第323回/公園でハローグッバイ - 健二と幼木の精霊(不思議ノベル制作部) - ファンタジー
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第323回/公園でハローグッバイ - 健二と幼木の精霊(不思議ノベル制作部)

ファンタジー
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健二と幼木の精霊

健二と幼木の精霊■制作者/不思議ノベル制作部(ダウンロード
■容量/23.0MB

健二は、公園で友達と缶蹴りをしていたが、鬼役のジュンは手強く、逃げ回るうちにいつの間にか兄から「入るな」と言われていた森に足を踏み入れた。森の中で道に迷った健二の前に現れたのは、頭に角が生えた少女。バケモノと思い怖じ気づく健二だが。不思議系ファンタジー短編ノベル。

ここが○

  • 健二とミルテのコミカルなやり取り。
  • 結構緊迫感がある後半の展開。
  • ハッピーエンドで安心した。

ここが×

  • ハッピーエンドはいいが、逆に余韻に欠ける終わり方。
  • 何だか過剰に反応し過ぎの気もする健二。
  • オチへの持って行き方には、一工夫が欲しい。

■公園でハローグッバイ

久々のレビューは、リハビリ代わりに(?)短編作品を取り上げました。この作者さんは、以前にも主人公が黒板だったり、かなり変わった雰囲気の作品をリリースされていますが、この作品は意外にも正統派な作りの物語です。いわゆるボーイミーツガールものですね。直前に取り上げた「桜砂糖」と同じく、主人公が変わったヒロインと出会ってから別れるまでを描いた、スタンダードなタイプです。

この作品は、主人公が小学生くらいとして描かれているため(そう明記はされてませんが、小学生じゃないと缶蹴りはやらないでしょう)、主人公の言動が直接的というか、幼い感じがします。逆に言えば年齢相応のキャラクターとして描けていると言えますし、この主人公が、やたらと嘘をつきまくるけどどこか憎めない、ヒロインのミルテとよくマッチしているように感じました。

健二と幼木の精霊物語は、主人公が缶蹴りの最中に、鬼役の子から逃げようと、公園の奥の森に逃げ込むというところから始まります。主人公が子供ならではの展開ですね。そして迷ったところで、自称木の精霊のミルテと出会うという筋書きでストーリーは進みます。

実は冒頭で、「森の奥には頭に角が生えた化け物がいて、人間を食べてしまう。だからそいつに出会ったらすぐに逃げろ」という兄からの言い聞かせが入っています。この設定は後半でちゃんと生きて来ますが、この設定の割に中盤までは妙にのんびりふわふわのムードです。

ミルテたちの「セカイ」に関する話も途中でちょっと出て来るので、後半の展開を生かすためにも、もうちょっと緊張感を出すような作りにしても良かったのではないでしょうか。とは言え、「ちょっと不思議ないい話」辺りがこの作品の目指す雰囲気かと思われますので、これはこれで一つのやり方なのかも知れません。

さて、後半で物語は割と分かり易い方向へ動いていきます。そして、ラストのオチは実は何の捻りもありません。なのですが、後半とオチの間にちょっとした捻りを入れる事で、短編としては十分なアクセントをつける事に成功していると思います。捻った結果、あらぬ方向に物語が動いて意外なオチが付く訳ではなく、捻って、捻り戻した結果、元の方向に物語が戻って来たという感じではあるんですが(笑)、捻らずに着地するのとは読み手に与える印象が大分違いますからね。

ただ、ラストが綺麗にまとまったのはいいんですが、まとまりすぎて余韻に欠けるのは否めないところです。この点、(後半とラストの間の捻り、という要素の問題も合わせて)「桜砂糖」とはある意味実に対照的な物語であると言えます。エンディングというより、長編ノベルのプロローグみたいな感じなんですよね。ラストの後、ムービーが入ってもあんまり違和感がないかも知れません(笑)。

しかし、物語は何でもかんでも意外なオチがつけばいいというものでもありません。強い印象は残さないものの、お腹にやさしく消化できて、飽きない味わい。料理にたとえればこの作品はそういう風に言えましょう。ここぞという時に食べるにはいささか物足りない感があっても、日頃気軽に食べられて好き嫌いも分かれない作品。珍味ばかり食べ歩いて食傷気味の時は、案外こういう「普通の味」に戻ると、新鮮に感じられるものです。

ツールは吉里吉里で、プレイ時間は30分程度です。選択肢はありますが、ミルテの反応を楽しむためのもので、分岐はありません。ある意味では「意外なオチ」がつくとも言えるこの作品。「普通っぽい普通」ではなく、「捻っているぽくて捻っている」のでもない、「捻ってるっぽいけど、普通」というのは、この作品ならではの味わいだと思います。
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