいつもと違っているという辺りから、スタート。プレイすれば分かりますが、展開自体はいわゆる「閉鎖洋館もの」に近い感じです。ホラーな展開はしませんけどね。

で、館の中でスピネットとチューナという2人の男性と出会い(そのまんまなネーミング)、講師である奏のピアノの「奏者を選ぶ」、何てのを軸にお話が進んでいきます。短編作品ですが、適度な進行感と、適度なもやもや感が上手くブレンドされていて、物語を引っ張ってくれます。立ち絵は典型的な乙女向けですが、とても上質です。

この作品のテーマは、間違いなく音楽です。しかし、意外にも作中に音楽用語はほとんど出て来ません。それでいて、音楽を演奏するとは、みたいな、楽器を演奏する人でないと分からないような事をしっかり語っています。この手の作品は、えてして専門用語ばかりが出て来て、楽器を弾かない人が置き去りになりがちなんですが、作者さんのバランス感覚は、なかなか見事なものです。

ただ、せっかく綺麗な終わり方をするんですから、テーマにそって、主人公の響子が何かしら変わった点を見せてもらえれば、更に印象深い物語になった気がします。例えば演奏会なり発表会なりで響子が演奏する場面を持って来るとか、そうすれば劇中のチューナの言葉も、より生きたのではないでしょうか。

また、物語中においてかなり重要な役割を果たすはずの、ピアノ講師平野奏は、後半にちょろっと登場するだけなので、少し唐突さを感じる点は否定できません。彼女の思いというのは、物語世界において非常に大きな位置を占めていますから、前半でももうちょっとそこらに対する描写があれば、物語の厚みが更に増したかも知れません。

とは言うものの、プレイ時間が実質40分程度の短編であることを考えると、独特のテーマを上手くまとめ、キャラクターも上手に絡ませ、更に分岐まで作って、実によく作ってあるなあと感心させられました。もしかしたら、楽器を人前で弾いた事がなかったら、少々共感できにくいかも知れませんが、昔ピアノ(別にヴァイオリンでもいいんですが)を習っていた人なら、主人公である響子に意外なほど共感できると思います。短編物語ですが、中編にしても面白かったでしょうね。

作中、何カ所かリアリティに問題があるのでは、という描写があったんですが(一度も音が狂ってないから調律してないとか、響子は家にピアノがないのにピアノを習っているとか)、最後まで読めばこれはシナリオと密接に関係している上なので、狙ってそういう描写にしているんだと思います。家にピアノがないのにピアノを習っているというのは、若干ありえない気がしなくもないですが、スピネット編のちょっとした後日談は、その設定がないと描けませんし、あの終わり方が絶妙に余韻をひくので、そこはそれと納得しましょう。

エンディングは3種類、ツールは吉里吉里。プレイ時間は40分程度です。乙女向けではありますが、そんなに明確な恋愛要素は出て来ず、どちらかというと「不思議系」のようなお話。男性でも抵抗なくプレイできると思いますよ。
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