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第341回/色付いていくモノクローム - Good days(森野いづみ)

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Good days

Good days■制作者/森野いづみ(ダウンロード
■容量/32.1MB

ある雨の日、大学生の夏希は雨を避けてあるさびれた教会へと足を踏み入れた。そこで耳にした魅力的なオルガンの音色。弾いているのは、まだ幼さが残る少女だった。感情を見せない少女に興味を持った夏希は、それから毎日教会へ足を運び始める。モノクロームの雰囲気が特徴的な恋愛ノベル。

ここが○

  • 全体を一貫しているモノクロームの雰囲気。
  • ヒロイン望の感情変化の様子がよく描けている。
  • あっさりめではあるが爽やかな読後感。

ここが×

  • ヒロイン望の描写は、とても小学生とは思えない。
  • ちょっと文章を捻り過ぎているきらいあり。
  • その割りには展開はストレートなので、アンバランス感。

■色付いていくモノクローム

ノベルゲームを分類する方法は色々ありそうですが、舞台で分けるというのも1つの方法でしょう。「夏の離島もの」とか「病院もの」とか、私のレビューの中でも使っています。その分類で言えば、この作品は「教会もの」という非常に珍しいジャンル。教会が時々舞台に登場する作品はありますが、この作品は最初から最後までほとんど教会が舞台です。更に、ヒロインは教会でオルガンを弾いています。私も教会でオルガンを弾きますから、これはなかなか面白そうな出だし。

この作品を舞台以外で分類すると、典型的なボーイミーツガールタイプ。このタイプにも「同居型」とか「クラスメート型」とか色々ありますが、この作品は「一定の場所でボーイミーツガール型」と言えましょう。正体不明のヒロインと、決まった場所で会うというパターン。一番最近の作品で言えば「健二と小陰の隠れ子」が同じタイプですね。

Good days更にこの作品は(前作「硝子の月」を読んだ時も思いましたが)、文章がえらく凝っているというか、捻っています。その反面、ストーリーは実にストレートで、何も捻ったところがありません。なので、「デコレーションは凝っているが、味は普通」というようなアンバランス感を感じてしまったのも、また事実です。終わり方も綺麗ではありますが、何せ展開自体は捻りがないので、もう一押し欲しい感もぬぐえません。

むしろこの作品の見所は、展開というよりはヒロインである望の変化にあるでしょう。最初は感情も出さず、夏希につっけんどんな態度を見せる望が、教会の中という限られた舞台だけでだんだん心を開いていく、その描写はなかなか面白いです。ただし、望の言動や独白は、どう見ても小学生に見えません。「どんな数列を並べても」(数列って高校の数学で出るんじゃなかったっけ?)とか、「時間の相対性」とか「隔絶」「疎外感」「感情の機微」なんて、下手したら高校生でも使わないような気がします(汗)。

そういう意味で、「青年と少女の交流」という感じはあまりしないのですが、逆にその「子供らしくなさ」を逆手にとって、望が変わって行く様子を描いた物語としては読み応えがあります。確かに描写が小学生らしくないのですが、その分(子供らしくないとも言えますが)独特の可愛らしさを出せていまして、これはこれで望はとても魅力的なキャラクターに仕上がっています。

よくよく考えると、舞台が教会である必然性があまりない気もするんですが(せめてBGMには、ピアノ曲じゃなくてオルガン曲を使って欲しかった気が……)、独特の雰囲気が全体を一貫するモノクロームなムードを醸し出しているとも言えますので、これは教会を舞台にした効果と言えるかも知れません。

この作品は、1章読むごとに一度タイトル画面に戻り、新たな章へ進めるようになるという作りで、その時1章ごとにおまけシナリオが追加されます。おまけと言っても本編とは全く無関係な、作者さんの短編集といった趣き。短編集でも文章と言いキャラクターと言い、この作者さんらしさは全開です。1章ごとに気分転換に読むもよし、メインシナリオが終わってから一気に読むもよしです。

もう少し、望のおかれた環境のバックグラウンドを丁寧に描いて、シナリオに凝ってみたら、別の魅力を持った作品になったのではないかとも思いますが、この作品はあくまで「子供らしくないヒロイン望の、可愛らしい変化を描く」事にあるような気もするので、これがこの作品の持ち味というものでしょう。

ツールはNScripterで、NScrにありがちな「文章表示速度が変わらない」と言った不具合も健在です。選択肢はなく、プレイ時間はおまけまで全部読んで2時間半くらい。独特の文章と世界観を持った作者さんです。意外な展開で読ませるタイプの作品ではないので、序盤を読んでその雰囲気が気に入ったなら、ラストまで楽しんでプレイできると思います。
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