第319回/最初の一歩は無限大 - 引きこもりと女子中学生(はとごろTIMES) - 日常
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第319回/最初の一歩は無限大 - 引きこもりと女子中学生(はとごろTIMES)

日常
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引きこもりと女子中学生

引きこもりと女子中学生準推薦
■制作者/はとごろTIMES(ダウンロード
■容量/24.1MB

主人公は、過去に起きたある事件がきっかけで、極度の対人恐怖症に陥り、引きこもり生活を続けていた。ある日彼のアパートの前に、見知らぬ女子中学生が立っている。とても話しかける事ができない彼に、少女の方から声をかけてきた。面白い切り口の短編成長物語。

ここが○

  • 主人公の成長がしっかり描けている。
  • その主人公の成長が、シナリオとしっかり絡んでいる。
  • 主人公とヒロインのコンビが魅力的。

ここが×

  • 過去の事件に少し説得力のなさを感じなくもない。
  • ヒロインの苦悩が、もうちょっと描けていても良かったのでは。
  • いささか余韻に欠ける感のある終わり方。

■最初の一歩は無限大

主人公がニートであるとか、人との関わりを極端に嫌う物語というのは、例えば「にぃにぃ☆にぃとだうん」とか「冥王星と透明少女」などがありますが、前者はあまり悲壮感を感じず、後者はまだ普通に日常生活は送れるレベルでした。しかし今作の主人公は、本当に全く他人と関わる事ができないという意味で、開始早々から強烈な印象を与えてくれます。「引きこもりと女子中学生」。ストレートなタイトルです。

そんな主人公のアパートの前に、見知らぬ女子中学生が立っているところから物語がスタートします。この時の主人公の焦り具合は半端ではなく、見ていて痛々しくなるほど。そして、物語は主人公と少女の交流を軸に、それほど大きな起伏もなく進んでいきます。

引きこもりと女子中学生なので、普通の「交流もの」かと思っていたら、意外や意外、物語は中盤から一気に動き始めます。勘が鋭い人なら、中盤辺りで「待てよ、もしかしたら」と読めるかも知れません。私も実は展開が読めてしまいました。ですが、中盤から後半への繋ぎ方、そこでの主人公の変わり方の描き方が良く、中盤の展開を支えているのは、上手い点です。

さて、この作品の登場人物は主に、引きこもりで超対人恐怖症である主人公と、おしゃべりだけど礼儀正しい女子中学生の2人ですが、この2人のコンビネーションが良いですね。こういう作品を一人称で語ると、ともすれば主人公の鬱々とした描写がくどくなりすぎがちなんですが、そこをヒロインが上手に繋いで空気を和らげています。良いキャラクターだと思います。

この作品、途中まで見ていたら、恋愛物語に流れてもおかしくなさそうな展開もするんですが、意外にも恋愛風味の展開は見せません。しかし、そこがある意味節度のきいたところではないでしょうか。何と言いますか上品さを感じさせるのです。短編作ですから、恋愛まで盛り込んでしまったら、この作品で一番語るべきポイントがぼやけてしまったに違いありません。

その意味で、主人公(とヒロイン)の交流と成長に的を絞って物語を描いたのは、私は成功していると思います。ラストシーンは、未来への希望も感じさせてくれますし、何より主人公の成長の姿が非常に微笑ましいですね。中盤から後半の展開の上手さからすると、終わり方にはもう一歩踏み込んだ描写があっても良かったのかな、と思わなくもないんですが、そこは読者でご想像くださいという事でしょう。

ただ、エンディングが何もなく「END」と表示されたら後はタイトルに戻るだけなので、せっかくの余韻が薄れてしまっている気がするのは、ちょっと残念です。それと、主人公が対人恐怖症になる原因となった過去の事件ですが、少し説得力を欠くような気がしなくも……。あとは、女子中学生の苦悩がもうちょっと全面に出ていても良かった気もします。中盤の事件でいきなりという感じですから。主人公にしてもヒロインにしても、その辺りの描写はもう少しあっても良かったかも知れません。

短編としては非常に独特の切り口で、ちゃんと主人公もヒロインも前に進む事ができ、読後感も爽やかです。冒頭の主人公のテンパりぶりに、「何だこいつは?」とひいてしまう人がいるかも知れませんが、的を絞ってずばっとツボをついてくれる作りは、センスを感じさせます。

ツールはLive Makerで、プレイ時間は30分弱。選択肢はありません。立ち絵は可愛らしいですが、良い意味で「媚びない」ヒロインと、何とか前に進もうともがく主人公の暖かいやり取りが魅力的。前へ進む勇気が欲しいという方、是非読んでみてください。
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