第296回/空と煙草とお父さん - 空の果てから(たけこけかまきり) - 不思議系
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第296回/空と煙草とお父さん - 空の果てから(たけこけかまきり)

不思議系
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空の果てから

空の果てから■制作者/たけこけかまきり(ダウンロード
■容量/26.9MB

男が目を覚ますと、見慣れない部屋の中だった。しかも、何か様子がおかしい。何とか事態を打破しようとしているうちに、部屋の主が帰って来て男は仰天する。やって来たのは巨大な少女。自分の体は熊のぬいぐるみになってしまっていたのだ。少女と男の心温まる短編ノベル。

ここが○

  • 夕焼けの色合いが似合うしんみり加減。
  • 男と少女の、適度に噛み合った和む関係。
  • 意外にも重いテーマ。

ここが×

  • 突然ぶつっと終わってしまう。
  • 演出面に難があるような気がする。
  • 過去と現在が上手くリンクしていない。

■空と煙草とお父さん

今回も短編作品のご紹介です。最近なかなか長編をプレイする時間がないのです。興味がある作品はあれこれあるので、時間ができ次第レビューしたいなとは思ってるのですが……。最近めっきりレビューサイトも減って来ているようですが、何とか最後の牙城(?)を守れるよう、頑張ります。

さてこの作品ですが、主人公が目を覚ましたら熊のぬいぐるみになっており、部屋の主である小学生の少女まゆと鉢合わせするところから話が始まります。出だしの描写が少々くどい気もしますが、つかみとしては上々だと思います。こういう作品の場合、大抵主人公というか、語り手は少女の側になるものですが、この作品はぬいぐるみが主人公という時点で、一風変わったところを見せてくれます。こういう作品って、ありそうで意外とないですよね。

空の果てからそして、ぬいぐるみと少女の交流を通じ、過去の出来事等も含めて話は進行していきます。このぬいぐるみ、まゆとの絡みもなかなか面白いのですが、とある設定というか前提からして、「ハブられる」なんて言葉を使うのは、どう考えてもおかしいような気がするのは私だけでしょうか(汗)。

また、過去の出来事についてが物語の核を形成しており、ラストでそれが現在と繋がるという作りの物語ですが、そのリンクのしかたにちょっと難があるというか……。読み手は途中で「あ、これは過去の事実と現在の事実が最後につながるんだな」というのは、物語の作りからして分かるのですが、ラストでリンクさせるなら、途中でもう少し過去の描写を細やかにした方が良かったと思いますし、一方で現在の側にも何かしらの伏線と言いますか、「痕跡」みたいなものを置いて欲しかったような気がします。

痕跡とか言ってしまうとよく分かりませんが、この手の「過去が現在に繋がる」タイプの物語の場合、人だけでなく物においても過去と現在の繋がりを持たせる事で、物語に厚みを持たせられるはずです。そしてこの物語で重要な役割を果たすぬいぐるみに、何か過去において重要な役割を持たせていれば、ラストでの感銘がもっと大きくなったのではないかなあと。あるいは、まゆの父親とか母親を、何らかの形でもっと絡ませてみるとか(サイクリングの件とか……)。キャラのやり取りとか、基本的なラインにはとても好感が持てる物語だけに、少し気になるところです。全般的に、「何故こういう事になったのか」という部分は、放置されていますし(汗)。

しかし、中盤からの夕焼けの赤を基調とした色使いが、全体の雰囲気にとてもマッチしており、後半は雰囲気を高めてくれています。要素の盛り込み具合に一工夫が欲しかった感は否めませんが、「盛り込まれた要素を読み手に提示するタイミング」という点では、優れた点を持っていると思います。もっと尺の長い物語を作られれば、この作者さんの持ち味が十分に生きるのではないかと感じました。

ただ、演出周りと言いますか、例えば何故か最初と最後にタイトルロールが2回出て来たり、タイトル画面がやけに寂しかったり、エンド画面でそのまま止まってしまったり、少し作りが投げやり(?)なところがあったりします。この作品は「しんみり系」ですから、そこらにも少しこだわりがあれば、印象が違ったのでは。

テーマは重いのですが、軽口を叩く主人公と、天真爛漫ながら頭が良いまゆのコンビネーションがよく、さらっと語らせた上で物語も楽しませるという面で、「気軽に楽しめるしんみり系」という、なかなか他に類を見ない作品に仕上がっています。テーマの深いところは語りませんが、こういう切り口でこのテーマを盛り込み、この長さで仕上げるところに、作者さんのセンスを感じました。

ツールは吉里吉里、選択肢はなく、プレイ時間は20~30分です。もっと尺を長くして、感動させようと思ったらいくらでも感動ものに仕立て上げられる物語であるとは思いますが、逆に短編で、これくらいさらっと流した節度感が、この作品の美点かも知れません。
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