第285回/君と歩こう、道が尽きても - 黄色いレンガの道の果て(OZZU) - ファンタジー
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第285回/君と歩こう、道が尽きても - 黄色いレンガの道の果て(OZZU)

ファンタジー
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黄色いレンガの道の果て

黄色いレンガの道の果て■制作者/OZZU(ダウンロード
■容量/267MB

主人公は、自分の名前も思い出せず、アイリアカという少女について旅を続けていた。アイリアカは、どこまでも続く黄色いレンガの道が、一体どこにたどり着くのかを知りたいらしいのだ。そして旅の途中、色んな街で色んな人と巡り会うアイリアカ達。風変わりなファンタジートラベルノベル。

ここが○

  • 自作の背景が幻想的で美しい。
  • どことなく民族風なBGM。
  • 童話のような独特の世界観。

ここが×

  • この世界観はついて来れる人と来れない人に分かれるだろう。
  • 主人公に自主性がなさすぎる。
  • なので、物語に感情移入するポイントがない。

■君と歩こう、道が尽きても

ここのところ、新作ノベルでなかなかこれという作品に巡り会えませんでしたが、久々に「おっ」と思わせてくれる個性的な作品に出会えました。不思議な感じがするタイトルですが、内容も不思議系です。主人公とヒロインが、ファンタジー世界を旅して色々な人と出会いつつ、目的地を探すという、一言で言えばそんな物語です。既存の作品から、無理やり似たところがある作品を探せば「無限夜行」とか「夢境迷宮」、「Nature Baby」でしょうか。

主人公とヒロインが旅をする世界は、かなり変わっています。中には変わっているを通り越して奇天烈な人々もいたりするので、私は「銀河鉄道999」というアニメを思い起こしてしまいました。この世界観は、この作品に強烈な個性を与えていますが、逆についていけない人も出そうな気がします。ちょっとグロテスクな表現がある箇所もありますし。ま、内容自体がグロテスクな訳ではないのですが。

まず非常に目をひくのは、独特の筆致で描かれた背景です。この背景はアクリル画だそうなんですが、描き込みの細かさと言い、柔らかい色使いと言い、非常にレベルが高く、独特の「不思議ファンタジー」の世界を際立たせてくれています。立ち絵や1枚絵はありませんが、これだけでも十分「異国旅情緒」を出す事に成功しています。

また音楽も自作だそうで、音色と言い曲調と言い、これまたファンタジック、かつエキゾチック(横文字ばかりだな(笑))。この背景と音楽がもしフリー素材だったとしたら、これだけの雰囲気は出せていなかった事でしょう。背景と音楽が物を言う事で言えば、歴代でも随一と言える作品です。

ただ、主人公がかなりの駄目人間と言いますか……(汗)。とにかく簡単に他人の口車には乗るし(それも何度も)、自分では問題を解決できないし、自主性はまるでないしで、「お前、男としてもうちょっと頑張ろうとかいう気は起きないんかい」とツッコミを入れたくなりました(苦笑)。

ノベルゲームと小説が一番違うのは、物語における主人公の位置づけです。ノベルゲームにおいて主人公は、読み手を物語世界にシンクロさせ、リンクさせるという大事な役割を担っているのです。だから、主人公の言動があまりに感情移入し辛いものだと、プレイヤーを物語に入り込みにくくしてしまいます。なればこそ、主人公のキャラクターメイキングは大切ですし、多くの作品が「誰もが経験した事がある学園生活」をテーマに取り上げるのも、そことは無関係ではないでしょう。このような現実味の薄いファンタジーの物語であれば、なおの事です。

なので、小説としてならこれでもありかも知れませんが、ノベルゲームですから、「天空の城ラピュタ」のパズーくらい……とまでは言いませんが、もうちょっと主人公が自分で自分の道を切り開ける男だったら、かなり印象が違っていたのではないかと思うのです。ラスト近くでは、主人公もなかなかの頑張りを見せるんですけど。

この作品は、論理的に伏線を積み上げ、それが最後に収束するといったタイプの物語ではありません。摩訶不思議な旅情緒を楽しみつつ、そこで経験する変わった出来事に、自分の気持ちを投影させるような、そんな作品です。その味付けを、独特の背景とBGMが絶妙に引き立てていて、独特のプレイ感覚を見せています。この感覚は、是非一度味わって欲しい気がします。

ツールは吉里吉里です。選択肢はなく、プレイ時間は2時間はかからないくらいではないかと思います。後味は、すっきりというよりは、うっすら霧がかかったようでいて、それでいてふんわり。こんな読後感の作品があっても良いと思います。
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