第330回/迷っても、ハートに帰る血流路 - 動脈と静脈(オザキショウゴ) - 伝奇
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第330回/迷っても、ハートに帰る血流路 - 動脈と静脈(オザキショウゴ)

伝奇
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動脈と静脈

動脈と静脈準推薦
■制作者/オザキショウゴ(ダウンロード
■容量/798MB

癌を患って余命3年と宣告された松岡智子は、死ぬ前に日本全国を見てみたいと、放浪の旅を続けていた。ある時、ふと立ち寄った田舎町で、奇妙だが人懐っこい少年と出会う。少年は智子に、自分の家に泊まるように勧めるが。意外な展開で読み応えのある長編ノベルゲーム。

ここが○

  • 意外で驚きのある展開。
  • 焦点を当てるキャラがそれぞれ違う3本のシナリオ。
  • 多彩で個性豊かなキャラクター達。

ここが×

  • 日本語が妙な箇所が多い。
  • 描写がネガティブすぎて疲れる箇所が多い。
  • ウェイトが多すぎてテンポを損なっている箇所が多い。

■迷っても、ハートに帰る血流路

久々に、かなりの長編作品をご紹介します。最近は短編作が多かったですが、時々はやはりずっしりと読み応えのある長編作も読みたくなります。タイトルも変わっています。「動脈と静脈」。このタイトルの意味は、とあるシナリオの途中で明らかになるのですが、人目をひくタイトルである事に間違いありません。それにしてもこの容量の巨大さにまず驚きます。ムービーがある訳でも、フルボイスという訳でもなく、この大容量の秘密は謎です(音楽が全部wavとか、背景が全部bmpとか……)。

主人公は、高校生くらいの年齢の女性松岡智子ですが、癌を患って余命3年の宣告を受けています。実際には、癌で余命3年という宣告をされる事はまずないのですが、そこはそれ、物語の設定だと思う事にしましょう。智子が海沿いのさびれた町へやって来るところから、物語が始まります。ちなみにタイトル画面ではサティの「ジムノペディ第3番」が流れるのですが、途中音が外れている箇所があり、まずそこでびっくりします(汗)。

動脈と静脈智子は、海辺で理軌(りき)という少年と出会い、この町にいる間は彼の家に泊まらせてもらう事になります。そして途中から事件に巻き込まれていくという展開。この事件というのが、序盤ののんびり具合からするとおおよそ想像もつかないくらい、突飛でとんでもないもので、また後半は描写もちょっとグロテスクな箇所がありますので、苦手な方はご注意ください。この後半のとんでもなさには、読んでいてしばし固まってしまいました。この後半は、それこそ人間の「狂気」がいやというほど描かれます(ちょっと「ひぐらし」風?)。

この主人公が、癌にかかっているだけあって、体力もなくてはらはらさせるんですが、にも関わらずうかつな行動が多くて、読んでいてやきもきさせられてしまうんですよね。もうちょっと注意して行動しろよ、と(苦笑)。ただ、主人公の言動や考え方自体は、決して共感できないものではなく、むしろ思い入れがしやすい主人公なので、グロテスクな描写さえ気にならなければ、結構すいすいと読む事ができます。

が、特に後半で三点リーダー(「…」)にウェイトがかかる事が多く、これはかなりいらいらさせられます。後半は展開もテンポが良いとは言えないので、ちょっとこれはマイナス要素です。また、単純な誤変換に始まって、妙な誤用があったり、文法が変だったり、日本語がおかしい箇所が多いのも気になります。

しかし、ある意味突拍子もない展開ですが、登場キャラにまんべんなく見せ場があり、ラストに至るまで気を抜かせない物語の作りはなかなか良く出来ていると思います。オチがまたあまりにとんでもないので、読んだ後はしばし茫然としてしまうかも知れませんけど(笑)。

そして、メインシナリオを読むと一部の箇所で選択肢が追加され、おまけシナリオへ行ける道が開けます。おまけというから軽く見ていたら、これが本編に負けず劣らずとんでもないボリュームで、「3本のシナリオが入った物語」と言ってもいいくらいです。メインは狂気のシナリオでしたが、あと2本は、時折ネガティブモードに入る事はあれど、恋愛や青春をテーマに描かれる、割と普通の物語です。

おまけを見て気付く事ですが、この作品はキャラクターの扱いがとてもよくできています。3本のシナリオでは、それぞれフォーカスされるキャラクターが異なっています。メインでは理軌とすみれ、2本目では凛とあき(このシナリオでタイトルの「動脈と静脈」の意味が分かる)、3本目では千早と茜で、それに他の脇キャラがほどよく絡み、主人公がきっちり締める。見事なキャラクターの使い方です。描写がネガティブすぎで疲れる箇所も多いのですが、キャラクターの活躍がバラエティ豊かで、作者さんの隠れた力量を感じさせてくれます。ただ、メインシナリオ以外は、主人公が癌であるという設定がどこかに行っている気がしなくもないのですが……。

ツールはLive Makerです。1回読了したら選択肢が出ますが、2カ所だけですし、選択肢1つで分岐しますので簡単です。プレイ時間は全部読んで12~13時間の長丁場。癖もありますが、フリーならではの勢いを感じさせてくれる作品です。一気に読むのではなく、少しずつプレイするのがいいかも知れません。
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