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第317回/涙背負って宇宙の始末 - おはよう、ラァビィ(フォーチュンベル)

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おはよう、ラァビィ

おはよう、ラァビィ■制作者/フォーチュンベル(ダウンロード
■容量/3.68MB

ヴォーリス・トラインは1週間の宇宙船の旅に出ていた。その宇宙船には、ラァビィという名の、兎耳の亜人種がスタッフとして同情していた。ラァビィに娘のような感覚を覚えていたヴォーリスだが、ある日……。音も絵もほとんどないながら作りの良さに驚く短編ノベル。

ここが○

  • 主人公の独白のみで成り立っているという驚き。
  • 音も絵もほとんどないという驚き。
  • これだけ短いのにシナリオの作りが良いという驚き。

ここが×

  • 会話がないのは、やっぱりちょっと地味。
  • 音も絵もないのは、やっぱりちょっと地味。
  • 読後にもう少し爽快感が欲しかった気が。

■涙背負って宇宙の始末

ノベルゲームというのは、文章、音、絵の3つで主に成り立っていますが、言うまでもなくその中で一番大事なのは文章です。音や絵はなくてもノベルゲームとして成り立ちますが、文章はそうは行きません。とは言え、音や絵も大事な要素であり、それがないとどうにも淡白に感じるのもまた事実です。「Liar~鈴菜編」は代表的な例です。

しかるにこの作品は、絵も音もほとんど取っ払ってしまっています。「Liar」はまだ立ち絵がありましたが、立ち絵すらもありません。ではこの作品が味気のない作品になってしまっているかと言うと、全くそんな事はなく、かえって作品の雰囲気を増している気すら感じますから、面白いものです。「ユウレイのいた道」の作者さんによる新作です。音も絵もほとんどないため、昨今では珍しい小容量です。

おはよう、ラァビィ舞台は未来世界の宇宙船です。主人公は1週間の宇宙船の旅に出ますが、彼の手記という形で物語は綴られます。そのため、音や絵がないどころか、主人公以外が発する言葉すら作中には出て来ません。あくまで主人公の表現として出て来るだけです。この語り口が、ある意味絵や音がなく、背景は日記風の罫線だけという演出にマッチしていると言えましょう。

短編ではありますが、物語は中盤から急展開を見せ、緊迫感もかなりのものです。その緊迫感や極限状態も、いたずらに描写を煽る事はなく、主人公の目を通して淡々と描かれるため、かえって読む側の恐怖心や緊張感を増幅させているのは、さすがと思わされます。その後に来る衝撃的なラストシーンには、思わずうーむと唸らされました。

ただ、これも一種の演出法とは言え、音や絵が一切ないのは、ノベルゲームとして見ればやはりちょっと寂しい感じがするのは否定できません。重要なシーンではちょっと演出に凝ってみれば、効果も倍増したのではないでしょうか。ま、この作品はごく短編ですからこの演出法もありなのかも知れませんが。

しかし、プレイ時間20分程度の短編で、これだけきちんと流れを作って、しっかりしたオチに持って行ったというシナリオの作りは見事だと思います。この長さで、きちんと起承転結(あるいは序破急と言っても良い)がついています。私は常々、「長編作には細かい流れが必要。短編作には大きな流れが必要。長編は短編のように、短編は長編のように書かねばならない」と思っていますが、まさに「長編のように作られた短編」と言う事ができると思います。

これだけの作りのシナリオですから、もっと尺を伸ばして、せめて1時間くらいの物語にすれば、もっと面白くなり、綺麗な読後感のオチもつけられたような気がしますが、そうすると現状の演出手法で1時間を読ませるのは厳しくなる訳で、この演出法ならこの長さが、ある意味ベストと言う事もできますね。

読後感は爽やかとは言い難いですが、色々考えさせられる物語です。また、終始地味な演出があるからこそ、最後タイトルに戻った時の不意の一撃が効いています。尺がもうちょっと長くて、もう一押しがあれば「準推薦」をつけたい作品でした(最後まで準推薦にするかどうか迷ったのです)。

上にも書いたように、プレイ時間は20分程度。ツールはNScripterで選択肢はありません。ヒロインの台詞が全く出て来ない作品というのも珍しいですが、台詞がないのにこれだけ存在感があるヒロインというのも、また希有だと思います。軽い気持ちで読んでみてください。
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