第301回/きてよピーマン - 僕らのピーマン(青い鳥劇団) - 日常
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第301回/きてよピーマン - 僕らのピーマン(青い鳥劇団)

日常
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僕らのピーマン

僕らのピーマン準推薦
■制作者/青い鳥劇団(ダウンロード
■容量/71.6MB

タイガは、栃木の田舎で育てられて、今日スーパーの店頭に並べられたばかりの新入りピーマン。野菜棚には先輩ピーマンや長老格のじいさんピーマン、マドンナ的存在のパプリカ、それにいやみったらしいナスなどが並べられ、騒がしい毎日。ピーマンの味のように少しほろ苦い、斬新な野菜ノベル。

ここが○

  • なぜかぴったりとハマっている野菜キャラ。
  • 素っ気なさが生み出す不思議な感覚。
  • この尺で見事なバランス感覚。

ここが×

  • 舞台が動かないので、仕方ないとは言え少々単調。
  • ラストにもう一押し、一捻りがあれば良かった。
  • 演出等が素っ気なさ過ぎる。

■きてよピーマン

製作作業も一段落ついたので、またレビューのペースを戻せればと思っていたら、非常にユニークな作品を見つけました。タイトルからして変わっていますが、主人公が何故かピーマンという、前代未聞の物語です。学校生活ノベルなら星の数ほどありますが、「野菜生活ノベル」なんて、後にも先にもこの作品の他はないでしょう(笑)。

この作品は、店先に並べられたばかりの新人(新菜か?)ピーマンが主人公。名前は「タイガ」です。ピーマンは好き嫌いが激しい野菜ですが、それにしても野菜ですから当然いつかは人に買われて行く運命にあります。そんなスーパー野菜売り場の、出会いと別れの物語を描いた短編ストーリーです。

僕らのピーマン登場人物ならぬ「登場菜物」は、タイガの他には冒頭で捨てられてしまう「アニキ」や先輩ピーマンの「大トロ」、長老格のじいさんピーマン、野菜売り場のマドンナであるパプリカ、ライバル野菜のナス、それにヒロイン(?)の「ちぃちゃん」です。キャラクターの性格分けが上手く、野菜である事を上手く利用した展開が、物語にハマっています。

これが、もし普通の人間を使った学園ドラマだったりしたら、展開が早過ぎると感じたり、少々わざとらしく感じるところもあったに違いありません。しかし、何せ数日の間に買われて行くピーマンが主人公なのです。ですから、飛ばしめの展開ではありますが、不自然さを不思議と感じないのです。タイトルだけ見たら何事かと思うような作品ですが、テーマ選びとシナリオ作りが連係して良い作用を生み出していますね。

特に、中盤のちぃちゃんとのエピソードは、何だか胸があったかく、そして切なくなります。通常のいわゆる「ハートウォーミングドラマ」だと、この尺でこういう出会いと別れを描くのは非常に難しいものですが、素材と上手くマッチして、とても良いシーンになっていたと思います。中でも、タイガとちぃちゃんの突然の別れの描き方が上手かったですね。このシーンで準推薦を決めたと言っても過言ではありません。別れの決意を決めたタイガ、しかし彼の意に反してやってくる予想外の別れ……。良いシーンです。その後に来るナスとのエピソードも効いています。

惜しむらくは、ラストがあまりにもぶつ切りのように終わってしまうという事です。せっかく長老格のピーマンとの対話で、オチを持って来るには最適な前振りがなされたのですから、あの描写や台詞を生かして綺麗なラストが描ければなあと思いました。エンドロールも何もなく、そのまま画面がフリーズしたかのように停止してしまうだけに、なおの事そう感じますね。また、背景画像はたったの2種類しかなく、演出も非常に寂しい感じがします。舞台がスーパーの野菜売り場だけですから多彩な背景を使う必要はないでしょうが、大事な場面ではもう一工夫があっても良かったかも知れません。

しかし、その「素っ気なさ」がキャラクターや舞台、物語と上手くマッチして、何とも言えない雰囲気を醸し出しているのも、また事実です。これが例えばピーマンを擬人化した立ち絵や1枚絵があったりしたら、この独特のほろ苦い余韻は、もしかしたらなかったかも分かりません。そう考えると、この作りこそがこの作品にあっているのかな、とも思います。

ツールは吉里吉里、プレイ時間は20分かからないと思います。選択肢はありません。すぐ読める作品ですが、こういう作品は飛ばして読むのではなく、情景を想像しながらゆっくり読み進めたいものです。よくある学園恋愛ノベルとはひと味違った、一風変わった感覚を味わえることでしょう。ピーマンの旬は若干過ぎてしまいましたが、是非軽くプレイしてみてください。
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