第282回/白い靴にグラッツェ! - 黄昏の白い靴(Tomiji) - 恋愛
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第282回/白い靴にグラッツェ! - 黄昏の白い靴(Tomiji)

恋愛
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黄昏の白い靴

黄昏の白い靴準推薦
■制作者/Tomiji(ダウンロード
■容量/48.2MB

イタリアはフィレンツェで靴磨きをしている若い男の前に、白いワンピースを着た老婦人が白い靴を磨いてくれと言ってきた。白い靴は磨けないと断った男は、その夜行きつけのバーで、伝説の靴磨きの話をマスターから聞かされるが。美しいBGMと背景写真がイタリアの気分を味わわせてくれる、長編恋愛作。

ここが○

  • BGMと背景写真が雰囲気たっぷり。
  • 舞台がイタリアである事が、恋愛ものとして上手く作用している。
  • 変に捻りすぎず、それでいて読み応えのある文章。

ここが×

  • 恋愛ものとしては、展開が淡白で容易に先読みができる。
  • 美術品絡みの中盤は、少々だれ気味。
  • テキストの色が背景にまぎれて、非常に読みにくい。

■白い靴にグラッツェ!

最近、新作をあれこれプレイしてもなかなかレビューにまで至らず、以前から気にはなっていたものの、なかなか手を出せずにいた作品を、ようやくプレイしてみました。この作品は「地獄に仏、いやイエスか」という発言で物議をかもした(?)、「I love America.」という作品の作者さんによる作品。今度の舞台は、イタリアは花の都フィレンツェです。

この作品でまず好印象なのは、文章です。一人称で結構主人公が多くを語るタイプですが、くどくありません。また変にレトリックに走ったりしないので、すっと読めます。「難しい熟語を連発するのが上手い文章だ」なんて感じの作品も見受けられる中、こういう正統派の安心して読める文章作品の存在は嬉しいですね。

さて、今作は恋愛ものです。最初に現在を描写して、間に過去回想が入るという、いわゆる「サンドウィッチタイプ」の作品。冒頭で登場する靴磨きの若い男が、行きつけのバーで年老いた靴磨き、フィリポの話を聞くというスタイルで、実は主人公はフィリポです。彼の若い時の恋愛物語という事になりますね。

作中でフィリポが、ヒロインであるビアンカの事をオードリー(ヘップバーン)にたとえますが、舞台がイタリアである事も手伝ってか、どことなく「ローマの休日」のような雰囲気を漂わせています。ただしあの作品ほどには物語に起伏がありません。有り体に言ってしまえば、フィリポがビアンカと出会い、1日デートをして別れるだけです。また、そのデート中に美術館めぐりをするんですが、この美術品解説が妙に詳しく、多少げんなりしてしまうところもあります。

恋愛ものとして見れば、イタリアという舞台を上手く生かしています。主人公のフィリポ自身、まるで恋愛の経験がなく、傍目から見ればかなり恥ずかしい台詞とか行動を連発していますが、もしこれが日本の大学生とかだったら、「いや、これはないでしょう」と感じるところです。しかし少々時代が前のイタリアですので、「なるほど、30年前のイタリアっぽいな」という感じで、かえって全体の雰囲気を彩ってすらいます。丁寧な文章と合わせて、これは作者さんの腕が光るところですね。

ただ、「I love America.」でも感じた事なんですが、時々「あれ? これってイタリアが舞台なんだよね?」とか「これって30年前の話なんだよね?」と違和感を覚える箇所がありました。1つだけあげると、フィリポの回想話の中で登場する通貨がユーロなんですよ。30年前にユーロはありません。もしかしたら冒頭で出て来る現在の話が、実は2030年頃の未来なのかも知れませんが、過去の話は、それこそ携帯電話などが似つかわしくないようなノスタルジーを感じるので、どっちにせよそこが気になりました(美術館とかフィレンツェの街などに関する描写は詳しすぎるほどなので、なおの事)。

物語は、かなり淡々と進み、予想通りのオチが付きますが、淡々と描くからこそ際立つ恋愛感情を感じる事ができ、ラストシーンは胸に響くものがありました。ただ「30年の間に起こった事」を出したのは、ちょっと蛇足感もあります。2人が出会ってエンドの方が、余韻をひいたんじゃないかな、という気もします。それでも、予定調和でありながら非常に後味をひく終わり方で、純粋なハッピーエンドとは言えないまでも、さわやかな読後感です。欲を言えば、冒頭で登場した靴磨きの若者が、もうちょっと絡んでいた方が面白かった気もします。

BGMはほぼ終始クラシックギターの生録音(だと思われる)のもので、これが絶妙に雰囲気を高めてくれています。フィレンツェの町並みや美術品の数々の背景写真と合わせて、居ながらにして異国情緒を味わわせてくれるところが、単なる恋愛作品だけではない、プラスアルファを与えてくれていますね。

ツールはYuuki! Novel。背景写真が黄色っぽいのにテキストカラーが黄色で読み辛かったり、そもそもツール自体がプレイしやすくないですが(汗)、立ち絵等がなく大きな起伏もないのに、淡々とした日常描写だけで読ませてくれ、エンターテインメント大作ではありませんが、渋いところをついてくれる作品でしたね。プレイ時間は3時間半くらいで選択肢はありません。ちょっと古めの恋愛映画でも見てみるつもりで、いかがですか?
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