第304回/左前の君を追いかけて - 左前の彼女(alpha) - 学園・青春
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第304回/左前の君を追いかけて - 左前の彼女(alpha)

学園・青春
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左前の彼女

左前の彼女準推薦
■制作者/alpha(ダウンロード
■容量/30.6MB

向井良樹は、引っ込み思案で何の取り柄もない高校生。ある日新学期のホームルームで、委員長に立候補した坂井奈津から、彼はいきなり副委員長に指命される。やがて2人は、夏休み明けの文化祭へ向けて準備を進め始める。シンプルながら細部まで作り込まれた学園ノベル。

ここが○

  • 立ち絵は1人しかないが、よく作り込まれたキャラクター。
  • 展開に捻りはないが、細部まで考えて作られている展開。
  • ちょっとしたお笑いネタが良いスパイスになっている。

ここが×

  • テキストウィンドウが見にくい。
  • 心情描写にもう少し踏み込みが欲しい。
  • 少々展開が一本調子。

■左前の君を追いかけて

正統派の展開、よくある舞台を使った作品って、実はそれなりのクオリティに仕上げて、人目に留まるクオリティにするのは、かなり大変です。そんな中、この作品は絵ではなく、テキストの力で、よくある材料を美味しく料理した好例と言えましょう。「君の道、僕の道」の作者さんによる作品ですが、等身大で小気味良い日常会話は健在なれど、細部が色々と進化しており、楽しめる作品でした。

作品の舞台は高校で、主人公は特に取り柄もなく、自分に自信が持てない平凡な少年です。ただ、この手の作品でよくある中二病をこじらせたようなところもなく、またコミュニケーション障害と思わせるほど頭のネジが吹っ飛んだところもなく、他人から言われた事は素直に反省し、また100%には至らないまでも、真面目に努力する事ができる男です。

左前の彼女もちろん、ちょっと押しが足りないなと思わせられるところもあるんですが、主人公良樹の、不器用ながら何とか頑張ろうとする姿が微笑ましく、とても共感を持って読む事ができました。何より、要所要所で彼はちゃんと自分で行動しますし、最後もちゃんと締めてくれています。よく出来た主人公だと思います。

また、主人公の脇を固めるサブキャラがよく作られています。ヒロインの奈津は強気な少女ですが、嫌みなところがなく、良樹とのコンビもよく噛み合っています。立ち絵が出て来るのは奈津だけですが、立ち絵がないその他のクラスメイトも、ネーミングこそ怪しいですが(笑)、個性的で魅力があります。島上にしても田中にしても英子にしても、それほど物語に大きく関わる訳ではないんですが、存在感があるキャラですよね。

思うに、シナリオを作るのに「物語主導型」と「キャラクター主導型」があるとしたら、この作品は疑いなく後者です。シナリオとしては、大きな出来事は別に起こっていませんし、舞台もほとんど動きません。良樹と奈津が、よくある普通の目標に向かって頑張って、紆余曲折がありながらもだんだんクラスがまとまっていき、最後のちょっとしたトラブルを主人公がこれまたちょっとした事で解決する、と。実に「ささやかな」物語です。

しかし、そのささやかな日常の物語を彩る登場キャラクターの各々の距離感、世界に占めている位置感がよく出来ており、非常に楽しく読める作品に仕上がっています。それほど起伏が大きいとは言えない、ある意味一本調子な物語を、キャラクターだけでこれだけ読ませるというのは、なかなか出来るものではありません。特にラスト近く、良樹が奈津を助けようと発する一言には、彼の成長が感じさせられて、心に残りました。

通常この手の「学園ラブコメ」で、コメディの部分は主人公とヒロインのかけあいが担うものですが、今作では主人公とヒロインは、終始まっとうなやり取りしかしません。そこにところどころテレビショッピングとか、田中の妹とか、園芸委員会とか、じい子さんとかのネタが入るから、実にタイミング良く「緩む」んですよね。普通に書けば一本調子になりがちな物語に、謎とかどんでん返しを使わずに起伏をつける。見事なセンスだと思います。

ただ、恋愛ものとして見ると、もう一捻りが欲しい感は否めません。奈津が良樹を副委員長に指名した理由とか、2人が惹かれ合う理由などを、もう少し絡めてみたりしてみても面白かったんじゃないでしょうか。逆に、そういう要素抜きでこれだけ読ませるのですから、大したものだなと思わされるのですが。それと、テキストウィンドウの透過率が高い上に、色が赤なので、ずっと見ているとちょっと目が疲れます。透過率を低くするか、もう少し目に優しい色にした方が良かったかも知れません。

ツールはYU-RIS。プレイ時間は1時間半くらいで選択肢はありません。よくある材料を巧みなセンスで料理し、それでいて作者さんの個性が随所に光る作りの学園ノベルです。次回作にも注目してみたいですね。
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