第277回/きらめく君にありがとう - 君と再会した日(九州壇氏) - シリアス・感動系
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第277回/きらめく君にありがとう - 君と再会した日(九州壇氏)

シリアス・感動系
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君と再会した日

君と再会した日準推薦
■制作者/九州壇氏(ダウンロード
■容量/7.10MB

日野村は、人のいないローカル列車に揺られていた。小学校の同窓会に出席する彼は、15年ぶりに会う彼女に、思いを馳せていたのだ。星が好きで字を書く時に妙な癖があった彼女は、今どうしているだろうか……。クリスマスのこの時期、寂しくも暖かい、こんな恋の想い出はいかがですか?

ここが○

  • 短編にも関わらず、些細な点まで手を抜いていないシナリオ。
  • くどくなく程よく語るテキスト。
  • 社会に出て同窓会に出た事のない人には分からないかも知れない、この味。

ここが×

  • 効果音の使い方については一考を要する。
  • 若干垢抜けない会話文。
  • 地味すぎる演出。

■きらめく君にありがとう

NaGISA netで一番多く取り上げている作者さんが、今回の九州壇氏さんです。この方が凄いのは、毎回少しずつ進歩しており、文章表現の巧みさも徐々に増していっているという事です。文学部で真面目に勉強している人ならともかく、ノベルゲームのシナリオを書く人で、シナリオの技量がだんだん上がってくるというのは、珍しいと思います。もちろん、作品を完成させるという点ではどの作者さんも素晴らしいものです(ノベルゲームを1本作るというのがどれほど難しい事かは、一作作ってみればすぐに実感できます)。

しかし、この作者さんは「過去の自分の作品における問題点を真摯に見直し、それを修正すべく努力する」という事ができる人です(これができる人が、まず滅多にいないのです)。この作品は、尺が長くてもうちょっと仕掛けを施してくれたら「推薦」ものでした。短編ノベル「君と再会した日」のご紹介です。

出だしは、20代半ばの主人公が、同窓会に出る為に帰郷するという描写。主人公は過去に仲良くしていた女の子がおり、彼女との再会が楽しみでもあり不安でもあり……みたいな感じです。冒頭だけ読んだら実に普通なイメージです。

そしてこの作品は、急いで読めば30分(私はじっくり読む方なので、40分弱かかった)ほどの短編です。しかし、その短いストーリーに、巧みに流れを施している辺りに、舌を巻きます。序盤で上手く糸を引き、何でも無い描写(スポーツ新聞とか)で伏線も張りつつ、中盤でびっくりさせ、後半で更にそれを受けて落とす。30分少々の作品で、これまで上手く流れを作ったストーリーは、なかなか作れるものではありません。また、同窓会という舞台を非常に上手く利用しています。

読了すると作者さんからのメッセージが読めるのですが、これは全てのノベルゲームシナリオライターが一読すべきだと思います。「シーンありきでキャラクターの動作を決める」ではなく、「キャラクターの動作がシーンを決め」てこそ、読み手に物語が伝わって来るのです。いえ、「シーンありきでキャラの動作を決めたんだけど、読み手にはそう思わせない」事です。そこらの、立ち絵だムービーだに凝った作品では目立たない、非常に細かい配慮が、この作品からは感じられます。

よく短編作品だと、「そのシーンを出したかったからこのシナリオを書いたんだろうな」という作品によく出会います。それはそれでノベルゲームの一つの形としては否定しませんし、文章で上手く飾れば、一応それでも作品にはなりますが、なかなかレビューを書くまでには至りません。その点この作品は、起承転結も伏線もきちんとしており、私も物語作りのお手本として参考にしたいほどでした。

難点と言いますか、BGMとかSEに関しては、もうちょっと工夫の余地があると思います。例えば、冒頭の電車のシーン。延々走行音を流すより、走行音フェードアウト→BGM入れる の方が効果的だったのではないでしょうか。少しSEの扱いが安直なのが気になります。

テキストに関しては、正直上手いとは言えないのです(これは過去作でも書いてますが)。また演出にも一工夫が欲しい気がしなくはありません。特に会話文に関しては、「もっと粋な言い回しがあるのでは」と思ったりもします。しかし、その筆致がこの作品ならではの雰囲気を出しています。「同窓会」という舞台と作中での言い回しが、ぴったり合っているのです。

システムはNScripter。プレイ時間は40分くらいで選択肢はありません。薄味なのに、非常に良い余韻を感じさせてくれる作品です。こんなシナリオは狙って誰もが書けるものではありません。次回作に大いに期待します。
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