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第349回/私はあなたが、ちょっと好き - 幽霊には祈らない(不思議ノベル制作部)

不思議系
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幽霊には祈らない

幽霊には祈らない準推薦
■制作者/不思議ノベル制作部(ダウンロード
■容量/22.3MB

高校生の水野桜は、ある日街で自分の恋人と親友が歩いているのを目撃し、親友の里香とは絶交状態となった。そんなある日桜が学校の屋上に行くと、幽霊の少年がいた。彼は「君の願いをかなえてあげるから、僕の願いをかなえて欲しい」と言うが。意外な最後に驚かされる青春物語。

ここが○

  • ミスディレクションが効いた構成。
  • 二重に驚かせてくれるラスト。
  • コガセン素敵。

ここが×

  • 主人公が非常に感情移入しにくいタイプ。
  • 桜の友人がなんか怖い。
  • 最後はちょっと蛇足っぽい気が。

■私はあなたが、ちょっと好き

ノベルゲームでよく取り扱われるジャンルに「幽霊もの」があります。特に「幽霊の願いをかなえてあげると成仏する」というのはよくある手法で、たとえば「ちょこっとループ」「ユウレイのいた道」がそのタイプです。この作品も同じ系統の作品なんですが、かなり捻りが加えてあって、一味違う味わいの作品となっています。「健二と幼木の精霊」「健二と小陰の隠れ子」の作者さんの作品ですが、雰囲気はまったく違いますし、兄も登場しません(笑)。

オープニングは過去回想から入ります。幼い頃の主人公が父親と「ずっと一緒にいる」という約束をするんですが、その約束は1年後に破られてしまいました。それから主人公は「約束」というのが非常にトラウマになってしまった、という設定。そのせいで、主人公桜は他人とも決して深くは関わりません。深く関わらなければ約束を破られたりする関係にもならないからです。

幽霊には祈らない更に悪い事に、桜の恋人と親友が街を歩いているところに出くわし、桜は親友里香と絶交状態に。こういう設定のため主人公の言動は徹底的に冷めており、読み手が感情移入する隙がありません。必死に謝罪してくる里香に対する桜の態度を見てると、「いやー、女って怖いなあ」と感じてしまいます。

そんな中、光るのが古賀先生の存在です。一見したところどこにでもいる教師のようなんですが、ベテランだけあって鋭く桜の内面を見抜いて、桜にアドバイスを与えます。もちろん桜は突っぱねるんですが(笑)、古賀先生はそれでも決して桜を頭ごなしに押さえつけようとしません。脇キャラとして非常に良い立ち位置、そして存在感を持ったキャラクターで、中盤を引き締めています。

この作品は、シンプルなように見えて実はいくつもの要素が絡み合った構成です。幽霊の正体だとか、桜のトラウマだとか、お母さんがどうこうとか、桜の心境の変化とか、制服変更とか。こういう要素は盛り込みすぎるとごちゃごちゃになって訳が分からなくなる事も多いんですが、この作品の場合はそれぞれの要素がお互いを引き立て合って、物語全体を盛り上げていると思います。大変上手い構成です。ちょっとしたネタも、巧みに伏線として取り込んだりする細かい技は、お見事。

その構成を作っているのが、大事な真相の部分には読者の意識が向かないようにする、ミスディレクションです。しかも、秘密を明かされた後で「ああそう言えばちゃんと描写されてたなあ」と気付くという、理想的なやり方。そのお陰で、ラストでは二重の意味で驚かされます。うーん、そう来たか、と私も綺麗に裏をかかれました。しかも、桜が今までの自分から少しずつ脱却しようとするところまで見せてくれる、とても綺麗なラストですね。

ただ、その後の描写はちょっと蛇足に感じなくもありません。あれを入れる事で、桜と誠の出会いは偶然ではなく運命だっただと言う表現なのかも知れませんが、少し取ってつけたような感じがします。これは好みが分かれるところかも知れませんが、個人的には誠が言っていたように、「運が悪かったんだよ」で良かったような気がします。

それと、常日頃から「深く他人に関わらず、迷惑がかからなければ何でもいい」的な世渡りをしている桜が、母親の結婚話に嫌悪感を覚える件では、「あなた自分は勝手やってて親は駄目なんかい。それは自己矛盾なんじゃないか?」というツッコミを入れたくなってしまいましたが(汗)。ま、そんな彼女がラストでは変わるきざしを見せてくれるのが、ある意味今作の大きなポイントでもある訳ですから、しょうがないのかも知れませんね。

ともあれ練られた構成と文章で、唸らされる事必至の作品です。ツールは吉里吉里で選択肢はなく、プレイ時間は1時間半くらい。幽霊ものとして定番の展開と思いきや、独自の「二回転半ひねり」で綺麗に着地するラストを、是非味わってみてください。
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