第309回/命を削って、命を繋ぐ - ユーマを抱きしめて(UHMA Project) - シリアス・感動系
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第309回/命を削って、命を繋ぐ - ユーマを抱きしめて(UHMA Project)

シリアス・感動系
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ユーマを抱きしめて

ユーマを抱きしめて準推薦
■制作者/UHMA Project(ダウンロード
■容量/487MB

永宮玲奈は高校1年生だが、クラスの誰とも関わろうとしない。学校もよく休むし、体育の授業は必ず欠席する。もうすぐ修学旅行だと言うのに、参加するつもりもないらしい。彼女には、何やら大きな秘密があるようなのだが。全ての面でクオリティの高さに腰を抜かす有名作。

ここが○

  • 背景と言い1枚絵といい、グラフィックスの質の高さには驚くばかり。
  • 長さを感じさせない展開で、一気に読める。
  • 味のある男性キャラが、物語を下支えしている。

ここが×

  • 頻繁な視点変更で、物語の主軸がぶれてしまった感あり。
  • にも関わらず、プロットは意外にも単純でラストもあっさりなので、読後の満足感に欠ける。
  • 一人称だが、とても高校生とは思えない単語が頻発する。

■命を削って、命を繋ぐ

私はどちらかと言いますと、「誰も目を向けないような地味な作品」をプレイするのが好きです。なので、こういう有名作品はどうしても、取り上げるのが遅くなります。掲示板でも多くの人に散々お勧めされて来たのですが、さすがにレビューサイトの端くれとして、この作品を取り上げていないのもどうかと思い、この度ようやく記事を書く事にしました。「ユーマを抱きしめて」です。

まずこの作品で驚かされるのは、その圧倒的なビジュアル面でのクオリティです。オープニングムービーは歌付きで出来映えも素晴らしいですし、背景画像も凄いです。ただ綺麗なだけじゃなくて、色使いなども含めて、立ち絵と非常にマッチしているんですよね。立ち絵も、彩度が低めの水彩画風の塗りが、作品世界のイメージにぴったり合っています。アニメ風の動きやスクロールを多用した演出は好みが分かれるかも知れませんが、こと映像面に関して言えば、フリーでこれほどの作品はなかなかないでしょう。

ユーマを抱きしめてさて、主人公は玲奈という女子高生です。まず冒頭、幼少時の玲奈の様子が描写されます。これを見る限り、玲奈が人並みはずれた怪力を持っているらしい事が分かります。この玲奈の秘密を軸として、高校の仲間たちとの交流なども交えて展開していく物語です。プレイする前はもっとSFっぽい物語かと思っていましたが、実は割と普通の学園ものです。

そういう観点から物語を見ると、キャラクター同士の掛け合いは非常によく描かれています。特に、クラス委員長を務める藤崎が、良いポジションのキャラクターですね。この手の男性サブキャラとしては、不器用ながらも空気が読める、非常に「できる男」です(笑)。

反面、この物語のメインとなる「UHMA」という点に着目すると、ちょっと説明が足りないところがあるのは、否定できません。玲奈の母親についての描写もほとんどありませんし、そもそも「UHMA」という疾患に対する描写も、少しあやふやで具体性に欠けるところがあります。なので、ある意味「不治の病もの」に分類される物語ではあるのですが、この観点から見ると、物語に説得力が不足している気がするのです。それが顕著に表れているのが、ラストです。あれだけの物語のオチが、「手術を受ける」だけであっさりとついてしまうのは……。最初から素直に手術受けてれば良かったのに、これじゃ単なる玲奈の壮大なわがままストーリーじゃないか、と(笑)。

もう1つ。この作品は章立てで物語が進行し、章ごとに一人称の語り手が変わります。が、語り手が誰になっても、いわゆる地の文の印象がほとんど変わらないのです。かつ「こんな言葉を女子高生が使うか普通!?」という単語(「睥睨」とか)も結構でてきます。また、メインテーマははっきりしているんですが、複数視点からのザッピングで、他のキャラとの関わりを強調した結果、上に書いた点も合わせて、最後まで読んだ時の、一本どっしりと筋が通った感じの読後感が弱いのです。

これならいっそ、文章を三人称にするか、あるいは貴由なら貴由、藤崎なら藤崎と、メインになる人物を1人据えた方が、全体が整ったのではないかと思います。部分部分を見ると、非常に良くできた箇所や目をひく描写も多いのですが……。

それでも、後半の展開には目を見張らされます。後半からラストへかけての盛り上がりは、一番の見所でしょう。大きなイベントが2つ立て続けに襲いかかって来て、更に全てのキャラクターが万遍なく絡んで来て、なるほどこう来るかと思わされました。1つ目の事件だけなら普通なんですが、2つ目の事件を持って来たところが上手いですね。

ただ、ここまで来ると容易にその先が読めてしまうんですよね。まあ読めても盛り上がる描写力は作者さんの上手さだと思いますが、そうなると今度はオチのあっけなさが惜しい、という無限ループに(汗)。それにしても、藤崎はここでも見せてくれます。藤崎もですが、最初に登場する警部も、意外なところで美味しいところを持って行きますね。藤崎と言い警部と言い、渋い役どころで物語を下支えしてくれています。

ツールは吉里吉里で、選択肢はありません。プレイ時間は普通に読んで2時間半、フルボイスをじっくり聴けば3時間超えるでしょう。あまり長さを感じずに一気に読める作品です。終わり方がちょっとあっけない感じはしますが、とにかく細部まで手がかかった力作です。一見の価値はあると思います。
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