第289回/お願いわがまま勇者様 - 一泊二日の勇者宅訪問(Y&N) - ファンタジー
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第289回/お願いわがまま勇者様 - 一泊二日の勇者宅訪問(Y&N)

ファンタジー
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一泊二日の勇者宅訪問

一泊二日の勇者宅訪問■制作者/Y&N(ダウンロード
■容量/59.8MB

ある日コンパの後、二日酔いで目覚めた勇だが、そこは全く見知らぬ世界だった。アニメのファンタジー世界を思わせる風景に立ち往生していると、勇者だと名乗る少女が勇に近づいて来て、この世界を案内すると言う。面白い視点とすっきりしたラストが印象的な、短編物語。

ここが○

  • たたみかけるような序盤のつかみ。
  • 意外にも起伏に富んだシナリオ。
  • プロローグに繋がって終わる、技ありのラスト。

ここが×

  • インストール作業が面倒。
  • 主人公にちょっとデリカシーがない気がする。
  • 主人公がぶっ飛ばされる演出は、少々くどい。

■お願いわがまま勇者様

どうも最近新作がヒットしないので、またも古めの作品をご紹介です。2006年頃の作品で、分類すれば「異世界トリップ恋愛もの」。ヒロインが異世界からやって来る作品は結構ありますが、主人公が異世界に行ってしまう作品は、珍しいのではないでしょうか。全然毛色は違いますが、あえて言えば「遠来」に、ちょっと雰囲気が似ているかも知れません。私は「エターナルメロディ」という家庭用の恋愛シミュレーションを思い出してしまいました。

この手の作品は、例外なく「時限恋愛もの」です。つまり、主人公またはヒロインは元の世界に帰らないといけないという前提があるため、シナリオは終始「別れ」を意識しながら進むのです。そのため、上手にやらないと簡単にオチが読めたり、展開がわざとらしくなってしまう嫌いがあります。

その点この作品は、そこらのバランスが良好です。ヒロインのメーベルが勇者に選ばれたなどの独自の設定を、上手く後半の展開にも絡ませていますし、主人公とメーベルのやり取りのテンポもなかなかです(ただし、ちょっと主人公にデリカシーが欠けると感じる箇所もありましたが)。「笑いあり涙あり」と言ってしまうとちょっと大げさですが、コメディ要素にだけ偏ることなく、さりとてシリアス要素に偏ることもなく、ちょうど良い展開バランスを持った作品で、それが「異世界トリップ時限恋愛もの」(長い)というジャンルに、上手くはまっていると思います。

また、主人公がいきなりコンパの後二日酔いで、目覚めたら異世界だったという冒頭から、ヒロインとの出会い、更にはそのヒロインが魔王を倒した勇者である事が分かる辺りまでの序盤は、非常にスピーディに「つかんで」くれます。これだけやられると、嫌でも「これはちょっと読んでみようかな」と思わせられます。

終わり方は、予想通りと言えば予想通りではあるんですが、プロローグと上手く繋げて、綺麗にまとめたエピローグは技ありです。そこへ至る経緯に少し説明が欲しかった気もするんですが、思わず「上手い!」と呟いてしまうほどでした。展開バランスの上手さといい、スピーディでテンポの良いつかみといい、この作者さんは物語作りのポイントをよくご存知だなあと感じました。

ただ、見事な短編作品であるのは間違いないんですが、もう一押しが心に来なかったのです。あるいは、恋愛心情描写がほとんどないにも関わらず、「恋愛行動描写」は盛り込まれているため、「時限恋愛もの」というジャンルとしてはそれ故に心に訴えてくるものが弱かったからかも知れません。あるいは、後半のメーベルの悩みの件に、もう少し恋愛心情描写をシンクロさせてみるとか。ストレートでいいから、恋愛心情描写をもう少し盛り込んでみれば違ったのかなあと思いました。

立ち絵は線がはっきりしている独特の絵柄。ヒロインは絵柄と性格がマッチしていて、可愛らしいです。この立ち絵なら、背景はもっとビビッドな感じの加工にした方が合うかなあとも思いましたが、上手くファンタジー風の雰囲気を出せており、これはこれで悪くありません。

システムはLive Makerなのですが、インストール作業を要求されます。これはちょっとマイナス要素ですね……。しかし、少し変わった短編作品として、プレイしてみる価値がある一作です。あとほんの一押しがあれば「準推薦」にしていました。プレイ時間は45分くらいで、選択肢はありません。読後感の良さは短編恋愛ものでも屈指の見事さですから、「ちょっと短い物語を読んで、ハッピーになりたいな」と思われたら、この作品は打ってつけです。
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