第295回/少年は少し、大人になった - As One(絵描きの巣靴) - シリアス・感動系
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第295回/少年は少し、大人になった - As One(絵描きの巣靴)

シリアス・感動系
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As One

As One準推薦
■制作者/絵描きの巣靴(ダウンロード
■容量/153MB

あさみと宗谷は姉弟のように仲が良い親戚同士。ある日船で夜釣りに出かけた2人だが、嵐に巻き込まれて無人島に打ち上げられた。現在地も分からず、途方にくれる2人は、果たして無事無人島から脱出できるのか。上手い構成と意表をつくラストが印象的な、少年の成長物語。

ここが○

  • ラストの意外さを際立たせる作りのよさ。
  • あさみと宗谷の微妙な関係の描き方。
  • 余韻を引くラストシーンの綺麗さ。

ここが×

  • テキストウィンドウの表示速度など、全体にテンポが良くない。
  • 安直な気がするバッドエンド。
  • 脱出に至るところが、少し淡白な気がしなくも。

■少年は少し、大人になった

短編作品は私も作ったことがありますが、ある意味長編を作るより難しいものです。それなりに意外性を持たせ、不条理にならないように伏線を張って、ということになると、長編以上の構成力が求められます。この作品は、構成力の妙でよくある材料を上手く料理し、短いながらも立派に読ませてくれる作品でした。「As One」のご紹介。

出だしからまず印象的です。主人公の2人、あさみと宗谷が無人島に流されたところから始まるという、インパクトのあるオープニング。2人は親戚同士なのですが、この2人の描き方が非常にいいですね。適度にコミカルでデフォルメが効いており、また恋愛でもなく家族愛でもない微妙な関係が、とてもよく描けています。絵柄はいわゆる「萌え系」ではありませんが、個性的で表情の変化も面白く、少年少女の物語にはぴったりはまっていると思います。

As Oneこの作品の仕掛けの部分についてはもちろん書きませんが、仕掛けそれ自体は割と使い古されたパターンです。既存の作品でも、似たような仕掛けを持った作品は複数本存在するでしょう。しかし、その仕掛けに読み手の意識が向かないような作りが大変巧妙です。ラストになってから、「ああそういう事か!」となりました。これぞミスディレクションの粋ですね。

また、仕掛けを明かされても、唐突感がないのは、ちゃんと短いシナリオの中に伏線が丁寧に張られているからでしょう。見事なキャラクターメイキングと上手い作りで30分というプレイ時間を感じさせない、良い意味で濃厚感のある物語を楽しませてくれます。

難点ですが、バッドエンドが少々安直な気がします。選択肢は2つあるんですが、どちらもミスると即死です。しかも、実に分かりやすい即死と言いますか……(笑)。あれなら一本道でも良かった気がするのですが。それと、脱出するところは宗谷が見事な機転を効かせる訳ですが、ここにもう一捻りがあればと思いました。「宗谷、いつの間に!?」という感じでしたから(笑)。全体に作りの上手さに感心させられた今作で、そこだけは唯一「流れの早さ」を感じたのです。

それと、場面転換のフェードイン/アウトとか、テキストウィンドウの表示速度、それに立ち絵の表示速度などが妙にもったりしていて、ちょっとテンポを損なっている気がします。短い物語ですが、短いからこそ気になる点でもあります。でも、山口県民ならおなじみの、知っている地名が出て来たので、ちょっと親近感が沸きました。

それにしても、この物語の主人公の2人、あさみと宗谷の心の交流がとても暖かいです。中盤辺りにも名シーンがあるのですが、やはりラストでしょうね。序盤からどこか頼りなかった宗谷が、成長したところを見せてくれる辺りは、心に響くものがあります。短編ノベルとしては、会心のクリーンヒットと言って良い作品だと思います。

ところで、この作品は2人が島に打ち上げられたところから始まるというのは書きましたが、2人はずぶぬれなため、すぐ服を脱いでしまい、前半はずっと主人公達が下着姿のまま物語が進むという、過去に類例を見ない作品となっております(笑)。ちょっとのけぞりました(汗)。

ツールはLive Makerで、プレイ時間は30分。選択肢は上に書いた通り2カ所です。主人公達の暖かい交流と、全編から感じるノスタルジー。冒険ものかと思いきや、実は少年の成長物語。記録よりも記憶に残るタイプの作品です。読後感のタイプとしては「それじゃあ、またね」に近いものがありますので、ああいう作品が好きな方ならば、きっと気に入るでしょう。是非お試しあれ。
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